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ラテン諸国の女子ゴルフと欧州女子ツアーの発展のカギは?
ヨーロピアン女子ツアー(以下LET)は今年から米LPGA、ヨーロピアンツアー、R&Aとパートナー契約を結んでいる。左からヨーロピアンツアーCEOのキース・ペリー、LETプレジデントのマルタ・フィゲラス・ドッティ、LETのCEOアレクサンドラ・アルマス、スコットランド人選手のカトリオナ・マシュー、米LPGAのCEOマイケル・ホァン。
ラテン諸国の女子ゴルフ発展の第一歩
実は9月3日~6日に第1回「ラテンアメリカ女子アマチュア選手権」がアルゼンチン・ブエノスアイレスのピラー・ゴルフコースで開催される予定だった。
しかし、新型コロナウイルスのパンデミックにより中止に……。
この大会はアニカ・ソレンスタムの財団の支援を受け、ラテンアメリカおよびカリブ海地域での女子ゴルフの振興を目的に開催される予定であった。
ゴルフ産業において女性を取り込むことは、R&Aの大きな命題の一つで、2018年5月29日から始まる特別な計画「女子ゴルフ憲章」を策定し、アルゼンチン・ブエノスアイレスに事務所を開設した。
R&Aのラテンアメリカおよびカリブ海地域担当ディレクターであるマーク・ローリー氏は、今回のパンデミック期間中に「女性とゴルフの関係」に関するオンラインセミナーを開催。
ラテンアメリカ諸国から150名以上の参加者を集めた。
ラテンアメリカ出身の3人のゴルファーからもセミナー上で意見が出たが、LPGAツアーで4勝し、ESPNの解説者を20年務めた、アルゼンチンのシルビア・ベルトラチーニは次のように語った。
「女子プロゴルフの大きな発展は、アニカ・ソレンスタムの出現やゴルフ・チャンネル(ゴルフ専門チャンネル)の誕生、またタイガー・ウッズやその後に登場したロレーナ・オチョアとともにもたらされました。その時点からすべてが変化し、LPGAツアーは女子ゴルフの認知度を上げるため、懸命に取り組んだのです」
パラグアイの選手フリエタ・グラナダは、LPGAツアーでの自らの経験を振り返り、チリのアマチュア、デジレ・ソウロドレは、現在のチリ・ゴルフ連盟の副会長や国際ゴルフ連盟(IGF)組織委員会のメンバーになるまで、どのような道を歩んでいかなければならなかったかを説明した。
そして3人とも口を揃えて「女性が生涯に渡ってゴルフを続けることは、特に結婚して子どもを持つと一段と困難になる」ということだった。
「私たちの仕事は、様々な理由でゴルフを中断した多くの女性たちが再びゴルフをするよう努めること」と、アルゼンチン・ゴルフ協会女性委員会メンバーのマリア・オリヴェロは語る。
世界中の女子ゴルフの発展を支援する世界ゴルフ殿堂入り選手のアニカ・ソレンスタム。チャリティ活動やジュニアの育成などにも注力している。
世界のツアーがタッグを組む
2019年12月、「LPGA(米女子ツアー)・LET(欧州女子ツアー)・R&A・ET(欧州男子ツアー)のジョイントベンチャー」について最終的な合意がなされた。
2017年12月にスペイン人のマルタ・フィゲラス・ドッティがLET評議会のメンバー入りを果たした頃から始まり、なかなか進まなかった案件だ。
この合意によれば、主にLPGAが財政的支援やロジスティクスやアドバイスの提供をし、LETも職員の提供などを行なうのだが、最も重要なことは、両者がLETの強化において主導的役割を果たし、より多くのスポンサーの獲得に努めるということだ。
当初は大きな財政的拠出を期待することはできないが、強化・成長に向けて邁進することはできる。
ドッティは、スポーツにおける女性差別も重視している。
「スポーツ界にも女性の差別問題は存在し、男女の賞金額が格段に異なるなど、スポンサー側の問題があります。(ISPSが主催する試合のように)『男子と女子が同じコース、同じ賞金額で戦えれば、どれほど素晴らしい試合になるでしょう』とジェフ・オギルビーがコメントを残していますが、世界の男子トッププロたちには私たち女子プロをサポートしてほしいと思います。女子ゴルフが時流であることを考慮に入れるべきです」
ドッティは、LPGAにおける韓国人選手の成功についても分析している。
「アジア人選手が成功する理由が2つあります。1つは遺伝的なもので、手先が器用だということ。それともう1つは文化的なもの。家族が選手たちに一生懸命ゴルフに取り組むよう、相当なプレッシャーをかけています。これが、選手が非常に早く引退する理由であり、彼女らのプロ生活は非常に短いのです。男性の場合は、兵役によりツアーへの出場が中断されることもあります。しかし、アジアの女子プロたちのトレーニング法は素晴らしく、私はいつも教え子たちに、彼女たちとトレーニングをして学ぶことがベストだ、と言っています。彼女たちにLETに来てもらいたいですね」
また、新型コロナウイルスの影響を受け、今シーズンのすべての計画が遅延しているが、今後ツアーが危険な状態にない旨を強調している。
「新規プロジェクトを今年始めようとしていたのに、本当に残念。でも決して失敗しているわけではありません。さらに強化された2021年となるよう取り組んでいます」
「LPGAやET、R&Aの全面的支援を受け、我々は前進しています。〝レース・トゥ・コスタ・デル・ソル〟に必要な20トーナメントの完了は見込めず、予選会は開催されませんが、今後開催された試合で優勝した選手については、ランキング上、ポイントが加算されます。スコティッシュ女子オープンを皮切りに、みな平穏かつ安全にヨーロッパを移動できればいいですね」
2010年以降、LPGAツアーを主戦場に活躍しているスペインのアサハラ・ムニョス。LPGAツアー1勝。リオ五輪の代表選手。
Text/Isabel Trillo Amores
イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)
PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。