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【Legends of Golf Vol.13】サー・ニック・ファルド エリザベス女王からナイトの称号を受けた英国の名選手

ゴルフ界隆盛の礎を築いたレジェンドたちの栄光を振り返る「Legends of Golf」。

メジャー6勝、世界最高ランク1位を記録し、スポーツへの貢献を讃え、エリザベス女王からナイトの称号(サー)を受けた英国の名選手、ニック・ファルド。
現在はゴルフ中継のコメンテーターやコース設計、ジュニア教育などに勤しむ日々を送っている。
英国の選手の中でも最も活躍している彼の業績を振り返ってみよう。

Sir Nick Faldo

©Getty Images

2004年タイ・バンコクで行なわれた「ジョニー・ウォーカークラシック」のイベントに参加したファルド。

Sir Nick Faldo
ニック・ファルド(イギリス)
1957年7月18日生まれ。
「全英オープン」「マスターズ」で各3勝を挙げ、メジャー6勝。世界で通算41勝を挙げ、1992年には欧州ツアーで賞金王。現在、ゴルフ中継のコメンテーターとして活躍するほか、ジュニア教育にも熱心だ。

ジャック・ニクラスのプレーに魅了されたイギリスの天才ゴルファー

©Getty Images

正確かつ安定感のあるショットに定評があったファルド。

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長年にわたりスウェーデン人の女性キャディ、ファニー・スネソンさん(左)を起用。このコンビで世界の数々の試合で優勝を遂げた。

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1977年「ライダーカップ 」に観戦に来ていた父のジョージ(左)、母のジョイス(中央)と記念撮影。彼はライダーカップに11回参戦している(それ以外にキャプテンも務めた)。

「マスターズ」のテレビ観戦がファルドの人生を変えた

ジャック・ニクラスに触発され、ベン・ホーガンを彷彿とさせるひたむきな仕事ぶりで、ニック・ファルドは、メジャーで6勝。1990年から1994年までの間で97週にわたって世界ランキング1位を獲得し、殿堂入りを果たした。

1957年7月18日、イングランドのウェリンガーデンシティに生まれたファルドは、水泳、自転車競技、バスケットボール、クリケット、テニスなどのスポーツに秀でたオールラウンドな才能を持った選手だった。
しかし、13歳のときにすべてが一変。
ファルドはBBCテレビで1971年の「マスターズ」を観て、ゴルフを始めたのだ。
彼は、オーガスタナショナルゴルフクラブの美しさもさることながら、ニクラスのパフォーマンスやプレースタイルに興味をそそられた。

「それに感化されて、何か違うことをやってみようと思ったんだ。ゴルフをやってみると、練習に行くのがなんて面白いスポーツなんだ、と。これこそが私のやりたいことだと思ったね。一人で一日中練習しているのが楽しくて仕方がなかったけど、それは少し後になってからのこと」とファルドは言う。

彼は、ゴルフの世界に飛び込み、その後プロの世界である程度成功を収めた頃に、デビッド・レッドベターの指導を受けて、自分のスイングを完全に再構築するという、違った形でゴルフのベストプレーヤーになることに取り組んだ。
その取り組みの結果は説明するまでもない。

個人の努力がものを言うゴルフの性質とファルドの性格とのマッチング

彼とレッドベターは、1985年の夏にスイングの大改造を始めた。
レッドベターは、ファルドの鋭角なダウンスイングを、もう少しフラットにするなどの調整を行なったが、実際には全面的なスイング改造だった。
レッドベターは、ファルドがこう言ったことを思い出すという。

「彼が言ったことをそのまま言うと、『厳しく叱ってもらって結構です。僕は本気でやりたいので。どれだけ時間がかかっても構いません。凡庸なゴルフをして、自分の可能性を発揮できないことにうんざりしているんですよ』だったと思う」

ファルドはスイングを磨くためにひたすらボールを打ち続け、1日に1500球打つこともあった。
ゴルフの持つ孤独な性質が、先天的にシャイなイギリス人であるファルドには合っていたのだ。
また、彼は単純にその作業を楽しんでもいた。

「ジャックには素晴らしい集中力があると読んだことがある。ホーガンもそうだったというが、私はそれを身に付けたんだと思う。天性のものではない。サム・スニードが『自然に見えるように何百万回もスイングしたんだ』と言ったように。私は昔ながらの方法で、ひたすらボールを打ち続けたんだ」

第一次世界大戦以降、最強の欧州プレーヤー

©Getty Images

「マスターズ」のチャンピオンズディナーに参加するため、グリーンジャケットを着用したファルド。

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1997年、タイガー・ウッズの記念すべきメジャー1勝目は「マスターズ」で飾ったが、この時、前年度のチャンピオンとしてグリーンジャケットを羽織らせたのがファルドだった。

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2009年11月、英国ウィンザー城でエリザベス女王からナイトの称号(サー)を受けた。

©Getty Images

1991年、米国サウスカロライナのキアワアイランド開催の「ライダーカップ」に出場したファルド(後列中央)。その他、セベ・バレステロス、コリン・モンゴメリー、ホセ・マリア・オラサバル、ベルンハルト・ランガー、サム・トーランス、イアン・ウーズナムらも出場した。

その2年後、ファルドは「ジ・オープン」の開催地の中でも最も難しいコースのひとつであるミュアフィールドで開催された1987年の「全英オープン」で、自身初のメジャータイトルを獲得した。
1987年から1996年にかけて、ファルドは「全英オープン」を3回、「マスターズ」を3回制覇した。
中でも1989~1990年には2年連続でグリーンジャケットを獲得。
ジャック・ニクラスやタイガー・ウッズとともに、オーガスタで2連覇を果たした3人のうちの1人だ。

ファルドはかつて、イングランドの若手アマチュアの中では最高の選手の一人だった。
アマチュア時代の1975年には、全英ユース・アマチュアオープン、全英アマなど10のタイトルを獲得。翌シーズンから、欧州ツアーに参加した。

世界中の計41試合で優勝したファルド。
PGAツアーでは、ツアーが公式な勝利と認めているメジャー6勝に加え、3勝を果たした。
1989~1992年の間、ファルドはメジャーでトップ20から外れることはなく、トップ5には7回入っている。
メジャー通算6勝は、第一次世界大戦以降、欧州ツアーの選手としては最多だ。

1977年には、初めて「ライダーカップ」のチームメンバーに選ばれ、2年に一度のこの大会に11回連続で出場した。
通算23勝19敗4分の成績を残し、欧州チームでのキャリアポイント25点は、昨年、ウィスリングストレイツで開催された「ライダーカップ」に出場したセルヒオ・ガルシアに抜かれるまでは最多記録であった。
ファルドは2008年の「ライダーカップ」でキャプテンを務めたが、欧州チームはポール・エイジンガー率いる米国チームに敗れた。

ファルドのゴルフは安定感があり、テンポがよく、ゴルフというゲームの中で最も強い競争心を持っているが、距離のコントロールとコースマネージメントという重要な分野に関して彼は、最高の選手の一人だった。
1990年には、「マスターズ」での勝利に加えて「全英オープン」でも優勝し、PGAツアーの年間最優秀選手賞と欧州ツアーの年間最優秀選手賞を受賞した。
また、1989年と1992年にも欧州で年間最優秀選手賞を受賞している。
彼の「マスターズ」優勝は3回とも逆転優勝であり、中でも最も劇的だったのは、1996年に6打差から挽回し、グレッグ・ノーマンを破ったという勝利であった。

ファルドのゴルフ人生最後の勝利は、1997年にロサンゼルスで開催された「ニッサンオープン」であった。
翌年には世界ゴルフ殿堂入り。ファルドよりも多くのメジャータイトルを獲得した欧州人ゴルファーは、イギリスのハリー・バードンだけで(バードンは7勝)、米国以外の国で生まれたゴルファーの中では、ファルドはバードンと南アフリカ出身のゲーリー・プレーヤー(メジャー9勝)に次ぐ存在だ。

ショットを披露するプレーヤーから解析するコメンテーターへ

©Getty Images

現在はCBSスポーツ、米国ゴルフチャンネルのコメンテーターとしても活躍するファルド(左)。中央はジム・ナンツ、右はジャック・ニクラス。

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2004年、娘のエマちゃんを遊ばせるファルド。

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南アフリカで以前行なわれていた「ミリオンダラーチャレンジ」に参加したファルド。生後5週間のライオンを抱えてニッコリ。

©Getty Images

ゴルフ場の設計も手がけている。写真は北アイルランドにコースを設計するにあたり、雪の中を視察に訪れたファルド(左)。

ファルドのコメンテーターへの華麗なる転身

ファルドは、ABCスポーツでテレビ界に進出し、その2年後の2007年からCBSスポーツとゴルフチャンネルのメインアナリストを務めている。
4児の父である彼は、多くのベンチャービジネスにも携わっており、世界中の未来のチャンピオンを育成することを目的として1996年にファルドシリーズを創設。
ファルドシリーズには、32か国で開催される40超の大会を通じて、毎年7000人を超えるプレーヤーが参加している。

2009年にはエリザベス女王からナイトの称号を授与された。

Photo/Getty Images

Text/Dave Shedloski

デーブ・シェドロスキー

長年に渡り、ゴルフトーナメントを取材。著書にアーノルド・パーマーの遺作『A Life Well Played』やジャック・ニクラスの『ゴールデン・トワイライト』などがある。

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