• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Asia アジアの過去の歴史と...

【世界のゴルフ通信】From Asia アジアの過去の歴史と“これから”

シンガポールオープンで2位に入賞した桂川有人が全英オープンへの切符を獲得!

©Paul Lakatos SPORTFIVE

「シンガポールオープン」上位4名に、「全英オープン」出場権を与えられた。左から2位タイに入賞した桂川有人、優勝したセドム・ケーオカンジャナ、キム・シバン、昨年のアジアンツアー賞金王で、2位タイのキム・ジュヒョン。

©Paul Lakatos SPORTFIVE

最終日はボギーなしの69で回り、2位と3打差で優勝した、タイのセドム・ケーオカンジャナ。

©Paul Lakatos SPORTFIVE

2日目を除き、全て60台でプレーした桂川有人。2020年秋にプロ転向し、QTで9位。2021年ABEMAツアー「石川遼everyone PROJECT Challenge」で初優勝。今年は前半戦のシード権を得ている。今年からISPS契約選手に。

60年の歴史と伝統を誇る「シンガポールオープン」

3月初旬、シンガポールのセントーサGCで米女子ツアー「HSBC女子選手権」が開催されたが、今年で14回目を迎えた本大会は「アジアのメジャー」と呼ばれている。

そして同じコースで60年間にわたって開催されているのが、1月に開催されたJGTOとアジアンツアーの共催試合「SMBCシンガポールオープン」である。
この大会は、1961年に始まった極東サーキットで、発足当初から開催されているトーナメントの一つ。
メジャーチャンピオンやアジアの精鋭たちが出場してきた、歴史と伝統のある大会だ。
今年出場したポール・ケーシーも「この試合とコース、街が好き。このトロフィーに名を刻みたいですね」と語っている。

この大会は、1990年代半ばにPGAツアー・オブ・オーストラレイジアの一試合として開催され、2009年~2012年までアジアンツアーや欧州ツアーと共催で行なわれた。
そして過去6回は、アジアンツアーとJGTO(日本男子ツアー)との共催で毎年行なわれている。
昨今のコロナパンデミックにより、昨年は中止となったが、今年の1月には2020年~2021年のアジアンツアーの最終戦として、そしてJGTOの開幕戦として開催。
アジアンツアー賞金ランク2位のセドム・ケーオカンジャナが優勝。日本の桂川有人は2位タイに入賞した。

また「シンガポールオープン」の上位4人(有資格者は除く)には7月の「全英オープン」への出場権が与えられた。
イベントプロモーターのパトリック・フェイザル・ジョイス氏は、「全英オープンの予選会シリーズの1試合となっていることは、シンガポールのナショナルオープンにとって非常に名誉なこと」と語っている。

サウジと手を組んだアジアンツアーへの選手の参戦を警戒する欧米ツアー

©Eiko Oizumi

「サウジインターナショナル」の会場で行なわれた記者会見にて。左からアジアンツアーCEOのチョ・ミンタン氏、LIVゴルフ・インベストメンツCEOのグレッグ・ノーマン。

©Eiko Oizumi

19歳にして賞金王のキム・ジュヒョン。2018年以降、「シンガポールインターナショナル」「パナソニックオープン・インディア」「PAYAパキスタンオープン」など5勝を挙げている。

アジアンツアーの新たな幕開けに集まる期待と敵意

過去何十年にもわたって、見下されてきたアジアンツアーだが、サウジアラビアと手を組むことで、世界のゴルフ界の最前線に躍り出た。

サウジアラビアの政府系ファンドPIFを通じて政府が100%を所有するLIVゴルフ・インベストメンツのCEOに就任した豪州のレジェンド、グレッグ・ノーマンという強力なバックアップを得て、アジアンツアーのコミッショナー兼CEO、チョ・ミンタン氏は今後数か月~数年の間にアジアンツアーを他のツアーと同等の地位に引き上げようとしている。

2月初旬に行なわれた「サウジインターナショナル」の大会前の記者会見にチョ・ミンタン、グレッグ・ノーマン、そしてアジアンツアー賞金王になったばかりのキム・ジュヒョンが出席したが、その会見に出席した欧米系のメディアからは予想通り、攻撃的な質問が飛び交った。
ゴルフ界が金持ちの新参者によって、重大な危機にさらされていることを懸念しての質問である。

また、サウジアラビアの人権問題(サウジアラビア人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件など)や、PIFがLIVゴルフ・インベストメンツ、ひいてはアジアンツアーに3億ドル(約345億円)の支援を行なっていることに関連する質問は尽きなかった。
さらに、1980年代以降、これまで他の追随を許さないほどの支配力を誇ってきたPGAツアーとDPワールドツアー(欧州ツアー)にとって、新たに資金力を得たアジアンツアーが、いかに脅威となるかといった質問もあった。

そんな会見の中でも、アジアンツアーという名のもとに、ゴルフを発展させ、アジアンツアーという「眠れる獅子」を目覚めさせるという、しっかりと構成された筋書きからほとんど外れることなくノーマンとチョは冷静に対応したのである。

「アジアンツアーは最も若く、活気のあるツアーだと言ってきましたが、ここ数年の賞金王を見ると皆、24歳未満で、昨年度賞金王のキム・ジュヒョンは19歳。彼はそのうち世界でも活躍するでしょうし、彼の功績を誇りに思っています」

「コロナパンデミック後の1年半、ツアーは悲惨な状況に陥りました。しかし危機を乗り越えれば必ずチャンスはある。グレッグやチームと協力して、どうしたらもっと強くなって復活できるかを考え、LIVとタッグを組むことに決めました」

PGAツアーやDPワールドツアーの試合に出ず、アジアンツアーの試合に参加した選手は、何らかの罰則の恐れがあるため、順風満帆とは言えず、今後も波乱含みの展開になりそうである。

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

関連する記事