ジュニアの頃から30年以上にわたってライバル関係を続けている タイガーとミケルソン
かつて、同組でラウンドしても、ほとんど会話もせず、目も合わせなかったこともある2人。今では練習ラウンドを共にしたり、同じゴルフイベントで対決したりと、2人の仲は改善されている。
世界のカリスマコーチ、ブッチ・ハーモンに時期は異なるが、師事していたタイガーとミケルソン。ハーモンの指導で、2人は数々の試合で優勝した。
25年前にタイガーの伝説は始まった
1997年4月10日(木)は、のちにタイガー・ウッズとして知られる伝説の人物の、まさに始まりの日だった。
彼についてはすでにすべてをご存知だろうが、21歳だった彼の、その歴史への長い旅が始まったのである。
オーガスタナショナルでは、初日の前半9ホールで40を叩き、歯車が狂いそうになったが、なんとか踏みとどまり、最終的には2位と12打差で優勝。
タイガーと予選ラウンドで一緒にプレーしたニック・ファルドは次のように語る。
「彼は前半で40を叩いたが、後半は30で戻ってきた。それ以降、彼に近づくことはなかった。彼は私たちを圧倒したんだ」
当時、自信満々のフィル・ミケルソンはタイガーを恐れてはいなかった。
彼は26歳だったがすでにスター選手であり、PGAツアーで9勝を挙げていた。
世界ランクではトップ10に入り、「ライダーカップ」に1度、「プレジデンツカップ」に2度出場していた。
だから97年の「マスターズ」で優勝し、グリーンジャケットを着ると信じるだけの根拠はあった。
彼もメジャーで勝つ運命にあったが、予想以上に時間がかかり、その頃の2人のライバル関係は、敵対関係というよりも微妙なものだった。
過去2年間、私は4月に発売された『Tiger and Phil: Golf’s Most Fascinating Rivalry(タイガーとフィル:ゴルフで最も魅力的なライバル関係)』という本の出版に携わり、彼らのこれまでを記録しようと試みてきた。
ミケルソンはサンディエゴで、タイガーはロサンゼルス近郊で頭角をあらわし始めた。
2人とも偉大な存在になることを運命づけられていたことは確かだが、どちらも期待をはるかに上回るものだった。
タイガーとミケルソンはライバルなのか?
タイガーは圧倒的に強かったため、彼の真のライバルは歴史そのものか、あるいはおそらくメジャー優勝記録を塗り替えようとしたジャック・ニクラスだったか、と言えるほどのものだった。
しかし、本に書いたが、それはもっと微妙なものだった。タイガーはPGAツアーで82勝、フィルは45勝、メジャーではタイガーは15勝、フィルは6勝している。
しかし、あらゆる種類のスポーツのライバル関係について考えてみてほしい。
それは必ずしも総合的な記録についてではなく、多くの場合、日々、あるいは週ごと、年ごとの戦いについての話である。
タイガーとフィルは、25年以上にわたって、そういったライバル関係のシーンの一部だった。
タイガーと対戦して輝かしい優勝を飾ったこともあるアーニー・エルスとビジェイ・シンには申し訳ないが、フィルほどタイガーと長い期間、戦った人はいない。
そして、フィルほどタイガーの支配を脅かす存在はいなかったのだ。
だからこそ、2004年の「ライダーカップ」で唯一、ペアを組んでプレーしたことがあったが、非常に残念な組み合わせとなった。
キャプテンのハル・サットンが送り出した米国ゴルフ界の2人のビッグネームは、午前中の試合に負けただけでなく、午後の試合でも敗退。
米国の「ライダーカップ」史上、最大の敗戦となった。
この時、2人の関係の摩擦が高まり、その後2年間、「マスターズ」でグリーンジャケットが2人の間で行ったり来たりしているうちに、その摩擦はますます激しくなっていった。
2人のスイングコーチを務めたブッチ・ハーモンの見解
2人のコーチを務めた経験があるブッチ・ハーモン氏は、「2人がライバルであったことは間違いないと言えるだろう。ミケルソンが成し遂げたことを見てほしい。彼はタイガー時代に誰よりも優勝しているし、誰もその足元には及ばないんだ。タイガーは彼の存在を高めていたし、彼自身もいつもそう言っていた。最初の頃、2人は苦しい時期があり、ライバル関係が難しい時期もあった。タイガーはミケルソンについて多くを語りはしなかったけど、彼の存在は常に意識していたね。彼がどれだけ才能があるか、どれだけいい選手になれるかを知っていたんだ」と言う。
2人の存在と「マスターズ」
「マスターズ」がくると、どうしてもタイガーとフィルのことが頭をよぎる。
彼らは2人で8勝しているし30年間、オーガスタのシーンに欠かせない存在だった。
それはこれからも何らかの形で続いていくだろう。
タイガーは2021年2月に大事故に遭ったにもかかわらず、「マスターズ」で奇跡のカムバックを果たした。
昨年「全米プロ」を制し、50歳でメジャー最年長優勝者となったミケルソンは、PGAと対立するゴルフリーグへの関与が報じられた影響で、活動を自粛している。
しかし、この2人にはこれから多くのことが約束されている。
いずれはミケルソンも復帰するだろうし、タイガーは限定的ではあるが、今後も試合に出るだろう。
そしていつか、この2人が「ライダーカップ」の米国キャプテンになる日も来るはずだ。
いずれにせよ、2人のライバル関係が、なくなることはないのである。
本誌でもおなじみのボブ・ハリグ記者が執筆した『TIGER & PHIL』が4月に出版された。
Photo/Getty Images
Text/Bob Harig
ボブ・ハリグ(アメリカ)
ESPN.comシニアゴルフライター。25年以上に渡り、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。
Photo/Getty Images