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【世界のゴルフ通信】From Europe ゴルフ界のウクライナへの支援の輪

ロシアのウクライナ侵攻に反発し連帯
「ゴルファーズforウクライナ」

©Getty Images

ウクライナゴルフ連盟に支援の手を差し伸べるR&Aの本部が、3月下旬にウクライナカラーにライトアップ。「全英オープン」「全英女子オープン」「全英アマ」などを主催するR&Aは、今後の公認競技でウクライナへの侵攻を続けるロシアと、それに同調するベラルーシの選手の出場を拒否している。

ウクライナゴルフ連盟のホームページでは、子供達への寄付金を募集。世界各国から1億円以上の寄付金が集まっている。
HP→golfersforukraine.com

©Getty Images

「プレーヤーズ選手権」の最終日に会場を訪れた、ウクライナのジュニアゴルファー、ミカリオ・ミシャ・ゴロドくん。世界のトッププロたちから激励を受けた。

©Getty Images

ウクライナへの支援を表明するリボンを付けてプレーする、トミー・フリートウッド。PGAツアー「プレーヤーズ選手権」や「WGCデルテクノロジーマッチプレー」などでこのような光景が見られた。

ユニセフを通じてゴルフ界がウクライナを支援

2月24日、ロシアがウクライナに侵攻したとき、大陸中の反発と怒りが結集。
戦争が勃発してから数日のうちに、あまりにも突然に、残酷にも生活が激変してしまったウクライナ人に対して、ゴルフ業界全体で、「ゴルファーズ・フォー・ウクライナ」という支援が開始された。

DPワールドツアー(欧州ツアー)は、R&AやPGAツアーと同様に、この運動への支持をいち早く表明した団体の一つだった。
DPワールドツアーのホームページに次のような声明が出されている。

「私たちはこのような事態に心から悲しんでおり、この状況が速やかに終結されることを願い、世界中のコミュニティと団結しています。他のゴルフ団体とともに、緊急に必要とされている物資を届けるユニセフの活動に寄付をすることで、支援をします。私たちが力を合わせれば、大きな変化をもたらすことができるのです」

4月中旬までに、すでに募金額は81万米ドル(約1億400万円)を超え、ファンド開始後2か月で100万米ドル(約1億28 00万円)の大台を突破する目標に向かって順調だ。
この迅速かつ、明確な支援表明は、ゴルフファンや選手から歓迎された。
元「全米アマ」チャンピオンのリッチー・ラムゼイは、ツアー上層部に激励のメッセージを送っている。

「キース(DPワールドツアー最高責任者のキース・ペリー)に、あれをまとめた人は素晴らしい仕事をしましたね、とメールを送りました。我々はウクライナの人たちをできる限り支援するべきです。できるだけ多くの資金を集め、それを必要とする人々を支援できればいいと思っています」とラムゼイは語っている。

サウジの新リーグの開幕戦はロンドンで

©DP World Tour

ヘンリク・ステンソン
「ライダーカップ」欧州キャプテンに

DPワールドツアーにとっての新たなライバル、「LIVゴルフ・インビテーショナル」(元サウジゴルフリーグ)の亡霊は、頑として消え去らない。
サウジアラビアが出資するこのベンチャーは、回復不可能と思われるほどの後退を強いられたにもかかわらず、驚異的な回復を遂げ、その迫り来る脅威は、既存のツアーのレーダーにこれまで以上に大きな存在として映し出されるようになった。

「(新リーグは)暗礁に乗り上げた」と発言したローリー・マキロイだが、「マスターズ」が終了するやいなや、LIVゴルフ・インベストメンツのCEOであるグレッグ・ノーマンが、全8大会で構成される初開催のシリーズの参加者発表のため、再びメディアの前に姿を現した。

ロンドン郊外、DPワールドツアー(欧州ツアー)の本部があるウェントワースから車でわずか1時間のセンチュリオンクラブで、その第1回目が6月9日に始まる予定だという。

これは同じ週にスウェーデンで開催される「ボルボ・カー・スカンジナビア・ミックス」と重なっているが、賞金額を見ると愕然とする。
欧州ツアーの賞金200万米ドル(約2億5700万円)が、LIVゴルフイベントで獲得できる2500万米ドル(約32億円)と比べるとはるかに少額なのだ。
この記事が世に出る頃には、もう少しはっきりしたことが言えるだろうが、イアン・ポールター、リー・ウエストウッドらが出るとすれば、「ライダーカップ」での2人の活躍を考えると、顔にひどい平手打ちをくらったような感じだ。
ポールターとウエストウッドは、過去30年の大半において、2年に1度のアメリカとのマッチプレー対決で、ヨーロッパを統率する重要な存在として愛されてきた。
経歴にメジャー優勝はなくとも、「ライダーカップ」での輝かしい戦績とチームへの情熱は、ヨーロッパのゴルフファンの心の中で特別な位置を占めている。
そのため、何年も前から彼らがキャプテン候補であると決まっていたように広く思われていた。
しかし、今ではもう違う。
もし彼らがサウジアラビアのお金を受け取るのなら、アメリカとの戦いに導く名誉はもちろん、欧州ツアーのメンバーであり続けられることさえも幸運なこととなるだろう。

しかし、彼らはそれを気にしているようには見えない。
2年ごとに「ライダーカップ」に出場し、優勝してもサウジの億万長者にはかなわないからだ。
ゴルフ人生の後半に差し掛かり、 5000万ドルというサウジからのオファーを受けて新リーグでゴルフをする見込みについて、「考えるまでもないこと」とウエストウッドは語っている。

より多くの「ライダーカップ」の「レジェンド」たちが、同じように競技寿命の末期に近づいているため、長らく予想されていたキャプテンの座を狙う選手たちが突然「サウジリーグ」入りで、少なくなることもあるだろう。

来年イタリアのマルコ・シモーネGCで開催される次の「ライダーカップ」に向け、欧州チームのキャプテンにヘンリク・ステンソンが決定。
彼はこの新リーグに参加する可能性が高いと、何度も言われていただけに、3月に彼のキャプテン就任が、もう一つの発表と同時に行なわれたことは、大きな意味があった。
欧州ツアーはステンソンに、新リーグの大会に出場しないよう、契約書にサインさせたという。

選手や副キャプテンはその必要はないが、キャプテンには契約義務があり、その契約は「ライダーカップ・ヨーロッパ」とキャプテンの間で結ばれている。

「私はキャプテンとしての自分の役割を全うするため、全力を尽くすし、ローマで望む結果を出すために一生懸命取り組む。様々な憶測が飛び交いましたが、私はキャプテンとしての仕事、ライダーカップ・ヨーロッパ、そして目の前の仕事に全力を尽くすため、時間を無駄にせずに過ごしていくつもりだ」

欧州ツアー50周年という節目の年において、立ちこめる風雲は、今後、50年先の希望を脅かすような困難な時代の予兆となるのだろうか?

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。

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