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【世界のゴルフ通信】From Japan プロアマ問わず海外挑戦が身近に

プロアマ問わず、海外挑戦が身近に
女子世界一を決めるメジャーの「世界中の女子に開くトビラ」

©JGA

4月25日に行なわれた「全米女子オープン・最終予選」に出場し、本戦への出場権を獲得した6名。トップ合格を果たした濱田茉優(はまだ・まゆ)は「今の実力でどこまで出来るのか、また海外の選手を見て、自分に何が足りないのか、勉強を含めてすべて楽しみ」と語った。

©JGA

濱田茉優(はまだ・まゆ)

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高木優奈(たかぎ・ゆうな)

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識西諭里(おにし・ゆり)

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早川夏未(はやかわ・なつみ)

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馬場咲希(ばば・さき)

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伊藤二花(いとう・にか)

©USGA

昨年、日本人初の「全米女子オープン」チャンピオンに輝いた笹生優花。2連覇に期待がかかる。

©USGA

笹生優花と畑岡奈紗による、史上初の日本人同士のプレーオフ対決となった、昨年の「全米女子オープン」。

「全米女子オープン・最終予選」通過者で、プロテスト合格者はたった1人

女子の『世界最大のトーナメント』に少なくとも15人の日本勢が出場する。
4月25日に行なわれた「全米女子オープン・最終予選」の1つ日本会場(千葉県・房州CC)には、プロ102人、アマ56人の計158人が参戦。
6人が本戦への切符を勝ち取った。

ディフェンディング・チャンピオンの笹生優花、2019年「AIG全英女子オープン」王者の渋野日向子、「DIOインプラント・LAオープン」で米ツアー6勝目を挙げたばかりの畑岡奈紗ら、すでに出場資格を持つ中でエントリーした9人と合わせて全部で15人の出場が決まった。

6月2日からノースカロライナ州パインニードルズL&GCで行なわれる本戦の出場者は156人。
5月16日まで各地で続く最終予選から勝ち上がる選手が増える可能性もあるが、日本のゴルフファンには楽しみが増えることになる。

「全米女子オープン」は、基本的にUSGAのハンディキャップインデックス2・4以下のアマチュア、プロなら誰でもエントリーできる、文字通りの〝オープン競技〟。
かつては米国に行かなければ予選が受けられなかったが、より門戸を開くため2014年から日本を含む海外での予選を行なうようになり、今日に至っている。
予選だけのために米国に行く、時間と資金のハードルが下がったわけだ。

面白いのは、本戦切符を獲得した6人の顔ぶれだ。
プロ4人、アマ2人なのだが、プロ4人のうち日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)のメンバーは、トップ通過した濱田茉優ただひとり。
2位タイの高木優奈、識西諭里、4位タイの早川夏未の3人は、いずれも2021年の最終プロテストで不合格に終わっている。

日本女子プロゴルフ協会会員でなければ(つまり、プロテスト合格者でなければ)、QTが受けられないように制度が変わった日本の女子ツアーとは対照的に、プロアマ問わず誰でもエントリーできるのが〝オープン競技〟たる所以。
米国ナショナルオープンの懐の深さを感じる。

タフな予選会を勝ち抜けた理由は?

1日36ホールというタフな日程で行なわれるこの最終予選。
前日まで開催されていた「フジサンケイクラシック」3位タイの濱田は好調をキープ。
通算9アンダーを叩き出した。シーズン8戦目を終え、疲れがたまるタイミングだったこともあり、ツアーメンバーたちは苦戦したようだ。

本戦出場を決めた高木は、世界ランキング300位以内の臨時プロ登録制度を使って推薦で試合に出場してはいたが、2試合だけで照準をここに合わせることができた。
識西、早川も同様で、1日36ホールの長丁場にも耐えられたのかもしれない。

日本の女子ゴルフのQTのあり方

この最終予選から、日本の女子ゴルフと、世界との比較状況が見えてくるのではないか。
「プロテスト合格」は、確かに大きなハードルではある。
「プロテストも受からないようでは、ツアーでやっていけない」という声があるのも事実。
だが、一度開いた門戸を閉じて、QTを受けることすら会員限定にしている日本のようなツアーは、世界では珍しい。

この「全米女子オープン・最終予選」は、1日36ホールの一発勝負。
プロテストには受からなくとも、ここを勝ち抜く力があることをこの3人は証明した。
次は、本戦の大舞台でそれを示すことができるかどうか。
テストに合格した会員と、受からないままのプロ(この3人は今年もテストを受けるはずだが)、そしてプロ志望のアマチュア。
図らずも今回、本戦出場を決めた3タイプのゴルファーの立場による差は、あるのか、それともほとんど同じなのだろうか?

アマチュアでツアーに何度も出場し、優勝争いに顔を出していても、プロになってすぐに活躍できるとは限らない。
逆に、アマチュア時代はさほどの実績がなくとも、プロになった途端に大きく〝化ける〟選手もいる。

アマチュアゴルファーとして生涯、ゴルフを楽しむ場合は別にして、現在のトップアマの多くは「プロとして活躍すること」を目標にしている。
その中で、目的と手段が入れ替わってしまうケースを見ることも少なくない。
「プロになること」は「試合で稼ぐこと」のための手段のはずだ。
プロになっただけでは稼げない。稼げなければ仕事としてはやっていけない。だが、プロテスト合格という一つのハードルがあるような状況や制度に振り回されているような気がしてならない。

「全米女子オープン・最終予選」というまたとないチャンスは、そうしたことをクリアにして「自分がゴルファーとしてどうありたいか」を考えさせてくれる絶好のチャンスなのかもしれない。

2014年に日本での開催が始まった「全米女子オープン・最終予選」参加者は、多少の増減はあるが、ジワジワと増える傾向にあり、2019年に100人を超えた。
今年は最多の158人。約3分の1がアマチュアだ。
世界が身近になり、挑戦意欲が増したことの表れと言っていい。

渋野日向子、笹生優花のメジャー優勝の裏に、こうした厚みがあることはまちがいない。
この先、この傾向が続くのかどうか。引き続き注目していきたい。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

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