• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Europe 伝説の名門コース...

【世界のゴルフ通信】From Europe 伝説の名門コースに新時代!女性禁制の名門ゴルフ場で全英女子オープン初開催

伝説の名門コースに新時代!
かつて女性メンバー拒否の名門で全英女子オープン初開催

元キャプテンであり、「全英女子オープン」のクラブ選手権委員長、ピーター・アーサー氏(右)と、「オナラブル・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズ」初の女性メンバーの一人、リンゼイ・ガーデン氏。

スコットランドのエジンバラ近郊にある、名門プライベートコース「ミュアフィールド」は、過去16回、「全英オープン」を開催してきたが、女人禁制のポリシーがあったため、R&Aから開催コースのローテーションから外されたことがあった。現在では、女性会員も認めるようになり、初の「全英女子オープン」が開催されることになった。

女性の入会に反対することが、クラブの伝統を守ること?!

かつて、ミュアフィールドの有名な正面ゲートに「ジュラシックパークへようこそ」という看板が掲げられていたことがあった。
ピーター・アーサー氏はこれを見て、どれほど深刻な事態に陥っているかを滑稽に気づいた。

あれから6年、ミュアフィールドの「オナラブル・カンパニー・オブ・エジンバラ・ゴルファーズ」のメンバーは、男性メンバー限定のクラブの方針をからかった、あるブックメーカーが作成したジュラシックパークの看板のことを振り返って、静かに苦笑いを浮かべることができるようになった。
2016年に女性の入会を認めなかった悪名高いミュアフィールドで、今年8月、「AIG全英女子オープン」を開催し、世界最高の女性ゴルファーにその特別な門を開くこととなる。

英国内外の新聞の一面を飾り、R&Aから「全英オープン」開催地の座から外された、2016年の投票の代償は、手の込んだ恐竜ジョークよりもはるかに高くついた。

「その時の私の反応は、びっくりしたのと同時に、悲しくなりました」と、かつてのクラブキャプテンで、現在は「全英女子オープン」の選手権委員長を務めるピーターは言う。

「これほどまでに広く、そして辛辣に報道されたことにビックリしました。突然、新聞の一面を飾ったわけですが、そのコメントの半分は事実ではありませんでした。しかし、それが人々の受け止め方。世界の反応を変えることはできませんでした」

男性メンバーのみを許可するオナラブル・カンパニーの「弁解の余地がない」立場をスコットランド首相は非難したが、この抗議は特に、女性のメンバー入りに対して反対することが、長年の伝統を尊重して守ることだと考えていたメンバーたちに警鐘を鳴らすものだった。

ついに女性に門戸を開いたミュアフィールド

2017年、再び投票が行なわれ、3分の2超のメンバーが、女性の入会に同意した。

その後、750万ポンド(12億4100万円)以上を投じてクラブハウスを増築。
最高級の女性用ロッカールームを造り、現在の20人の女性メンバーに対応している。
その中には、スコットランドのアマチュアゴルファーで、欧州ツアーで、ハワード・クラークなどのプロのキャディを務めていたリンゼイ・ガーデンも含まれている。

「なぜオナラブル・カンパニーの会員になりたいのか。
それは、世界有数のゴルフコースの一つのメンバーになりたいからです。
また、『(女性初の会員の一人である)自分を先駆者だと思うか』と聞かれることもありますが、そんな風には思いません。
会員になる前は、ミュアフィールドに行き、ゲストとしてプレーしていましたが、昔はプレー後に女性がクラブハウス内に入ってランチをすることは許されませんでした。
このような経験は、必ずしも女性にとって身近なものではありませんでしたが、今ではそれがなくなり、オナラブル・カンパニーの功績となっています。
オナラブル・カンパニーが男女混合の会員制にするかどうかを考えたとき、それは〝オール・オア・ナッシング(全か無か)〟だったのです。
スコットランド西部のゴルフクラブの中には、女性は入会できるが、特定の時間にプレーできない、この大会には参加できない、などと言っているところがまだあります。
女性は二流市民のように扱われているのです。
しかし、オナラブル・カンパニーでは、すべてが平等で、男性会員と女性会員の差は最早ありません」

世界最高峰の女子ゴルファーがミュアフィールドにやってくる日

ピーターは、2回目の投票の直後から2年間キャプテンを務め、初めての女性メンバーを入会させることに専念した。

「男性部門と女性部門という既存の伝統を受け継ぐのではなく、白紙からスタートしたので、ある意味、簡単だったと言えるかもしれません。
ミュアフィールドにはこれまで、オナラブル・カンパニーのメンバーで構成されるセクションが一つだけでしたが、女性メンバーを受け入れるなら、男女メンバーがともにきちんとやるべきだというのが私たちの思いでした。
その結果、クラブはより良いものになったと実感しています。
まだ女人禁制の他のクラブのメンバーの友人には、『何が怖いのか言ってごらんなさい!怖いことなど一つもない』と言っています。
クラブの将来を悪い方向に変えてしまうことはないし、それは入会してくれた20人の女性たちの功績を見ればわかります。
過去は過去であり、起こったことを変えることはできませんが、わずか5~6年後に20人の女性メンバーがオナラブル・カンパニーに加わり、8月には『AIG全英女子オープン』で世界の女子トッププロが集まってくる。ゴルフ界にとって非常に驚くべきことなのではないかと思います。
6年前にこれらの両方が実現すると言っても、誰も信じなかったでしょう。
今は、世界最高峰の女子ゴルファーがここにやってくるということに、大きな誇りを感じています。
R&Aから女子オープンのオファーがあったとき、それは賢明なことだと思いましたし、メンバーも女子メジャーが開催される機会を喜んで受け入れてくれました。
これまで私たちが歩んできた道のりを反映した論理的な進歩だと考えています。
ここにきて楽しかった、居心地のいい場所だったと皆様に感じていただけるようにしたいと思っています」

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。

関連する記事