• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Australia 豪州ゴルフ...

【世界のゴルフ通信】From Australia 豪州ゴルフ界を二分するLIV 世界ランク2位のキャメロン・スミスも参戦

豪州ゴルフ界を二分するLIV
世界ランク2位のキャメロン・スミスがLIVへ

©LIV GOLF

「全英オープン」でメジャー初優勝を果たし、世界ランク1位に向かって躍進中だったキャメロン・スミス。LIVゴルフに移籍し、PGAツアーの競技には今後出られない。

©Dan Imai

アダム・スコット、マーク・リーシュマンらもキャメロン・スミスとともに、LIVゴルフ行きの噂が出ていたが、スコットはPGAツアーに残留し、「プレジデンツカップ」に出場した。

©LIV GOLF

チーム・オーストラリアとも言える、LIVゴルフのチーム「パンチGC」。写真は第2戦「ポートランド大会」時のメンバー。左からブレイク・ウィンドレッド、ジェド・モーガン、グレッグ・ノーマン(LIVゴルフCEO)、マット・ジョーンズ、ウェイド・オームスビー。第3戦「ベッドミンスター大会」時には、ウィンドレッドがトラビス・スミスに変更。

©Eiko Oizumi

「LIVゴルフインビテーショナル」を母国オーストラリアでも開催したいグレッグ・ノーマン。

母国の英雄グレッグ・ノーマンに対する反応

サウジアラビアが支援するLIVゴルフは、世界中で混乱と分裂を巻き起こしているが、グレッグ・ノーマンが反乱軍ツアーの最高経営責任者(CEO)として関与したことで、豪州のゴルフは不穏な立場に立たされることになった。

ノーマンは、母国オーストラリアスポーツ界の象徴的な存在だ。
メジャー2勝を果たし、331週間にわたり世界ランキング1位の座に君臨した彼は、ISPSの半田晴久氏とともに「ゴルフ・オーストラリア」の国際親善大使を務めており、毎年豪州のベストゴルファーにグレッグ・ノーマンメダルが授与されている。

しかし彼の行動や発言は無神経だと受け止められており、特にメジャーチャンピオンのカリー・ウェブ、ウェイン・グラディ、イアン・ベーカーフィンチなど、多くのゴルファー仲間たちと対立を引き起こしてしまった。

7月の「全英オープン」でキャメロン・スミスが華々しい優勝を果たし、世界ランク2位にまでのぼり詰めたが、「ツアー選手権」終了後の「LIVゴルフ招待・ボストン」で、親友のマーク・リーシュマンとともにLIVデビューを果たしたのは衝撃のニュースだった。
LIVのビッグネームの多くが40代以降のベテランであるのに対し、スミスは29歳の全盛期の選手で、間違いなく現在のゴルフ界で最もホットな選手の1人だ。
LIVゴルフ参戦で最も注目を集めているダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボーらはいずれも、過去12か月間の試合で優勝していないが、スミスは「プレーヤーズ選手権」や「全英オープン」を含め、今季3勝を飾っている。
そのため、スミスがノーマンの計画に関わることは、豪州ゴルフ界の関係者に大きなプレッシャーを与えている。
豪州プロゴルフ協会(PGA オブ・オーストラリア)は、PGAツアーとDPワールドツアーを支援しながらも、豪州のLIVゴルファーたちが、今年後半にDPワールドツアーと共催する試合に復帰できるよう現在取り組んでいる。
豪州ツアーはPGAツアーに対し、相互の関係を良好にキープするには、PGAツアーが2024年から暦年のシーズンに戻すことが大切と考えている。
それが可能になれば、ISPSハンダPGAツアー・オブ・オーストラレイジア(以下ISPS・PGA豪州)や、南アフリカのサンシャインツアーのような小規模なツアーが、南半球の夏に開催される試合に母国のスター選手を米国から呼び戻せるかもしれないからだ。

ISPS・PGA豪州の2大会の優勝者であるマット・ジョーンズ(全豪オープン)とジェド・モーガン(豪州PGA)は、LIVゴルフの試合でプレーしながらもディフェンディングチャンピオンとして参戦することが可能になりそうだ。
DPワールドツアーは、LIVゴルファーが「スコティッシュオープン」でプレーすることを可能にした、制裁措置の差し止めを、ISPS・PGA 豪州とサンシャインツアーの共催試合も含めるよう拡大すると発表したからである。

PGAツアーとDPワールドツアーは、数人の大物選手が欠場しても、他の選手でカバーできるが、豪州ツアーは、トップクラスのインターナショナルプレーヤーの出場が禁止されれば、大きなダメージを受ける。
しかし、ファンがその選手たちをどのように支持するかは、まだわからない。

ノーマンに対する3人のレジェンドの見解

豪州と他国との違いは、ノーマンの関与を巡って分裂していることと、豪州国内の元チャンピオン同士の関係性が悲しいほど崩壊していることだ。
ノーマンを率先して批判をしているのは若い頃、ノーマンのアドバイスとサポートを受けたカリー・ウェブだ。
ノーマンがサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の暗殺について「過ち」と一蹴すると、ウェブはSNS上で嫌悪感をあらわにし、次のように述べた。

「子どもの頃のヒーローに、今の私ほど失望させられた人はいるだろうか?」

1990年に「全米プロ」で優勝したウェイン・グラディは、さらに手厳しい。

「彼は自分のことしか考えていない。彼がこれまでに成し遂げたこと、そして彼が豪州ゴルフ界のために行なったことに対する称賛の念は、もはやない。今日の PGAツアーを成長させ、作り上げるために、偉大な人たちが成し遂げてきたことを、彼が矮小化するのは、恥ずべきことだ」

1991年「全英オープン」チャンピオンのイアン・ベーカーフィンチは、ノーマンを個人的に批判することはなかったが、キャメロン・スミスにLIVの誘いに抵抗するよう促し、LIVには反対であることを表明した。

ジェド・モーガン、トラビス・スミスのようなプロがLIVの資金を受け取ったことには概ね同情的である一方、すでに裕福なベテランプロが数百万ドルを獲得することについては、賛同していない。
また、ノーマンに関する主要メディアの報道は様々で、「ニュースリミテッド」のジュリアン・リンデン氏は、「全英オープン」のチャンピオンズディナーにノーマンの出席を禁止したR&Aの決定は、狭量だとする一方で、「ジ・エイジ」のグレッグ・ボーム氏は、ノーマンがカショギ氏暗殺について「過ち」と言及したことに触れ、「グレッグ・ノーマン、過ちとは、1996年のオーガスタの12番ホールで池ポチャし、マスターズ優勝の望みが絶たれた時のことだ」と書いている。

母国でのLIVイベントの開催を予定に入れたい、とノーマンは語っているが、果たしてこれが「過ち」となるかどうかは、まだ現段階ではわからない。

Photo/Dan Imai, Eiko Oizumi, LIV GOLF

Text/Karen Harding

カレン・ハーディング

(オーストラリア)

メルボルン出身のゴルフジャーナリストで、数々の賞を受賞。女子ゴルフやゴルフ場の環境問題、大衆ゴルフなどに関する執筆に注力。

関連する記事