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【ゴルフ上達のメンタル法】vol.11「心のバランスを崩すとスイングもブレやすい」

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

今回のテーマは「安定感のあるアドレス作りにメンタルがどう影響してくるのか」について。

両足を地面にしっかりつけ、バランスよく立って構えることは、どんなショットでも大事なことである。
だが、この「バランスよく」という点において、メンタル的な要素が大きいことをご存知だろうか?
今回は、安定感のあるアドレス作りにメンタルがどう影響してくるのかをお伝えしよう。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

ナイスショットを打つための心のバランスと肉体のバランス

Illustration/Masaya Yasugahira

重心を体の真ん中にイメージしよう

クラブを振るのに最も重要な要素のひとつは、「バランス」だ。
ボビー・ジョーンズは、足を揃えて両足が触れ合う状態でショットを打つ練習をよくしていたそうだが、彼はバランスを崩すことなく、ドライバーでフルスイングすることができた。
メンタルゲームは、実は、ほとんどの人が思っている以上に、体のバランスに影響を与える。
心のバランスを崩すと、体も同様にブレる可能性が非常に高い。

バランスをとるために重要なことは、足元にある地面を感じながら、地面とつながることだ。
地に足をつけるには、頭で考えたり、雑念にとらわれたりするのではなく、「体の重心」をきっちり真ん中に置く必要がある。
信じられないかもしれないが、私たちの心の状態は、体の重心の位置に影響を与える。
とても緊張していて、多くのことを考え過ぎ、心の中に雑念がいっぱいの状態でショットに入ると、重心が頭のあたりに上がってしまうのだ。
重心が体の中心からずれ、バランスを崩し、ボールに向かって突進してしまう可能性が高い。
まるで、頭に20ポンド(約9㎏)のヘルメットをかぶってスイングしているようなものだ。
しかし、心が落ち着き、足が地面についていると感じると、体の中心が定まり、スエーしにくくなる。

腹の中心に意識を向ける

武道や、それと似たような精神を持って臨む東洋の伝統武術では、体の重心は、すべての動きと力の源だ。
それは、へその数インチ下、胴体の中心に向かって数インチ入ったところにある。
日本の武道では、「肚(はら)」と呼ばれ、 太極拳や気功などの中国の伝統的な武術では「丹田」と呼ばれる。
どんな動きであれ、体の力の中心に意識を向けるように指導されるのだ。
ゴルフでは、目標方向とは逆方向に体を回す時、重心を軸としたバネが形成される。
そして体重移動し、バネの力を解き放った時、はじめてスイングできる。
いいフィニッシュをしたときは、この重心がまっすぐに目標方向に向かっていると言っていい。

私がビジェイ・シンを指導していたとき、ゴルフスイングのこのテーマについて議論したことがある。
それまではずっと、彼はスイングするとき、腰を動かすことに重点を置いていた。
それを彼は、「肚(はら)で打つ」という感覚を持つように変えたのだ。

自分の中心を感じるエクササイズ

以下の簡単なエクササイズをすれば、違いを実感することができる。

まず、クラブを持たずに、ドライバーを振るかのようにスタンスを取る。
両手を重ねて、手のヒラを内側にし、へその下数インチのところに「重心」に置く。
次に、ゴルフのスイングをするように動いてみる。
目標に背を向けてテークバックしたら、今度は切り返してダウンスイング、そして目標に向かってフィニッシュをとる。
これを数回行なえば、自分のバランスを感じることができ、バランスを維持することがいかに容易か実感することができるだろう。

そして今度は、両手を頭の上に乗せてみよう。
数回スイングをしながら、自分のバランスを感じるように意識してみよう。
中心を保つことがいかに難しいか、いかにスエーしやすいか、恐らくおわかりいただけると思う。
両手を頭の上に置くと、重心は高くなるのだ。

深呼吸と気持ちの持ち方次第でバランスよく振れる

©Getty Images

バランスのよいスイングの持ち主のボビー・ジョーンズ。

気持ち次第で重心の位置は変わる

次に、呼吸と精神集中の組み合わせによって、重心を変える方法をご紹介する。
このエクササイズを行なうには、人の手助けが必要だ。

足を肩幅に開いて、真っすぐに立つ。
そして物事がどうなるのかについて、自分が心配、不安になる状況について考えてみよう。
そうすると額が張っていると感じたり、歯を食いしばったり、首と肩に張りを感じる人もいるかもしれない。

この時、誰かに前から片方の肩を軽く押してくれるよう頼んでみよう。
ちょっと押されただけで、後ろに傾いてしまう可能性がかなり高い。
もしかしたら、バランスを保つために後ろに下がる必要すらあるかもしれない。
体重のほとんどが、肩、首、頭に、かかっているように感じられるだろう(このため、このエクササイズは必ず、すぐ後ろに何もない状態で行ない、協力者にはわずかな力で軽く押してくれるようお願いしよう)。

次に、同じ姿勢を取って、今度は胸と背中の上部に意識を集中させる。
体重の大部分、つまり重心は、上半身にある状態だ。
そこから息を吐きながら、重心が体の下部、みぞおちの高さに下りていくことを感じよう。
次に息を吸いながら、重心がヘソの高さにあるように感じること。
次の呼吸で、ウエストの下(腹)、腰と上腿部のあたりに重心があることを感じよう。

その状態で、先ほどと同様に、誰かに片方の肩を軽く押してくれるようお願いしてみよう。
肩の力は少し抜けるが、下半身は安定したままだ。
少し強めに押したとしても、前回よりもバランスが崩れにくくなる。

もちろん、体の中の実際の体重配分は、物理的には何も変わっていない。
しかし、あなたの心が作り出した重心の変化により、体感的には明らかな違いがあったのだ。
アゴや肩の筋肉の緊張に加えて、雑念があると、まるで頭に手を置いてスイングしているかのように、あるいは重いヘルメットをかぶっているかのように、重心が高くなることがあるのだ。

©Getty Images

「丹田」の位置に、重心を収めるイメージを持とう。

思い切りバランスよく振るためには深呼吸で重心を下げる

©Getty Images

頭の上に手を置くと、体の上の方に重心がくる。重心は、深呼吸しながら下に下げるイメージを持つこと。写真はアーノルド・パーマー。

アドレス前に深呼吸し、重心を肚に収める

スイングのための適切な重心を確保するためには、ボールに近づいてスタンスを取る前に、ボールの後ろで十分に深呼吸をすることが有効だ。
息を吐きながら、重心がウエストの下、つまり自分の力を最大限に発揮できる場所である「肚(はら)」に、収まるのを感じてみよう。
そしてボールに向かって歩き始める前に、必ず完全に息を吐ききるようにしよう。
自分の体重が足の下の地面を押しているのを感じながら歩き、アドレスする。
そして目標と自分がつながっており、素晴らしいバランスで思い切りスイングができる、と自信を持ってショットしよう。

Illustration/Masaya Yasugahira  Photo/Getty Images

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