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【世界のゴルフ通信】From Middle East マキロイvsリード?中東でも繰り広げられるPGAツアー対LIVの争い

PGAツアーの新フォーマットにより煽りを受けるDPワールドツアー

©Getty Images

「ヒーロー・ドバイデザート・クラシック」ではパトリック・リードと激戦の末、1打差で優勝したローリー・マキロイ(中央)。

©Getty Images

「ヒーロー・ドバイデザート・クラシック」大会中はローリー・マキロイとパトリック・リードの確執の話題で持ちきりだった。リード(左から2番目)の横を素通りするマキロイ(右)。

「アブダビHSBC選手権」でDPワールドツアー3勝目を挙げた、フランスのビクター・ペレツ。

例年に比べて、欧州ツアーにビッグネームがいない理由

「アブダビHSBC選手権」と「ヒーロー・ドバイデザート・クラシック」は、DPワールドツアー(欧州ツアー)の中でも最大かつ最高の試合だ。
しかし、今年は両大会ともゴルフ界の変化の餌食となり、ここ10年来で最悪の大会となった。

両大会とも賞金総額は、これまでで最高額の900万ドル(約11億8000万円)で、優勝賞金は153万ドル(約2億円)。
また両大会とも、ロレックスシリーズの一部でもあり、通常の試合よりも高い「レース・トゥ・ドバイ」ポイントが付与されるとともに、優勝者には通常の試合よりもさらに1年間多く、シード権が与えられることになっている。
だが、今年はビッグネームの出場が例年に比べて少なかった。

それでも、世界ランク1位のローリー・マキロイが「ヒーロー・ドバイデザート・クラシック」に出場したことが、唯一の救いだった。
アブダビではシェーン・ローリーが世界ランク最高位の選手で、ほか世界ランク50位以内の選手は、トミー・フリートウッド、ライアン・フォックス、ティレル・ハットン、アレックス・ノーレン、トーマス・ピータース、エイドリアン・メロンクだけだった。
過去には、この大会は常にトップ10以内の選手が4~5人出場していたにもかかわらず、だ。

これは明らかに、新しい PGAツアーのスケジュールが他のツアーに影響を及ぼしている。
米ツアーのシード選手でもあるトッププロたちは、13試合ある「昇格」試合のうち、12大会に参加する必要があり、彼らは米国以外の他の大陸に行く時間的な余裕がない。
その他、4大メジャーや、昇格試合以外で、自分で選んで出場しなければならない3~4試合を考慮すると、ほとんどの選手にとって、スケジュールはいっぱいである。

「ドバイデザート・クラシック」の前年の覇者、ビクトル・ボブラン(ノルウェー)は、大会2連覇を果たすために姿を見せることはなかった。
彼は、この指定された昇格試合のコンセプトが、どれほど自分のスケジュールを支配するものであるかについて、はっきりと反対の意を唱えていた選手の一人である。

ドバイで勃発したマキロイとリードの事件

 「ドバイデザート・クラシック」の火曜日、マキロイとLIVゴルフのパトリック・リードとの間で事件が勃発。
欧米のメディアはこれを大げさに報じた。
リードはマキロイに挨拶に行ったが、マキロイは彼を無視。
「嫌悪感から」ティーを投げつけたと報じられた。
だが実際は、リードがマキロイの方にそっとティーを投げただけで、マキロイに当たってはいなかった。

マキロイはこのティー投げつけ事件を「些細なことで大騒ぎしているだけだ」と片付けようとしたが、昨年のクリスマスイブ、リードの弁護士からの召喚状を受け取ったため、リードと接触したくなかった、と述べた。

ドバイに襲来した大嵐で大会は月曜日に順延

そのマキロイとリードの「嵐」が過ぎ去ると、今度はドバイに本当の雷雨が襲ってきた。
水曜日の夕方から金曜日の午後にかけて、ゴルフ場には65ミリを超える雨が降った。
ゴルフ場はところどころ浸水し、大幅に遅れてスタートした木曜日のプレーは、道路や一般区域の浸水を考慮して、無観客で行なわれた。
このためスケジュールは大混乱となり、大会は月曜日に順延されることになった。

最終日の月曜日、マキロイは首位でスタートし、リードは追いかける立場にいた。
リードはこの日、12ホールで6つスコアを伸ばし、マキロイをキャッチ。最終ホールでもバーディを取り、マキロイの上がりを待った。

一方、マキロイも17番ホールでバーディを奪い18アンダーまでスコアを伸ばしたが、18番でティーショットがあわや池に入りそうになってしまったため、2打目はレイアップ。
第3打を約4メートルにつけて、そこからバーディを奪って優勝した。

「精神的には、今日はおそらく今までで最もタフなラウンドだったと思う。なぜなら、感情に容易に左右されないよう、自分自身に集中しなければならなかったからだ。この1週間、ベストの状態ではなかったけど、自分のゴルフをうまくコントロールし、賢くプレーすることができた。まだまだ改善の余地はあるが、今年は素晴らしいスタートが切れたと思うよ」と、2009年の同大会でプロ初優勝を飾ったマキロイは語っている。

「ライダーカップ」のトロフィー奪還に向けて「ヒーローカップ」で予行演習

©Getty Images

今年開催される「ライダーカップ」の予行演習の意味合いの強い「ヒーローカップ」第1回大会は、フランチェスコ・モリナリ率いる欧州大陸チームが優勝。

欧州大陸チームが「ヒーロー・カップ」で勝利

フランチェスコ・モリナリ率いる欧州大陸チームが、第1回「ヒーローカップ(英国・アイルランド連合VS欧州大陸チームの戦い・アブダビGCで開催)」で優勝したが、最大の勝者はライダーカップの欧州キャプテンのルーク・ドナルドと言っていいだろう。

ウィスリング・ストレーツで行なわれた2021年「ライダーカップ」で、欧州が米国選抜に敗北した後、欧州大陸選抜と英国・アイルランド連合との「ライダーカップ」形式の試合が欧州ツアーのスケジュールに加えられることになった。

「とても有意義な大会だった。メンバーとチームルームで過ごした経験は最高で、僕や副キャプテンも、多くの選手と親しくなることができた。『ヒーローカップ』は、『ライダーカップ』でタイトルを奪還するために必要なものであり、大いに成功した」と、ドナルドは語っている。

Text/Joy Chakravarty

ジョイ・チャクラバルティ
(アラブ首長国連邦)

ドバイを拠点に25年以上に渡り世界中でゴルフ取材を続けている。

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