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【世界のゴルフ通信】From Europe 地元選手の優勝への大きな期待とそれが叶わなかった悲劇の物語

©Getty Images

「全英オープン」の前哨戦、「ジェネシス・スコットランドオープン」で優勝したローリー・マキロイ。現在「レース・トゥ・ドバイ」ランキングで1位、世界ランク2位につけている。

©Getty Images

「ジェネシス・スコットランドオープン」で1打差の2位に終わった、スコットランド出身のロバート・マッキンタイア。

地元のヒーロー、マキロイに破れる

ヨーロッパ大陸が記録的な猛暑に見舞われる中、イギリスでは地元のゴルファーの成功に関する心温まる童話のようなストーリーへの期待が、昔ながらの雨に濡れて湿ったイギリスの夏のように冷たいものとなった。

スポーツに対する敬意と知識を持ち合わせているとみなされているイギリスの観客だが、そんな彼らでもロープの外で他人のことは構わずに独りよがりな応援をしているアメリカの一団のように、地元のお気に入り選手に対して熱烈な応援をするものだ。

7月にスコットランドのヒーロー、ロバート・マッキンタイアが「ジェネシス・スコットランドオープン」の最終ホールでセンセーショナルなアプローチを成功させて4日間をバーディで締めくくり、首位で戦いを終えた際、轟音と共に送られた喝采は、まるで運命の瞬間のようだった。

「生涯で最高のショットの一つ」とマッキンタイアが説明したこの驚異的な1打は、ラフから213ヤード飛び、カップからわずか1・2メートルについた。
ハイランド地方の小さな町オバン出身で、子供の頃はシンティ(スコットランドで行なわれる伝統的なチームスポーツ)をプレーしていたマキンタイアは、人生とゴルフに対して謙虚な態度を示すことで知られている。
しかし、「ジェネシス・スコットランドオープン」の会場のルネッサンスクラブにいた観客たちは、1999年にコリン・モンゴメリーが「スコットランドオープン」で優勝して以来の出来事に、期待を寄せていた。
地元出身の優勝者を祝福できるかもしれないと信じていたのだ。ローリー・マキロイを除いては……。

最終ホールのグラウンドスタンドで観客たちの大きな声援を受けるのに慣れているマキロイ自身も、マッキンタイア同様、見事なショーを見せた。
最終ラウンドの最後の2ホールで、2連続バーディを奪ったのだ。

18番グリーンでのマキロイの振る舞いは、2アイアンでの見事なショットと同じくらい洗練されていた。
彼はマッキンタイアを抱擁し、シンプルに「申し訳ない」と謝った。

これが他の誰かであれば、地元の選手の優勝を劇的に阻止したことに対して、観客の許しを得ることは難しかったかもしれない。
だが、この才能あふれる北アイルランド人に対する愛は、スコットランド人の間にも広がっている。
マキロイがこれまで大舞台で優勝争いを何度も繰り返し、6か月後にようやくこうして優勝できたことを誰もが喜んだ。
さらに、この勝利で士気が高まったことで、次の週の「全英オープン」での優勝の期待も高まった。
まさかメジャーで痛ましい敗北を喫するとは予測していなかったのである。

大雨の中、観客と一緒に戦った「我らがトミー」の脱落と落胆

©Yoshitaka Watanabe

「全英オープン」最終日は1オーバーの72でホールアウトし、10位タイに終わったトミー・フリートウッド。地元出身で、ギャラリーたちからは地元のヒーローへ最も声援が飛んでいた。

©Yoshitaka Watanabe

地元ではないが、北アイルランド(イギリス)出身のローリー・マキロイにも、リバプールのギャラリーたちから大きな声援が送られた。2014年のロイヤルリバプールでの「全英オープン」で優勝。

フリートウッドの悲劇

マキロイがメジャーで最後に優勝したのは、2014年の「全英オープン」と「全米プロ」だ。
彼がほとんど超人のように見えた黄金の4週間の期間中のことである。今から9年前のことだとは信じられない。

その優勝した舞台となったホイレイク(ロイヤルリバプール)での「全英オープン」が帰ってくる、という事実は、再び、スポーツとハンス・クリスチャン・アンデルセンだけが書き得る劇的な贖罪の物語のようだった。

しかし、ロイヤルリバプールのフェアウェイに出て、まるで星に描かれたような童話の成功の夢を抱く人物は、マキロイだけではなかった。
サウスポートのウィラル海岸に住むトミー・フリートウッドも、地元の観客たちのお気に入り選手だった。
偶然「全英オープン」開催週が、彼の母親の死後1年と重なったということもあり、もし「我らがトミー」という愛情込めた呼び名で観客から呼ばれている彼が優勝していたら、それ以上に愛される勝者はいなかっただろう。

予想通り、その人気ある長髪のヒーローは、初日を5アンダーで回って首位に並ぶと、その声援はますます高まった。
だが、その後はハリウッド業界の人々と共にストライキに入ったようだった。
次の3日間、彼のパットはまったく入らなくなり、フリートウッドとマキロイの2人は、無名だが完全に波に乗るブライアン・ハーマンに挑むことができなかったのだ。

風に吹かれ、雨でぬかるんだ最終日の悲惨な状況で、フリートウッドの夢は破れ、最後の過酷な出来事でその1週間が締めくくられた。
危険な17番ホール(パー3)で、優勝の可能性があった上位5人が崩れ去り、17番でトリプルボギーの6を叩いたフリートウッドの順位も急降下。
10位タイに終わった。
彼は短い家路を辿りながら考えた。
そしてその夜、次のようにツイートした。

「傷ついたし、がっかりし、落胆している」
「今言えることは、皆さんのサポートと愛に感謝しているということだ。皆さんの前で夢を追いかけながら、最も素晴らしい思い出を作る機会に恵まれた。ブライアン、おめでとう。あなたは素晴らしく、この勝利にふさわしい存在だ。僕は試合に戻ってくる。また会場で会おう」

©Yoshitaka Watanabe

プロ入り15年目のブライアン・ハーマン(米国)が、「全英オープン」でメジャー初優勝を飾った。

フランスのブティエ
自国のメジャーで優勝!

©Getty Images

毎年フランス・エビアンで開催される。女子メジャー第4戦「エビアン選手権」で優勝したセリーヌ・ブティエ。フランス国旗を身に纏い、記念撮影。

©Getty Images

「エビアン選手権」の翌週に行なわれた「スコットランド女子オープン」でも優勝し、2週連続優勝を果たしたブティエ。

地元でメジャー優勝を果たしたフランス女子

一方今年の夏、少なくとも一つの素晴らしい地元の選手の成功が称賛された。女子ゴルファー、セリーヌ・ブティエの物語である。

初のメジャータイトルを獲得すること(ブティエの場合は「エビアン選手権」)は、どのゴルファーにとっても特別な瞬間だが、それを自国で成し遂げ、さらにこのタイトルを初めて獲得したフランス人女性となることで、それはさらに歴史的なものとなった。

物語にはまだ続きがあり、次の週、ダンドナルドリンクスで行なわれた「スコットランド女子オープン」でもブティエが優勝。
連勝となった。

「完全にクレージーね」とブティエは、総括した。彼女は2016年、タイのアリヤ・ジュタヌガーン以来、メジャーでの勝利に続き、次の大会でも優勝したLPGAゴルファーとなった。
「すごく驚いてます」と彼女は付け加えた。
他の人々はそれを驚きではなく、むしろ欧州のゴルフライターたちが夏の間にずっと渇望していた、待望の心温まるストーリーのようだと表現するかもしれない。

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