• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From USA いまだ不透明な世界の男...

【世界のゴルフ通信】From USA いまだ不透明な世界の男子ゴルフ PGA、欧州ツアー、サウジのPIFの合意はいつ達成されるのか?

PGAツアーの形態は今後も変わらず。
新会社の設立で何が変わる?

2023年度フェデックス・プレーオフ最終戦「ツアー選手権」の会場で記者会見に出席したPGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏(左)と同ツアー・プレジデントのタイラー・デニス氏。 ©Getty Images

PGAツアーは世界の男子ゴルフをコントロール

時計が刻々と進んでいる。それは12月31日に止まる予定だが、それがきっちりとした期限なのかどうかはまだ不明だ。
今ここで話しているのは、PGAツアー、DPワールドツアー、およびサウジアラビアの公共投資基金(以下PIF)の三者が、年末までに合意を達成できるかどうか、についてである。

6月6日に発表され、その秘密主義とタイミングでゴルフ界を震撼させた「枠組み合意」は、LIVゴルフリーグの台頭によるゴルフの分裂を終わらせる出発点に過ぎなかった。
合意がどのように見えるか、また合意がなされるのかどうかさえもまだ決まっていない重要な問題である。

PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏は、PGAツアーが年末までにPIFとDPワールドツアーとの合意に達するということに対して自信を持っている。
2022~23年シーズンを8月にアトランタで開催された「ツアー選手権」で締めくくり、ビクトル・ホブランが「フェデックスカップ年間優勝」を遂げた時点で、モナハン氏は公私ともに試練の多い1年について、前向きな展望を語った。

「PGAツアーは運転席に座っており、我々の未来をコントロールする立場にある」

モナハン氏の苦悩と将来への希望

53歳のモナハン氏は、DPワールドツアー、PIFとの「枠組み合意」の発表以来、かなりの批判を受けてきた。
秘密裏に交渉したため、ツアーメンバーのほとんどが、最後の瞬間にそれを知ったからである。
1週間後、彼は健康上の不安を理由に休暇を取ったが、7月17日に復帰した。

「枠組み合意の話に戻ると、我々はゴルフ界の分裂と鬱陶しい訴訟に終止符を打ち、PGAツアーが未来をコントロールする立場に身を置くための保護策を講じている」とモナハン氏は述べている。

「そして今日、ここで会見を開くにあたり、PGAツアーと我々のファンにとって自信を持っていい結果をもたらすことができると思っている。私にはその青写真が見えており、成功を確信している」

しかしながら、具体的な内容はまだ謎のままである。
彼は交渉についての詳細には言及せず、進行中であるとだけ述べ、LIVゴルフリーグに対してこの合意が何を意味するかについても説明しなかった。
そして、年末の期限について具体的に尋ねられたとき、彼は「PGAツアーにとっていい結果をもたらすことに自信を持っている」とだけ述べた。

PGAツアーとPIFの力関係は?

「枠組み合意」によれば、現在のPGAツアーはそのままの形を維持されると言われている。
PGAツアー・インクは、何年にもわたっておなじみのPGAツアーの試合を含む年間スケジュールを管理してきた非営利団体であり、これらの試合はフェデックスカッププレーオフで締めくくられることに変わりはない。

合意の一環として、〝PGAツアーエンタープライズ〟という新会社が設立されるが、PIFの最高責任者であるヤシール・アル・ルマイヤン(彼は、タイガー・ウッズと並んでPGAツアーポリシーボードのメンバーに加わることになる)が、新会社の議長となり、モナハンが最高責任者となる。

合意には、LIVゴルフを含むさまざまな資産の評価を行なうことが求められているが、それがどのようになるかは、かなり推測の域であり、DPワールドツアーも何らかの形で関与することだろう。
LIVゴルフも存続する可能性はあるが、現在の14試合のスケジュールよりも縮小された形態で行なわれるかもしれない。
なぜなら、PGAツアーとLIVゴルフの両サイドの選手から支持される必要があるからだ。

世界的な規模で試合が開催されるスケジュールに拡大するためのさまざまなアイデアが浮上しており、PGAツアーとLIVゴルフ、さらにDPワールドツアーの試合を含む可能性がある。
しかし、それをうまく組み合わせるのは、非常に複雑な作業だ。
合意ができない場合、LIVゴルフが今後も現状通りに存在する可能性はあるが、最初、モナハン氏はそのことを予想していなかったと語った。

「枠組み合意」とは何のための合意なのか?

懐疑的な見方をする人々から、「枠組み合意が両サイドの訴訟を解消するために行なわれたのではないか?」と尋ねられた際、彼は次のように答えた。

「我々は善意で運営していると言いたいし、その善意は両サイドにあると思う。そして、合意に達するための合意である『枠組み合意』は、我々が合意に達する位置に押し上げてくれた。今ある保護策と、分裂的関係から生産的関係に移行するという我々の約束によって、新会社『PGAツアーエンタープライズ』を形成するとともに、ビジネスの基本的な転換を行なうことを可能にする。また、このことによりPIFが以前に存在しなかったと考える投資可能な実体を持つようになり、PGAツアーが男子プロゴルフの未来をコントロールし、私たちが互いにパートナーとなれるというものだ。訴訟を終わらせるつもりだった場合、単に訴訟を終了することを発表すればいいだけだ」

モナハン氏は、PGAツアーCOOであるロン・プライス氏と、アトランタの記者会見に出席した副社長、タイラー・デニス氏が、PIFやDPワールドツアーとの協議を主導していると述べた。

「我々は今、おそらく私が予想していた地点にいると思う。ロンと私は週に何度も積極的に取り組んでおり、我々が今、話をしている枠組み合意の面に加えて、PGAツアー、PIF、DPワールドツアーの間でこのような合意に至るための多くの作業の流れが存在する。日々進展しており、本来、我々の関係は非常に前向きで協力的だ」

年末までに合意を達成できるのか?
あるいは別々の道を歩む可能性もあるのか?

PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏は、新会社「PGAツアーエンタープライズ」の最高責任者に就任する。 ©Getty Images
PIF(サウジアラビア政府系ファンド)の最高責任者のヤシール・アル・ルマイヤン氏は新会社の議長となり、PGAツアーのポリシーボードのメンバーとなる。 ©Eiko Oizumi
PGAツアーのEVP & プレジデントのタイラー・デニス氏。「ツアー選手権」の記者会見に、ジェイ・モナハン氏と共に出席した。 ©Getty Images

PGAツアーにとって統合後の成功とは?

モナハン氏は、PGAツアーにとっての成功とは、「PIFと提携し、PIFにPGAツアーエンタープライズ(プロフィットLLC)の少数株主となってもらい、ツアーがPGAツアーと今後の男子プロゴルフを運営管理し続けることを含む」と語った。
それにより「PGAツアーが資本を使って商品に再投資し、放送中のCMの回数をもっと減らし、データビジネスへのさらなる投資や、メディアビジネスへのさらなる投資、ファンベースとゲームを成長させ、多様化させるのに役立つと考えている組織や企業への潜在的な投資をすることができる」と述べた。

「我々は資本を投資する組織ではないが、その立場でツアーと選手のために生産的かつ建設的に行なうことができるということは、将来に影響を与えるだろう」

「我々はこれをできるだけ強力なツアーにし、それを行なう責任がある。そして私はそれがどっちもできると思っている。こうなることが、私にとっては成功した結果といえるのだ」

デニス氏は、ツアーのチームのメンバーとDPワールドツアーおよびPIFと、常時コミュニケーションを取っていると述べた。
彼らはこのような大きな合意の大部分を占める、非常に入念な詳細に取り組んでいることは明らかである。

年末までに合意に達する能力があるのかどうかについて、多くの憶測を呼んでいる。
期限が延長される可能性はあるのか?
あるいは、両サイドが別々の道を進むことになるのだろうか?
それについては不明だが、刻一刻と期限に向かって時間は進んでいる。

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

Photo/Getty Images、Eiko Oizumi

関連する記事