日本女子選手の海外進出が増加傾向に……
男子も若手に世代交代
昨年は、テレビで見ていた神谷そらがメジャー初優勝
女子ツアーでは、「日本女子プロ」「日本女子オープン」という公式戦2つが行なわれ、それぞれ神谷そら、原英莉花が優勝している。
パサージュ琴海アイランドGC(長崎県)で行なわれた「日本女子プロ」は神谷と、西郷真央、小祝さくらの実力者2人が最終組で激突。
この日、4つスコアを伸ばした神谷が、小祝を逆転して優勝した。
前年同大会の川﨑春花の優勝に続く、ルーキーのビッグタイトル獲得だ。
ツアー1位のドライビングディスタンス(260・50ヤード。10月22日現在)が武器の神谷は、4月の「フジサンケイレディス」以来の2勝目。
とはいえ、重圧のかかる公式戦で2年連続してルーキーが勝ったことに衝撃を受けたベテラン選手も少なくなかった。
「経験を積んで勝つのがメジャーだと思っていたけど……」と、複数の経験豊富なプロから聞かされたのが印象的だった。
神谷自身も、優勝インタビューで「去年はプロテスト前。練習場で、スマホで(同大会のテレビ中継を)観ていた側ですし、(この試合に)出られただけでもすごくうれしかった。優勝できて、まだ実感もなくて、そわそわしている」と話していた。
タイトルの重みを実感する前に勝ったと言っていいだろう。
プロになったばかりの若い選手の活躍が目立つツアーでは、公式戦も例外ではないようだ。
腰痛を乗り越え3年ぶりに原英莉花が「日本女子オープン」優勝
3週後に開催の「日本女子オープン」は、芦原(あわら)GC海コース(福井県)で40年ぶりに行なわれた。
コースを囲んでいた木が、松くい虫の被害に遭ったものも含めて数千本伐採され、海からの風の影響を、直接受けるコースに姿を変えての開催だ。
優勝したのは原英莉花。
菊地絵理香との激戦を3打差で制し、2020年以来の大会2勝目。
シーズン序盤には腰痛で苦しみ、5月にヘルニア摘出手術を受けての離脱から復帰して、8戦目での勝利だった。
2022年にはシード落ちも考えたほど思うようなプレーができず、2023年には腰痛手術。辛い経験を乗り越えての勝利だけに喜びも大きかった。
「今週は思ったようなスイングでボールを打てていたので、自信を持ってプレーできた」と、笑顔で胸を張った。
この勝利で得た自信を武器に10月には米ツアーQスクールにステージ2から挑戦。
いい位置でQシリーズ(ファイナル)進出に近づいていたのだが、3日目にまさかの過少申告。
スコア誤記で失格となる残念な結果に終わっている。
原以外にも、米ツアー予選会に挑戦する選手もいて、ステージ2には、8人の日本勢が出場。
アマチュアの馬場咲希ひとりがQシリーズ(最終予選)への切符を手にした。
馬場は、日本のプロテスト受験も控えており、いずれも結果次第だが、プロとしての第一歩を日米どちらで踏み出すことになるかを決める日も近い。
また、ステージ2まで免除されている西郷真央、吉田優利が参戦を表明している。
公式戦でもルーキーが優勝できるようになった日本ツアー。
日本だけでなく、米国にも活躍の場を求める選手は、若手も、経験を積んだ中堅にも増える傾向が強くなっていることを感じさせる。
海外遠征で揉まれた若手男子が日欧で優勝
男子ツアーも秋には、ナショナルオープンが開催された。
今年の舞台は茨木CC西コース(大阪府)。優勝したのは25歳の岩﨑亜久竜だ。
QTから初めてツアーにフル参戦した昨年、優勝はないが10回のトップ10入りで賞金ランキング3位に。
日米欧ツアーの新しい提携によって出場権を得たDPワールドツアーに挑んだ2023年は苦労の連続だった。
15試合に出場して予選通過はわずか3回だけ。
その間に、久常涼の「カズー・フランスオープン」優勝を目の当たりにする。
日本ツアーでも苦戦が続き、挑んだ「日本オープン」。最終日は、3打差7位タイからのスタートだったが、フロント9で4バーディ(1ボギー)を奪って首位に立ち、最終的には石川遼に2打差で逆転優勝。
ツアー初優勝をメジャーで果たし、今後への大きな可能性を感じさせた。
日本開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」も、盛り上がりを見せた。
「日本オープン」の結果が反映され、岩﨑、石川遼も参戦。コリン・モリカワ(米)が圧勝したが、石川は日本人最高の4位タイ。
久常と今年の「日本プロ」優勝者の平田憲聖(いずれも6位タイ)とともに、トップ10の資格で米ツアー「ワールドワイド・テクノロジー選手権」(11月2~5日、メキシコ)出場権を獲得している。
このチャンスを生かすかどうかは、本人たち次第だが、石川は以前常駐していた米ツアーへのリベンジ。
久常、平田は今後への挑戦をどんな形ですることになるのか、楽しみな展開となっている。
3月からほぼ毎週、びっしりと詰まった試合で戦い続けながら、ステップアップを考える女子。
シーズン中でも試合がない週も多く、日本ツアーで自分を磨く選手と海外にチャンスを求める選手らが入り混じる男子。
様々な形で高みを目指す姿が、どんな形になっていくのか興味深い。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。