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【世界のゴルフ通信】From USA いまだ不透明な枠組み合意とボール規制にタイガー・ウッズが言及

12月に入っても、まだ不透明な「枠組み合意」は期限延長か?!

「ヒーロー・ワールドチャレンジ」で、PGAツアー、DPワールドツアー、PIF(サウジ政府系ファンド)の枠組み合意の進捗状況と意見を初めて語ったタイガー・ウッズ。©GettyImages
PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏に対して批判がある中で、タイガーは「ジェイを信頼している」と語った。©GettyImages

タイガー・ウッズの復帰と枠組み合意についての見解

タイガー・ウッズは、昨年6月にPGAツアー、DPワールドツアー、PIF(サウジアラビア公共投資ファンド)による「枠組み合意」が発表されて以来、「ヒーロー・ワールドチャレンジ」での復帰時に、その状況について初めて自身の意見を述べた。

要約すると、彼は3者での合意の発表に驚いたといい、彼や他の選手がその進捗を知らされていなかったことに不満を表明。
「こんなことは、もう二度と起こらないだろう」としている。

そしてウッズは再び、ゴルフボールの飛距離規制に対する自身の立場を強調。
多くの選手が異議を唱えており、PGAツアー全体もこの動きに反対しているにもかかわらず、この変更を歓迎すると述べたのだった。

また彼はPGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏に向けられた批判に言及したが、今後も彼に信頼を寄せていくと語った。

「ジェイはその方向性の一部だったと思う。以前起こったことは二度と起こらないし、今後も起こらないことを理解している。関与している選手や選手会の理事たちがその役割を担っている限り、起こらない」

「私が理事会に参加した理由の一つは、ジェイを信頼しており、今後彼は何ができるか、そして何が再び起こり得ないのかを信じていたからだ」

ウッズはその後、選手会理事としてPGAツアー政策委員に任命され、交渉に関与している。

「プロセスと、それがどのように進歩しているかには満足しているが、遅々として進まない点や、我々が実現させたい一部の変更が実施されていないことに対しても不満を感じている。そして(期限が)非常に迫っているので、まだ行なわれていない変更のいくつかを実施したいと考えているスケジュールがある」

「全ての選手会理事は、関係するすべての選手、そしてPGAツアー全体にとって最良の契約を結ぶために、多くの時間を費やし、休みなく働いてくれた」

ウッズは、まだたくさんの仕事が残っており、締切が延長される可能性もあることを認めた。

また、PGAツアーエンタープライズとして知られる新しい事業体についても触れ、これが非営利のPGAツアーとは別個の営利事業体となる多くの可能性について言及。
ウッズはまた、この契約がどのように進行しても、PGAツアーが存在する形態を保護する必要があると明言したが、新しい事業体がどのような形態を取るかについては不明確であることを示した。

「答えはまだはっきりしていない。我々がどのようにプレーするかについては、PGAツアーであろうと、合併であろうと、あるいはチームゴルフであろうと、多くの不確定要素があると言わざるを得ないね。一度に多くの異なる側面が提示されており、我々はそれらすべてを解明し、すべての関係者と選手にとって最善の解決策が何かを探っているところだ」

ウッズは、これが大きな課題であることを認めた。PIFが営利目的のLLCやプライベート・エクイティ会社に数百万ドルを投資しているかどうか(ツアーが交渉を認めているように)、またはそれら全てを組み合わせたものであるかどうかにかかわらず、選手が利益を得ることを可能にし、同時にこれらの企業が利益を上げることができる新しいコンセプトが形成される必要があると述べた。

PGAツアー選手会理事にジョーダン・スピース選出

2024年末まで、PGAツアー選手会の理事の任期が残っていたローリー・マキロイ(右)が、昨年11月に突如辞任を表明。その代わりにジョーダン・スピースが選出された。©GettyImages

PGAツアー選手理事に、ローリー・マキロイの後任として選ばれたジョーダン・スピースは、PIFとの合意を望むかどうかについては明言しなかった一方で、それは選手次第であり、PIFが満たすかどうか不明な条件が伴うことを認めた。
これらすべてが、状況をますます不透明なものにしている。

「PGAツアーの選手たちが持つべき非交渉条件のようなものがあるはずで、それがPIFと合意できるかどうかはわからない。おそらくできるかもしれないが、私にはわからない」

PGAツアーの「ガバナンス」問題に対するウッズ自身の不満や、舞台裏で相当な動きがあることを認め、選手がLIVに移籍することは驚くことではないと述べた。

どのようにして譲歩や合意が実現できるかは、依然として非常に疑わしい状況である。

ウッズは具体的にLIVゴルフについて言及しなかったが、チームゴルフを一つの可能性として認めた。
LIVゴルフリーグは、2024年に14試合の12チームで続行され、それが新しいものにどのように適合するかは、現時点では答えのない多くの疑問の一つだ。

「関係者全員が見返りを望んでいるが、それは取引の一部に過ぎない。しかし、我々はツアーの誠実性と、それがどのようなものであり、今後何を意味するのかを守らなければならない」とウッズは語った。「これまでの数か月でそれをすべて理解しようとするのは、非常に困難な作業だった」

2028年から「飛ばないボール」を採用。
選手の反応は?

「飛ばないボール」の採用を、2028年1月から実施すると発表したR&AとUSGAに対し、賛成意見を主張するタイガー・ウッズ(右)とローリー・マキロイ。©GettyImages
世界のゴルフのルールを統括するR&A最高責任者のマーティン・スランバーズ氏。©GettyImages
USGA(全米ゴルフ協会)のコミッショナー、マイク・ワン氏。©GettyImages

ゴルフボールの問題は、特にUSGAとR&Aが新規格が2028年まで採用されない可能性があると発表していることから、時期を逸したような形になっている。
だが、それでもウッズやローリー・マキロイはこれが実現することを喜んでいる。
しかし、他の選手たちはそれほどではない。

PGAツアープレーヤーのキーガン・ブラッドリーは、「アマチュアゴルファーにとって、ボールが飛ばなくなるというのは、非常に恐ろしいことだ」と語った。

「これ以上、馬鹿なことは思いつかないよ。ゴルフの人気が高まっている中で、あまり賢明とは思えないね」

また、リッキー・ファウラーも同様の見解を表明した。

「今日のゴルフの状況を考えると、ゲームは過去に比べて良い状況にあるとは言えないと思う。ある程度の保護はあったほうが良いと思うけど、週末にプレーする人たちで、飛距離を落としたいとは誰も思わないだろう。そんなのはゴルフとは言えない。ボールだけが、この問題に取り組む方法だとは思えない」

それに対し、R&Aの最高責任者であるマーティン・スランバーズ氏は次のように語る。

「私は20年前に、この問題を見逃したと感じている」

最近、米国の「ゴルフダイジェスト」誌に対して、ボールの規格の変更が必要であると語った。

「ゲームは、モデル・ローカルルールに満足していなかった。エリートレベルで二分化された試合が生まれるのではないか、という見方もあった。PGAツアーはそれについて公然と強く反対していたし、全米プロゴルフ協会も同様だった。多くの選手たちが声を上げていたが、私たちの仕事はそれに耳を傾けることだ」

スランバーズ氏は、R&AやUSGAの責任は、ゴルフというゲームの長期的な未来に対するものであり、USGAとともにゴルフの管理者として、ゴルフがさらに何百年も続くことに対して責任があると語る。

「だから、私たちは皆さんの意見を聞いた上で、これから何をするかについての決定を下したのだ」

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

Photo/Getty Images、Eiko Oizumi

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