2024年、男女ツアーとも試合数減
若手実力派は海外へ流出の日本ツアー
若手の台頭と強まる海外進出傾向
女子38試合、男子26試合が行なわれた2023年の日本ツアー。
いずれも熱戦が繰り広げられたが、選手たちの海外流出傾向も目立つ1年となった。
女子ツアーは、前年同様、3月第1週の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」から、11月の最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」まで、シーズン中は1週を除いて全週行なわれた。
双子の岩井姉妹が2人で5勝したり、前年、ステップアップツアーで史上最多の5勝を挙げた櫻井心那が4勝、神谷そらが公式戦「日本女子プロ」を制するなど、新しいヒロインが多く生まれた。
一方で中堅、ベテランの活躍も目立った。
かつての世界ランク1位で、日本ツアー28勝(正確には30勝だがJLPGAの規定により別カウントの2勝がある)の申ジエ(35歳)が、2勝して最終戦まで女王争いに参戦。
同じく35歳の菊地絵理香も、「ニトリレディス」優勝の他に、「日本女子オープン」で最後まで優勝争いを演じ、存在感を示した。
2勝した青木瀬令奈は、30歳になってもツアーを引っ張る気概を見せている。
不調と故障を乗り越えた原英莉花が、「日本女子オープン」で菊地絵理香との優勝争いを制した戦いも印象に残った。
年間女王は、海外遠征後、不調だった山下美夢有が大詰めでよみがえり、最終戦優勝で年間5勝。2年連続タイトル獲得で強さを見せつけている。
今季は吉田優利、稲見萌寧、西郷真央も米ツアー参戦
力をつけた選手たちの海外志向も止まらない。
西郷真央、吉田優利がQシリーズ(QTファイナル)から今季の米ツアー出場を決めたのももちろんだが、意外だったのは稲見萌寧だ。
元々、海外志向はあまりないことを公言していたが、米ツアーの1戦でもある「TOTOジャパン」で優勝すると一転、「将来のことを考えても、米ツアーで戦った経験は私の人生の一つになると思う」と、今季の米女子ツアー参戦を表明した。
畑岡奈紗、笹生優花、古江彩佳、勝みなみ、西村優菜は今季も引き続き参戦する。
シードは失ったが渋野日向子も出場できる試合で優勝を狙うと言っており、日本勢は9人が米ツアーを主戦場にすることになりそうだ。
QTセカンドステージでいい位置にいながら、まさかのスコア誤記による失格となった原英莉花、Qシリーズまで進んだが力及ばなかった馬場咲希も、今後の参戦を目標にしている。
遅まきながら多くの選手が”世界一のツアー”で戦う気持ちを持っていることがはっきりと見えてきた。
JLPGAツアー主催は2027年からに急遽変更
日本ツアーはどうか。
年末に発表された2024年のスケジュールからは、3年間開催された「楽天スーパーレディース」がなくなり、試合数は37試合となった。
「楽天スーパーレディース」は、公式戦以外でJLPGA主催、楽天は特別協賛企業という新しい形で開催されていた。
2025年からと言っていた(注:詳細は後述)ツアー競技全て(「日本女子オープン」、「TOTOジャパン」を除く)をJLPGA主催とする方針を〝先取〟した形の新規大会だった。
しかし、3年契約の最初の年からスポンサーサイドの不満が漏れ聞こえてくる状態で、撤退は関係者の間ではずいぶん前から囁かれていた。
2022年の開催を予定しながら、条件がJLPGAと折り合わずに開催をやめた「GMOインターネットレディース」の週と合わせて、7月は2週が空き週のまま。2025年からとしていたJLPGA主催がツアー競技の基本という形を、2023年末になって急遽変更。
2年先送りにしたことと併せて、水面下での交渉が上手くいっていないことが露呈した。
猛暑で選手やキャディなどが、熱中症になるケースが多かったことを踏まえると、結果的に夏場に2週休みになるのは悪いことばかりではないが、意図せずしてこうなっていることを認めた上で、今後を考える必要があるだろう。
自国のツアー衰退が海外でも通用する強い選手を育てることになる?!
若手が大活躍の男子
試合を求めて海外へ
男子ツアーも、賞金王・中島啓太、2位の蟬川泰果、3位の金谷拓実らを中心に激戦が繰り広げられた。
終盤の「ダンロップフェニックス」では、アマチュアの杉浦悠太が優勝。
直後にプロ転向を宣言して話題となった。
ただ、残念ながら試合数が26と少なく、せっかく盛り上がってきたところで試合が続かない、など〝ツアー〟としての在り方が引き続き問われることになった。
2024年の日程からは、さらに4試合が消えて1試合が復活。
ツアー競技は全部で23試合となった。
中でも52回の歴史を持ち、一時はツアー最高の賞金額を誇ったこともある「マイナビABCチャンピオンシップ」が協賛スポンサーが見つからずに撤退したことは、関係者に大きな衝撃を与えた。
ツアープロが試合を求めるのは当然こと。
米ツアーQスクールファイナルステージには、同ツアー1勝の小平智と中島啓太が参戦。
どちらもPGAツアー出場権は得られなかったが、中島は日本の賞金王としてDPワールド(欧州)ツアーに出場できるため、基本的には川村昌弘、星野陸也らとともに、毎週、国境を越えてプレーすることになる。
2023年のアジアンツアーの「インターナショナルシリーズ・オマーン」で優勝した金谷を含め、レベルアップだけでなく試合の場を求めて海外へ出る選手は多い。
かつて豪州勢がそうであったように、自国ツアーの衰退が、選手たちを強くたくましくする傾向が強まるのかもしれない。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。