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【世界のゴルフ通信】From Japan 今季の日本男女を占う!国内男女ツアーそれぞれが抱える悩み

多忙なスケジュールをうまく調整することが必須

昨年、「JLPGAメルセデス・ベンツ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」など5冠を達成した山下美夢有。©GettyImages

閏(うるう)年の今年、3月を待たずに日本の女子ツアー(JLPGA)が開幕した。
開幕からしばらくの間は選手や関係者、ツアーカメラマンでさえも「誰だっけ?」と首をかしげる〝新顔〟が何人もいるのが当たり前になって久しい。
それほど入れ替わりが激しく、層が厚くなっている。

今年のツアーはどんな展開になるのか。
3年連続・年間女王タイトルがかかる山下美夢有次第ではあるが、山下だけでなく上位選手たちは、海外メジャーに対してどう向き合うかがカギになる。
海外メジャーで結果を出せば、日本の公式戦の倍のメルセデスランキング・ポイントが得られる。
一方で、日本でびっしり試合が続く中での海外遠征は、スケジューリングも含めた体調管理が難しい。
さらに、世界のトッププレーヤーたちとプレーすることで生まれる『欲』との戦いにもさらされる。

もっと飛ばしたい、もっときれいなスイングをしたい……。
アスリートとして抱いて当然の、自分を高めるための『欲』は、危険な一面をはらんでいる。

実際、昨年の山下も前半戦で4勝しながら、メジャー3試合出場後は、しばらく勝利から遠ざかった。
最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップ」で5勝目を挙げてタイトルを手にしたが、自分との戦いが困難だったことは明らかだ。

もうひとつ、今年も予想される猛暑、いや酷暑をどう乗り切るかも大きな課題だ。
北海道や軽井沢など、元々涼しい気候のコースで開催される試合が多い夏場だが、地球温暖化の影響も著しく、そこさえも涼しくない事態が続いている。
スケジュール的にも移動がきつい時期もある。
昨年は選手だけでなくキャディまで熱中症が相次いだ。

地球温暖化以外にも、熱中症が増えた要因はいくつもある。
『世界基準』を旗印に4日間大会が増えたこと。シード選手以外はリランキングがあるためのんびりしてはいられないこと。
若い選手が多いため練習ラウンドをみっちりとすること。休み方を知らないこと……。 

この中で、どれだけ自分の身体と向き合うことができるかを、選手たちは考えながら戦わなくてはならない。
昨年は7月に1週だけだった空き週が、今年は2週ある。皮肉にも、試合が減ったことが、選手たちにとっては休息になる。
ツアーも、選手たちをつぶさないために、どんな対策が取れるのか。
こちらも大きな課題となっている。

新しい顔ぶれも楽しみだが、昨年、初優勝しそうでできなかった桑木志帆、竹田麗央がどこで勝つのか、も興味深い。
まだまだ元気いっぱいの藤田さいき、通算30勝の永久シードまであと2勝と迫る申ジエらのベテラン、昨年2勝と安定している青木瀬令奈ら中堅の踏ん張りも見ものだ。

昨年は「TOTOジャパンクラシック」2位タイなど、トップ10入り10回を記録した桑木志帆。今年こそ初優勝なるか?©GettyImages

さらに今年は「パリ五輪」もある。申が、連覇のかかる開幕戦を欠場して米ツアーに出場したことでもわかるように、前半戦は代表入りもかかるだけに、より白熱した戦いになるだろう。

星野、松山に続け!
海外で活躍する日本男子

今年は、DPワールドツアーを主戦場にしている中島啓太。「ラス・アル・カイマ選手権」で4位タイ。©Eiko Oizumi
「コマーシャルバンク・カタールマスターズ」でDPワールドツアー初優勝した星野陸也。現在、ポイントランキングで2位。©GettyImages
昨年、DPワールドツアー「カズー・フランスオープン」で優勝し、今季からPGAツアーに参戦中の久常涼。©Eiko Oizumi
「LIVゴルフ・プロモーションズ(予選会)」を経て、今季からLIVゴルフに本格参戦中の香妻陣一朗。©Eiko Oizumi

女子に遅れること約1か月。
ようやく開幕した男子ツアー(JGTO)は、試合数も23と少なく、より海外を目指す戦いの様相が濃くなりそうだ。
日本で賞金ランキング・上位に入ってDPワールドツアー(以下、欧州ツアー)に出場し、そこからPGAツアーに行くルートが、はっきりと見えているからだ。

日本の開幕前に、欧州ツアー「コマーシャルバンク・カタールマスターズ」で星野陸也が初優勝した。
今年、米ツアーでコツコツとプレーしている久常涼は昨年、欧州ツアーの「カズー・フランスオープン」で勝って新人王となり、米国に渡った。
星野もこのルートをたどるべく、戦い続けている。
昨年のJGTO賞金王・中島啓太も欧州ツアーですでに存在感を示している。
香妻陣一朗のように「LIVゴルフ」を目指す道もある。

PGAツアー「ジェネシス招待」最終日に、圧倒的なスコアを叩き出して2年ぶりに優勝した松山英樹は別格としても、目指すは海外での活躍。
かつての豪州勢のように、自国ツアーが脆弱な分、積極的に海外の試合に出場して貪欲に稼ぐ。
そうした選手が出てくるなら、それはそれで面白い。

では、日本ツアーはどうか。
現在、海外に出ている選手たちだけでなく、若手も含めて実力ある魅力的な選手は増えているのに、試合はまた減った。
海外で活躍する選手が増え、上位に入って獲得賞金額が報じられれば、日本とは雲泥の差のその額に目が行ってしまう。

日本ツアーの存在価値そのものが問われ始めて久しい。
試合数が少なく、ツアーと呼ぶには間が空き過ぎて、選手がプレーする場が提供できていない。
それ以外にも、ツアーを主管する日本ゴルフツアー機構(JGTO)と選手会の2つの組織が落ち着かないままでいること。
スポンサー離れは、それが伝わっているからに他ならない。
試合がなければファンは増えない。
凋落著しく、もはや失うものは何もないのだから、思い切った改革を行なうチャンスだと考えを切り替えてはどうか。
スポンサー頼りをやめ、入場者収入を上げることを考えるというプロスポーツの基本に戻ることができれば、長い目で見ればツアーとして安定するはずだ。
女子にも同様のことが言えるが、スポンサーの少ない男子のほうが、より切り替えやすいはず。
ツアー存続のためには、その勇気が必要だ。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

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