ゴルフは人生に似ている。
時には勝ち、時には負けることもあるが、努力が実り、運も味方して勝利した者だけが優勝トロフィーを掲げることができる。
「栄光への道」を突き進む、彼らの足跡をご紹介していこう。
Rory McIlroy

1989年5月4日生まれ。北アイルランド出身。2007年プロ転向し、メジャー4勝、PGAツアー27勝、DPワールドツアー16勝、アジアンツアー4勝。昨年はDPワールドツアー「レース・トゥ・ドバイ」で総合優勝を飾り、最優秀選手賞「セベ・バレステロス賞」を受賞。「マスターズ」で優勝すれば、キャリアグランドスラム達成。エリカ夫人と長女ポピーちゃんの3人家族。
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2007年にプロ転向して以来、メジャー4勝、PGAツアー27勝、DPワールドツアー(欧州ツアー)16勝と世界を股にかけて大活躍中のローリー・マキロイ。
今年は、自身PGAツアー初戦の「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」で優勝。
まもなく「マスターズ」が開幕するがこの勢いを維持して、今年こそキャリアグランドスラム達成なるか?!
出場試合数を絞り、優勝争いに集中する作戦に切り替えたマキロイ

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米ツアー27勝目はペブルビーチで達成。
5億5000万円獲得
ローリー ・マキロイは、2024年の12月時点で、これまでこの年以上にゴルフをしたことはなかったと考えている。
昨年は例年以上に多くの試合に出場し、メジャーでの勝利数を更新するチャンスを高めようとしていたのだ。
しかし、今年は出場試合数を減らす予定だ。
昨シーズンの米ツアーでの勝利はわずか2回で、そのうち1回はシェーン・ローリーとのチーム戦「チューリッヒクラシック・オブ・ニューオーリンズ」だったため、「より少なく、より多くを得る」アプローチのほうが、世界屈指の試合からより多くのものを得られるかもしれない。
そして、その決断は良い方向に進んでいるようだ。
世界ランク3位で北アイルランド出身のマキロイは、「AT&Tペブルビーチ・プロアマ(PGAツアーの賞金総額2000万ドルのシグネチャーイベント)」で米ツアーのシーズンデビューを果たし、2025年が、メジャー4勝の彼にとって大きな飛躍の年となる可能性を示唆する結果を残した。
通算21アンダーで優勝し、PGAツアー27勝目、世界で通算42勝目を達成。
1990年以降、マキロイよりも多く世界でタイトルを獲得しているのは、タイガー ・ウッズ、フィル・ミケルソン、コリン・モンゴメリー、ビジェイ・シンだけだ。
これは非常に名誉なリストである。
さらに、今回は80人のエリートプレーヤーを相手に優勝したことで、この勝利はさらに価値のあるものとなった。
親友で同郷のシェーン・ローリーと優勝争い
ペブルビーチゴルフリンクスでの第3ラウンドは、寒さと雨に見舞われたが、最終日はそれとは対照的に、明るい日差しと心地よい風に恵まれた。
6人の選手が一時的に首位に並ぶ混戦となったが、マキロイは10番ホールで18フィートのバーディパットを沈め、単独首位に浮上。
14番ホール(パー5)では、339ヤードの豪快なドライバーショットを放ち、214ヤードから7番アイアンでピンそばに2オン。
25フィートのイーグルパットを沈めて、優勝賞金360万ドル(約5億5000万円)をかけた勝利を決定づけた。
第1ラウンドでプレーしたスパイグラスヒルでは、ホールインワンも達成したマキロイは、最終的には2位と2打差で優勝。
2位には、親友であり同郷のシェーン・ローリー(最終日68)が入った。
「シーズンのスタートとしては、本当に素晴らしいね」と35歳のマキロイは語った。
彼にとってカリフォルニアでの勝利は2回目。ペブルビーチではわずか3度目の出場で優勝した。
「こんなに早い段階で優勝できたことはとても大きな意味がある。去年の秋からいい流れでプレーできているし、その勢いは今年も続いている」
マキロイが本来の力を発揮すれば、ライバルたちにとっては大きな脅威となる。
「僕はいつも、ローリー・マキロイのような選手が 〝Aゲーム(最高のプレー)〟 をしたら、誰も勝てないと思っている」とシェーン・ローリーは語った。
「彼が好調なら最高のプレーを見せるし、不調でも十分に良いゴルフをする」と、ジャスティン・ローズとともに3位タイに入ったルーカス・グローバーは語る。「だからこそ、彼には20勝以上の優勝と、メジャーでの実績があるんだ。今日のプレッシャーとコンディションの中で見せたプレーは、本当に素晴らしかった」
昨年の「ウェルズファーゴ選手権」に続き、シグネチャーイベントで2勝目を飾ったマキロイは、2021年にLIVゴルフリーグが創設されたことを受け、PGAツアー内でこうした高額賞金の限定フィールド大会の実現を推進した選手の一人だった。
その彼がまたしても勝利を手にしたことには、何か因縁めいたものがある。

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昨年の『全米オープン』は理想形。純粋な競技が、ファンにとって魅力

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プロゴルフの本質と観客の興味を引く競技

このシグネチャーイベントの導入は、ファンにとってより魅力的な大会を増やす目的もあった。
最近では、PGAツアーの試合をよりエンターテイメント性の高いものにしようという意見もあり、ジャスティン・トーマスが年初にツアーメンバー向けのメモでその考えを詳しく説明した。
しかし、マキロイはプロゴルフの本質を見失うべきではないと考えている。
「バランスが大事だよね。プロゴルファーとして夢を追いかけ、最高のプレーを目指しているときに、〝観客を楽しませること〟を第一に考えているわけじゃない。僕たちは競争心を持つアスリートであり、世界最高のプレーヤーたちと戦い、勝利を目指している。その純粋な競争自体が、観客にとってもおもしろいものだと思う。でも今の時代、〝ゴルフは面白いのか? つまらないのか?〟 という議論ばかりがされている」
「去年の『全米オープン』最終ラウンドでは、僕は勝てなかったけど、あれは本当におもしろい試合だったと思う。あれこそ純粋に競争の魅力が詰まった試合だった。そういう試合がもっと増えれば、もっと良い形になるはずだ」
今回のペブルビーチも、まさに理想的な展開だった。
リーダーボードにひしめく選手たちと、厳しい天候や競争に打ち勝った、ふさわしい優勝者。
マキロイはひたすら自分らしいプレーを貫き、それが勝利へとつながった。
今後の試合でも、それで十分だろう。
「自分の能力を最大限に発揮し、今日のようなプレーを少しでも増やせれば、世界ランキングも勝利数も、自然とついてくるはずだ」
それは、彼が何試合プレーしようが真実だ。
2025年、マキロイのプレーをそれほど頻繁に見ることはないかもしれないが、それでも彼にとって重要な年になるかもしれない。
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Text/Dave Shedloski

デーブ・シェドロスキー(アメリカ)
長年にわたり、ゴルフトーナメントを取材。著書にアーノルド・パーマーの伝記『A Life Well Played』やジャック・ニクラスの『ゴールデン・トワイライト』などがある。