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【私の愛したゴルフコース】第31回トラリーゴルフクラブ (アイルランド)

世界のゴルフフォトグラファーの第一人者として今も第一線で活躍するデビッド・キャノン。

彼のファインダーを通して切り取られた世界のゴルフコースの数々は、まるで宝石箱のジュエリーのように一つ一つが個性豊かに輝いている。

私の愛したゴルフコース第31回はトラリーゴルフクラブ (アイルランド)を紹介する。

Tralee Golf Club

©David Cannon (Getty Images)

トラリーゴルフクラブ
●設計:アーノルド・パーマー
●コース:6947ヤード・パー72
●備考:ダブリン国際空港から、車で約4時間。レストランでは、食事だけでなく、ワインやビール、ウィスキーなど各種充実したラインナップのお酒も楽しめる。ゴルフアカデミー、パー3コースも完備。

アイルランドのゴルフの聖地にあるパーマー設計コース

「これほどゴルフコースの建設に、理想的な土地にはこれまで出会ったことがない」「前半の9ホールを設計したのは私かもしれないが、後半の9ホールを設計したのは神に違いない」——— アーノルド・パーマー

アーノルド・パーマーと共同設計者であるエド・シーが手掛けたこの素晴らしいゴルフコースは、1984年にオープン。
リンクスゴルフの世界では比較的新しい存在であるトラリーGCは、町の郊外に9ホールがあった旧所在地から、ウェストバローの「理想的な土地」へと移転したのだ。

ウェストバローは、アイルランド南西部ケリー県の「湖水地方」の北側に位置している。
この地域はゴルフの「聖地」とも言われ、例えばバリーバニオン、ラヒンチ、ドゥークス、ウォータービル、ホッグスヘッド、キラーニー、アデアマナーなどのクラブが、半径75キロメートル圏内に点在している。
シャノン国際空港も近く、新しく整備されたアイルランドの素晴らしい道路網を利用すれば、ダブリン空港へもわずか4時間足らずで移動可能だ(以前の6時間の長旅とは、比べ物にならない快適さである)。

モダンなクラブハウスは最も高い場所にあり、コースや西側の大西洋の素晴らしい景色を見渡せる。
特に夕日が沈む様子は、この美しく設計されたリンクスの中でも格別な光景なのだ。

シグネチャーホールは廃墟の塔が立つ3番ホール

アーノルド・パーマーの等身大のブロンズ像を通り過ぎると、1番ホールのティーグラウンドに到着。
パー4の1番ホール「マックラフ」(404ヤード)は、丘を下って砂丘の横にあるグリーンへと続く。
グリーンを登ると2番ホールのティーグラウンドに到着し、トラリーのビーチを間近に見ることができるのだ。
パー5の「クイリン」(596ヤード)は、海岸線に沿って右へカーブしながら進みグリーンへと続くホール。
ここまでで、このコースの美しさと挑戦の難しさをすでに感じ取ることができるだろう。
特に南西から吹く強風の影響で、バックティーからは、非常に長く感じられるかもしれない。

3番ホール「ザ・キャッスル(城)」(パー3・194ヤード)は、トラリーのシグネチャーホールと言われることが多く、岩場を越えてグリーンに打つこのホールは、1196年に建てられた塔の廃墟が立つ風景の中にある。
トラリーには4つの素晴らしいショートホールがあるが、このホールはその中でも特に難易度が高く、風向き次第では非常に厳しい挑戦となるのだ。

廃墟の城を眺めながらショットを放つ
アイルランドのペブルビーチ

3rd Par3/194yards

「ザ・キャッスル」と呼ばれる3番ホール・パー3は、廃墟の城と美しい海を見ながらショットを放つ、風光明媚なシグネチャーホール。©David Cannon (Getty Images)
18番ホールのグリーンの先には、クラブハウスがある。ラウンド後は、レストランで大西洋を眺めながら、美味しい食事とワイン、ウィスキー、ビールを一杯やるのが最高の楽しみだ。©David Cannon (Getty Images)
パー4の17番ホールは、ロバート・ミッチャムの映画の撮影に使われ「ライアンの娘」と呼ばれている。谷越えのティーショットでフェアウェイを狙い、そのあとは砲台状の小さなグリーンを狙うため、精度の高いアイアンショットが必要となる。©David Cannon (Getty Images)

God designed the back nine
神が造ったバック9

トラリーGCの空撮写真。美しいバロービーチ(右上)や、フェニット城跡(左中央)も見える。©David Cannon (Getty Images)

パーマーも感嘆したバック9の砂丘地帯

10番ホールからは、アーノルド・パーマーが初めてこの地を訪れた際に最も興奮したという砂丘地帯に入る。
コースで最も難しいと言われる12番ホール「ブラッケン」(パー4、461ヤード)は、右に深いラフ、左に壁がそびえる、危険な打ち下ろしのホールだが、このホールでパーを取れれば、次のホールに向かう足取りも軽くなるだろう。

砂丘を進んでいくと、15番ホールのティーに到着するが、ここがゴルフ界でも最も景色が素晴らしいとされる4ホールの始まりだ。
15番ホール(パー4、300ヤード)は短いホールだが、計算されたティーショットが求められる。
飛びすぎると、ホールを囲む砂丘につかまる恐れがあるので要注意だ。

続く16番ホール(パー3、199ヤード)は、どの角度から見ても写真映えする、お気に入りの美しいホール。
さまざまなティーオプションがあり、広々とした砂丘を越えて、ビーチの端にあるグリーンを狙う。
このホールの名前「シップレック」は、1588年にグリーン下の海岸で難破したスペインの無敵艦隊の船に由来しているという。

17番ホールは「ライアンの娘」と名付けられた361ヤードのパー4。
ティーに登ると、ここでも素晴らしいパノラマが広がっている。
このホールは、フェアウェイに小さなマウンドが点在する中、ビーチの上の砂丘にあるグリーンへと続く。
このホール名は、1970年にこのビーチで撮影されたロマンチックドラマ「ライアンの娘」にちなんでいる。
この映画はロバート・ミッチャムやサラ・マイルズが主演した、第一次世界大戦中のアイルランドを舞台にした物語だ。

ラウンドの最後のお楽しみは……?

18番ホールのティーは、17番グリーンと1番グリーンの間の高台に位置している。
このパー5のフィニッシングホール(486ヤード)は、クラブハウスへ向かって上り坂が続く。
ここからの景色は、これまでの17ホールのように息を呑むほどではないが、それでもケリーの丘陵を背景に美しいホールが広がっている。

ラウンド後には、クラブハウスでアイルランドらしい温かい歓迎が待っている。
素晴らしいレストランとバーからは、リンクス全体を見渡す絶景が楽しめるが、晴れた夕方にここでラウンドを振り返りながら、ギネスビールを味わえば、その味がさらに特別なものに感じられるに違いない。

Text & Photo/David Cannon(Getty Images)

David Cannon デビッド・キャノン(イギリス)

海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。2022年、PGAオブ・アメリカ生涯功労賞を受賞。Getty Images所属。

Text & Photo/ David Cannon (Getty Images)

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