ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!
寒い冬も終わり、そろそろゴルフシーズンが到来!
シーズンが始まるにあたり、ゴルフの基本を見直し、準備をすることが大事だとジョー・ペアレント氏は語る。
今回は、メジャー18勝のジャック・ニクラスもシーズン前には基本からやり直していた方法をメンタル面で応用。
自分のメンタル面を、もう一度見直すポイントをお伝えしよう。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)
過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

ゴルフシーズン前にメンタル面をゼロから見直すポイント

ゴルフシーズンに向けて初心者のようにメンタルを鍛える
ゴルフ史上、最も成功を収めた人物の一人であるジャック・ニクラス。
彼の驚異的な成功は、才能だけでなく、徹底的な準備の賜物でもあった。
そのカギとなるのが、生涯にわたって彼を指導したジャック・グラウトとの関係である。
シーズンが始まる前、ニクラスは必ずグラウトと再会して試合に向けての準備をしたと言われている。
その際、グラウトがニクラスに行なったことは非常に独特で、驚くかもしれない。
グラウトは彼をまるでゴルフの初心者のように扱ったのだ!
ニクラス自身もこのアプローチ法を評価しており、次のように述べている。
「毎年、ジャック・グラウトは私をゼロからやり直させた。だが、こうして基本に立ち返ることで、安定した成績を維持できたのだと思う」
この方法は、メンタル面でも応用できる。
今回は、ゴルフシーズンに向けて自分のルーティーンや考え方を確認し、実践するための基本的なポイントをいくつか紹介しよう。
ショットを成功させる4ステッププロセス
ショットの結果をあれこれ考えすぎると、ショットを正確に打つ妨げとなることがある。
緊張感を引き起こしたり、期待感で興奮しすぎる原因になり、ルーティーンやスイングの流れに悪影響を及ぼすのだ。
そこで、以下の4ステップのプロセスに完全に集中することをオススメする。
1) トラブルに陥るリスクを最小限に抑えつつ、思い通りの場所にボールを運ぶための目標を選ぶ。
2)その目標に向けて、打ちたいショットのイメージをしっかり持つ。
3) そのイメージを生むためのスイングを体で感じる。
❹4)そのスイングに自信を持つ。ルーティーンとアドレスの流れをスムーズに保ち、スイング中は良いテンポをキープ。
このプロセスを大事にすれば、結果は自ずとついてくる。
呼吸を活用する
ナイスショットするには、プレショットルーティーン中に、深呼吸を取り入れると良い。
ボールに向かって歩き始める直前に深呼吸をし、息を吐き出すときに緊張や不安も一緒に吐き出すイメージを持つのだ。
これにより自然と落ち着きが増し、目標に集中しやすく、テンポの良いスイングがしやすくなる。
1) 鼻から息を吸い、ノドの奥を空気が流れ、体全体を下から上に満たすイメージを持つ。肩は持ち上がらないように。
2)唇から息を吐く。吸うよりも少しゆっくりと吐き出す。息を吸うタイミングと、吐くタイミングの間で少し息を止めること。
数を数える方法も有効だ。例えば、「吸って、2、3、止めて」と4つ数えながら息を吸い、「吐いて、2、3、4、止めて」というように少し長めにカウントして吐くのだ。
自分が心地よいと感じるペースでOK。
また、呼吸とともにポジティブな気持ちを誘う言葉を使うこともオススメ。
例えば、吸う際に「集中、2、3、止めて」、吐く際に「落ち着いて、2、3、4、止めて」といった具合だ。
「リラックス」「静かに」「地に足つけて」「安心して」といった言葉も効果的だ。
※呼吸器に問題がある場合は、必ず医療専門家に相談してからお試しください。
練習場の感覚をコースへ持ち込む
練習場では、ほとんどの人が各クラブで何度もショットを続け、特にルーティンを気にしない。
しかしコースでは、同じクラブを続けて使うことはほとんどなく、ショットごとに目標に向けてセットアップするルーティーンを完全に行なう必要がある。
そこで、ラウンド前のウォーミングアップ時に、コースのリズムに乗る方法を試してみよう。
練習の最後に、よく知っている3つのホール(パー3、パー4、パー5)を想像し、そのホールをプレーしているつもりでショットするのだ。
このとき、各クラブで1ショットだけ。
ショット前後のルーティーンを完全に実行すること。
これを行なえば、1番ティーに立つ頃には、すでに数ホールプレーした感覚が得られ、コースのリズムに乗りやすくなる。
スタートホールで緊張しないために
特にシーズン初めのラウンドの、1番ホールのティーショットで緊張している場合、ミスショットしたときに他人にどう思われるか、あるいは悪いスタートがその日のラウンド全体に影響を与えるのではないかと心配しているかもしれない。
だが、まず安心して欲しい。
他のプレーヤーは、あなたのティーショットをそれほど気にしていないからだ。
彼らは自分がティーショットするときのことで頭がいっぱいだ。
友人が観ている場合も、1ショットだけであなたのゲームを判断することはないし、知らない人であればなおさらだ。
また、過去を振り返れば、最初のショットがうまくいかなくても、その後調子を取り戻して良いラウンドをした経験はあるはずだ。
最後に、物事を大げさに考えないこと。
これはラウンドの最初のショットにすぎず、世界の終わりが始まるわけではない。
ユーモアのセンスを忘れず、楽しい一日を過ごそう。
スイングの考えすぎに注意!
緊張したら呼吸で気持ちを落ち着かせること

技術的なことの考えすぎによる麻痺
考えすぎによる麻痺とは、スイング中に技術的なことをあれこれ考えすぎる状態を指す。
「こうしなければならない」「こうしてはいけない」というリストを頭の中で反芻し、まるでスイングのたびに自分にレッスンをしているような状況に陥るのだ。
技術的なことを考えすぎると、機械的でぎこちないスイングになり、スムーズで自然な動きとは正反対になってしまう。
心には、「思考にかかわる側面」と、無意識に体を動かす「別の側面」があるが、スイングの流れやテンポを感じることに意識を向けることで、これらを同期させよう。
それにより、思考が筋肉にあれこれ命じる代わりに、潜在意識によって自然と体を動かせるようになる。
結果として、より良いスイングができるだけでなく、そのスイングをもっと楽しむことができるようになるのだ。
ポジティブな面に集中する
ゴルファーの多くは、批判の達人だ。
たとえ最高のショットでも、何かしら欠点を見つけるからだ。ショットについて最初に言うのが「何が悪かったか」であれば、結局「スイングを一からやり直さなければ」という気分に陥りがちである。
まずは、この習慣を変えてみよう。
「少しでも使えるショットであれば、良い点を口にする」という意識を持つのだ。
おそらく、間違ったことよりも正しいことをした可能性が高いので、少し調整するだけで次のショットが本当に良いものになるだろう。
もし本当にひどいショットを打った場合は、深呼吸を1~2回して落ち着こう。
息を吐き出すときにネガティブな気持ちを外に流すイメージを持ち、そのエネルギーをポジティブなプロセスに変換すること。
素振りを1~2回行ない、前のショットでやりたかったスイングを再現してみよう。
その違いを感じ取ることで、次のショットをより良くするために何をすべきかがわかるだろう。
このショット後のルーティーンは、ミスショットから立ち直る際に、次の2つのメリットをもたらす。
最後のスイングが、悪いものではなく、良いスイングでその場を終えられ、ネガティブな感情から離れて、次のショットを良くするためのポジティブな気持ちに集中できるのだ。
次回は、試合に向けて調整を始める際のメンタルゲームについて、さらに詳しく説明しよう。
それまでの間、コースに戻った喜びを存分に味わってほしい!
Illustration/Masaya Yasugahira