世界の各国ゴルフ情報の中からヨーロッパの話題をお届け!
マスターズ、全英オープンチャンピオンのイアン・ウーズナム。現在は欧州シニアツアーに参戦し、昨年は「欧州シニアマスターズ」で3位タイに入賞。
レジェンドたちと転戦生活が体験可能?
もしあなたに、一年の大半を世界中を旅して回るだけのお金と時間に余裕があるなら、「ステイシュアツアー」に参加してみよう。
プロゴルファーと同じように世界を転戦する夢を叶えることができるだろう。
ヨーロピアンシニアツアーのブランド再生において、実業界の有力者ライアン・ホーサム氏の、従来のプロアマ大会のアイデアを取り入れた、前例のないアマチュアスポーツ体験を構築する新構想が取り入れられることになり、来年から実施される。
この新たな試みではメジャー優勝者やライダーカップのヒーローたちが、シーズン期間中、富裕なアマチュアと一緒に競い、飲食を共にすることになるのだ。
これまで最も身近にトーナメントでプロと競うことができたのは、PGAツアーの「AT&Tペブルビーチ・プロアマ」や、セント・アンドリュースで開催されるヨーロピアンツアーの「ダンヒル・リンクス」であった。
双方とも、アマチュアチームの戦いと併せて開催される、公式のプロの試合であるが、1週間限りの体験だ。
ホーサム氏は現在、シニアツアー全体のスポンサーとなっており、これまでのプロスポーツでは見られなかったものを提供しようとしている。
「お金では買えなかった体験を販売します。約1400万円ほどで、レジェンドたちと一緒に戦い、ツアープロのような生活を送ることができるのです。空港では送迎車の迎えを受け、選手たちと同じホテルに宿泊。そして、パートナーや配偶者を連れてシニアツアー会場のモーリシャスにも行けますよ。これにはすべての宿泊や食事が含まれています。練習場でレッスンしてもらったり、プロと朝食やディナーを楽しむといった素晴らしいコース外の体験もできます。すべてを考えると、実際のところはさほど高価なものではありません。富裕層向けの企画と捉えられてしまうかもしれませんが、一般の人々にもこれらを体験して頂くため、〝チャリティくじ〟を実施する予定です」
ゴルフにおける究極の体験をし、1シーズン、ツアープロの気分を味わえるのが、この欧州シニアツアーの「ステイシュアツアー」。
ツアープロでなくても、彼らと同じように試合を転戦するという夢を実現することが可能だ。
来年のこけら落としに向け、このような「アライアンス」会員権が20口発売されるが、ホーサム氏は今年の4月にこのアイデアを発表して以降、既に50パーセントの申込みがあったことを喜んでいる。
また、スケジュールや金銭面で、このツアーにフル参戦することが難しければ、1回140万円以内で体験するチャンスもあるという。
会員になれば、トーナメント中にプロと真剣に試合を戦い、ともに楽しみを分かち合える。
従来のやり方ではゴルフビジネスは成り立たない
もちろんこのような金額は、一般庶民には理解を超えるものだが、従来のトーナメントスポンサーのあり方では実現できない、巨大な投資の可能性を有する収益のカギを握っているとホーサム氏は考えている。
コロナウイルスの影響で、プロスポーツが、チケット販売による収益をアテにできない昨今、ほんの少数の人々を最大限活用する方法を見いだす能力が、かつてないほど重要となっているのだ。
「今やヨーロピアンツアーよりもシニアツアーの方が収益が上がると思っています。2年間、ステイシュアツアーのスポンサーを務めることで、選手たちと親しくなり、今回のアイデアの可能性についてなど、話をする機会に恵まれました。レジェンドたちをブランドの中心に据えると非常に多くの収益が得られるのではないかと考えたのです。イアン・ウーズナムのような選手は今でも欧州ツアーの現役選手よりも認知度が高く、かつてメジャーで優勝したレジェンドたちと知り合いになることは、おそらく、現役の若手プロとプレーするよりも、さらに特別な経験となるでしょう」
来年からの構想に賛同するレジェンドたち。左からマーク・ジェイムス(1999年ライダーカップキャプテン・レジェンズツアーアンバサダー)、ポール・ローリー(全英オープン優勝)、マーク・アスプランド氏(レジェンズツアー代表)、ライアン・ホーサム氏、ポール・マギンリー、イアン・ウーズナム。
ゴルフトーナメントの新たな収入源はプロアマにあり!
ただし、この構想はアマチュアと一緒にほとんど終日競技する、レジェンドたちの前向きの気持ちがなければ実現しないことだ。
実際、ポール・マギンリー、ダレン・クラーク、イアン・ウーズナム、コリン・モンゴメリー、ポール・ローリー、マイケル・キャンベル、トム・レーマンらが、レジェンドツアーのアンバサダーとしてサポートすることを約束したのである。
「成功するのにわざわざ一からやり直す必要はない。成功しているものを使って、前進すればいいのだ。長年に渡ってはっきり言えるのは、世界のどこであれ、プロゴルフで成功しているのが、水曜日に開催されるプロアマ戦だ。多くのスポンサーは、大会前日のプロアマ戦で選手たちとプレーすることができるから、トーナメントを開催している。今回の構想は、新たに初めて構築したアイデアではなく、成功している従来の方法を取り入れて、装いを新たにしたものだ」とマギンリーは語る。
左からポール・マギンリー、ライアン・ホーサム氏、コリン・モンゴメリー。
ゴルフだからできるプロアマ戦の大いなる可能性
プロのサッカー選手やテニスプレーヤーと試合をしろと言われても難しいが、ゴルフの場合は、ハンデのおかげで、誰でも一緒にプレーすることができる。
プロアマ戦はゴルフ業界ではすでに当たり前のものになっているが、このステイシュアツアーの会員になると、1日に2人のプロと大会形式でプレーすることになるが、これは通常の1日のプロアマとは異なるものだとホーサム氏は語る。
「一方、選手たちと間近で接すると、彼らは賞金を獲得するために真剣にプレーしていることもわかります。優勝争いの終盤では、選手がミスをしてカッとなる瞬間を見ることがあり、どうすればいいか困ることもありますが、それだけ彼らは大きなプレッシャーの下で戦っているということを間近で見ることができるのです」
今のところ、約20大会ほど開催する予定だが、それまでにコロナが収束し、観客の入場が許可される程度まで今回のパンデミックと共生する方法が見つかれば理想的である。
しかしホーサム氏は、英国最大の旅行保険会社のトップとして、そのような見通しが来年の夏まで依然、非常に不確実であることを大部分の人間よりもよく理解している。
特別なもの、ハイエンドなものを創造するために、ブランドの中心にレジェンドたちを据え、新たなレベルへ移行するフォーマットを考案。
これにより収益性の高いビジネスが可能だとホーサム氏。「プロアマ」において探求されてこなかった最大限の可能性を追求すれば、ビジネスの勝算はあるという。
Text/Euan McLean
ユアン・マクリーン(スコットランド)
スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。