世界のゴルフ通信・オーストラリアのゴルフ事情を紹介します。
ゴルフ場のプレー以外の利用に落とすコロナの影
結婚式を広いゴルフ場内(屋外)で開けば、コロナ対策にもなる。
現在は人数を制限し、人と人との間隔をとって実施しているという。
結婚式の披露宴や学校の卒業パーティなど社交の場として利用されることも多いリバーサイドオークスGR。
豪州の4大トーナメントは全て中止
新型コロナウイルスは、オーストラリアのゴルフ業界のあらゆるところで暗い影を落としており、様々な競技部門で複雑な状況を引き起こしている。
プロゴルフトーナメントについては、同国の4大大会であるオーストラリアンオープン、ISP Sハンダ・オーストラリアン女子オープン、オーストラリアPG
A選手権、ISPSハンダVICオープンすべての大会が公式に中止を発表したが、娯楽としてのゴルフは活況を呈している。
112日に及ぶ2度目のロックダウンが解除された10月下旬には、ゴルファーたちはビクトリア州のゴルフ場に再び姿を現しはじめ、すでにどのコースも予約でいっぱいとの報告が上がっている。
ゴルフ場のもう一つの収入源
しかし、プレーする人の数が急増しているにもかかわらず、オーストラリアのゴルフ業界が難題に直面していることに変わりはない。
クラブハウスで催される、ゴルフ以外の重要なアクティビティに復活の兆しが見えないのだ。
オーストラリアのクラブのほとんどは、運営費を賄うために結婚披露宴やパーティなど社交上の催しをゴルフ場内やクラブハウスで開き、その収入に大きく依存しているが、その市場のの回復が遅れているという。
シドニーの北西にある全36ホールのリバーサイドオークスゴルフリゾートの施設でマーケティングマネージャーを務めるリサ・ジャイルズ氏に話を聞いたところ、かつて活況を呈していたクラブハウスにビジネスを呼び戻そうとこれまで以上にチームが懸命に取り組んでいるそうだ。
彼女は、「今回のパンデミックを受けて、私たちは創造力を働かせ、柔軟な対応を取る必要が出てきました」と本誌に語っている。
「私どものコースは以前から、結婚式や学校の卒業イベントの会場としてずっと高い人気を誇ってきました。新型コロナウイルスが現れるまでは、ほぼ毎週のように当クラブハウスを借りたいという問い合わせを何件も受けていたのです。しかし、それも今ではほぼ完全になくなり、すべての商品を自分たちで考え出さなければなりません。もはや商品と料金をセットにした「スタンダード」な予約商品の時代は終わったのです。私たちがイベントのために現在やっていることはほぼすべて、そうした特別なお客様のニーズに合わせて特別に設計したものなんですよ」
クラブハウス内で食事をとることもできるが、オープンエアのテラス席でソーシャルディスタンスを守ってとれば、三密も防ぎやすい。
ゴルフ場やホテルでは、ビュッフェスタイルは中止し、個別でのランチやディナーを提供しているところが多い。
想像力を働かせ、ゴルフ場の新たな使い方を模索
ジャイルズ氏は、学校主催の格式あるイベントをゴルフクラブに呼び戻すために近ごろ進めているキャンペーンの責任者だが、それなりの成果を上げていると語っている。
「オーストラリアでは、ほとんどの学校が最終学年の卒業イベントを開催するのですが、当然のことながら、今年は事情が大きく異なっています。学校の多くは、今年のごく早い時期に催しをキャンセルすることを決定したようですが、若者たちの人生にとってはとても重要なイベントですから、私どもとしては、その機会くらいは提供したいと考えていました。実際、開催した人たちからはよかった、という反応もあり、数件の予約が入るようになったのです」
「ただし、繰り返しになりますが、私たちは自分たちでそのビジネスを生み出す必要がありました。今年は、学校主催の格式あるイベントについては、学校側からはほとんど問い合わせがなかったのです」
また同クラブは、結婚披露宴なども開いているが、人数制限とソーシャルディスタンスの規制のせいで、予約状況に影響が出ているという。
「当施設は200人超を収容できますが、制限があるため、96人までしか入場が許可されていません。さらにこの地域には、出かけることに神経質になり、イベントの予定があっても参加することをためらう人が大勢います。この状況がいばらの道であることは間違いありませんが、不思議なことに、これがなかなか楽しいんです。この素晴らしい施設をどのように活かせばベストなのか……私たちは創造力を働かせて、考えざるを得ない状況にいます。これが意外と楽しいんです」
Text/Rod Morri
ロッド・モリー
(オーストラリア)
ゴルフニュースのウェブサイト「オーストラリアゴルフ」のコラムニストで、長年に渡り、豪州ゴルフツアーを取材。