無事、実施できるか? 東京五輪
暗い世の 中に射す光
2021年五輪とゴルフトーナメント
2020年11月に来日した国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長(左)と東京2020組織委員会の森喜朗会長が合同記者会見を開き、大会実施に向けてさらなる緊密な連携を図る考えを示した。
有観客実施に向けガイドラインが決定
新しい年が明けた。プロゴルフの世界にとってどんな年になるのだろう。
ウイルスそのものに対策が必要なのは言うまでもない。
しかし、ウイルスの危険性を上回るのが、ウイルスを巡る人間の愚かさだ。ウイルスと同等、あるいはそれ以上に大きなリスク回避を図ろうともしない為政者。
それを煽るメディアと、それに躍らされる人々。
思考停止を起こし、自分と違う行動を取る者に対して攻撃することで安心を得ようとするなど、愚の骨頂だ。
批判を恐れ、これに振り回されると、プロスポーツの世界は身動きが取れなくなる。
〝不要不急〟は、それぞれの尺度で決まるもの。
「無駄」も含めて、人間の行動に「不要」なものなどないと言うのが筆者の持論だ。
『こんなご時世だから』と言う日本人特有の曖昧な基準でいては、プロスポーツなど成り立たない。
感染拡大をしない、させないと言う意識を持つのは当然だが、前向きにやるべきことをしていかない限り、道は開けない。
ゴルフ関連5団体(JGA、PGA、JLPGA、JGTO、GTPA)は、昨年12月3日に『日本国内プロゴルフトーナメントにおける新型コロナウイルス感染症対策に関するガイドラインVer・4』を発表した。
以前、試合の中止が続く中で作られたガイドラインは、無観客でも試合そのものを開催することが目的だったため、逆に観客を入れることが足かせのようになっていた部分があった。
そこで作られたのがこのガイドライン。2021年には観客を入れる方向性で改訂されたのが、今回のものである。
これまでと大きく違うのは『開催自治体の警戒レベルに応じた催物制限基準』を示したこと。
警戒レベルをステージごとに分け、観客を入れる場合の人数制限などをはっきり示している。
一部大会を除き、大会の主催者はスポンサー企業で、ツアーはこれを公認しているだけ、という仕組が続いている日本のゴルフトーナメントは、大会ごとに様々なことを決定する責任者が違う。
今回のような緊急事態では、企業の論理とツアーの考え方が合致しないとなかなか前には進めない。
2020年は、未曽有の事態に企業以上にツアー側がリスクを回避するケースも少なくなかったが、今回のガイドライン改訂の過程で「選手を守るという部分(リスク回避)だったのでしょうが、さすがにいつまでもこのままではよくない。
特にプロアマができないと企業が試合をしなくなってしまうとツアー側もわかってきたようです」(関係者)と、前向きになってきていると言う。
当然のことだが、2021年はそうなることを祈りたい。
欧米ではすでにワクチンの接種が始まっているが、日本でも早ければ2月中には、ワクチンを承認するかどうか結論が出る見通しだ。
コロナ禍だからこそ利用したいスポーツの力
2021年も引き続き、コロナ対策(検温・PCR検査・手指の消毒)を実施しながら試合が開催される。
ワクチンができたからと言って、誰もがそれを打つわけでもなく、効果についても未知数。
ウイルスそのものが消滅することもなく、当分は人々の生活と切り離しては考えられない。そんな中、1年延期になった東京五輪は「安全・安心な大会開催に向けて準備を進める」と言い続けているが、まだ本当に実現できるかどうかも未知数だ。
それでも、プロスポーツの世界は、立ち止まることなくその存在を示し続ける必要がある。
「衣食住」ではないため、災害などの緊急事態になると選手をはじめ、それに携わる者すべてが「こんな時にゴルフをしていていいのか」という気持ちになるのも理解できる。
だが、被災者などから「元気づけられた」などと言われるケースは、これまでに何度もあったはずだ。
実際、昨年初めてトーナメントが行なわれたことで、明るい気持ちになった人は少なくなかった。
12月の「全米女子オープン」で渋野日向子が優勝争いをした時には、日頃、ゴルフと縁のない人でもその結果に一喜一憂したことでも、スポーツが持つ力はよくわかる。
ウイルス感染という災害(人災の部分も多いのは前述のとおり)に見舞われているこんな時こそ、その力を示さなくてどうするのか。
どんなに注意していても、これほど陽性者が増えれば、どこで誰が陽性となってもおかしくはない。
トーナメントを行ない、観客を入れれば、その可能性は増えるのは当然のことだ。
それを踏まえて、どれだけ腹をくくれるか。
2020年、ツアーで唯一、観客を入れた試合を行なったシニアツアーでも、選手に陽性反応が1人出た。
無観客の試合ではあったが、粛々と決められた通りの対策を取り、試合そのものが中止になったわけではなかった。
批判など恐れず、何をすべきで、何をすべきでないかを考えること。
都合の悪いことが起こった時に、それを隠さないこと。2021年は、ゴルフトーナメントに関わる企業と、各ツアーの姿勢が問われる年になるだろう。
世界に羽ばたく選手たちを支えるためにも、筋を通してくれることを望む。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。