自立したツアーを目指して様々な改革を計画する女子ツアー
今年は有観客で開催された、女子ツアー開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」。地元・沖縄の宮里美香(写真中央)を応援するギャラリーの姿も見える。
昨年、「GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップ」で4年ぶりにツアー優勝した若林舞衣子。
1週を除いて毎週開催の女子ツアーは今年も大忙し
2022年の国内ツアーは、男女ともに将来を占う大切なシーズンとなる。
どちらもコロナ禍で異例のロングシーズン(2020~2021年)を送った後の1
年。
ここをどう踏ん張るかが試されることになる。
女子ツアーは、最初の6試合はすべて観客を入れて開催予定となっている(3月5日現在)。
開催された14試合すべてが無観客だった2020年、38試合中14試合しか観客を入れられなかった2021年と比較すると、幸先の良いスタートだ。
人数制限も緩和される傾向にあり、プロスポーツとしての正常な形に近づいていると言っていいだろう。
3月~11月末までで、空いているのは7月第3週だけの38試合と試合数も多い。
若手にも勢いがあり、人気もあって順風満帆に見える。
だが実は、この試合のない1週というのが、のどに刺さった小骨のような陰りを見せている。
当初開催予定だった「GMOインターネット・レディース サマンサタバサグローバルカップ」が、インターネット放送を巡ってツアー(JLPGA)と衝突。開催を取りやめた。
ここまでの経緯は、すでにニュースになっているが、その週が埋まらない。
女子ツアーが推進する自立への歩みと4億円パッケージ
今までは一部を除いて、スポンサー企業やテレビ局などがそれぞれの大会を主催し、JLPGAがこれをツアー競技として公認する形を取ってきた。
だが、長い間の慣例だったこの形式をやめて、JLPGAは自立する方向に足を踏み出している。
第一歩が「放映権の獲得」で、次の一歩が「すべての試合を主催すること」。
第一歩は、浴びせ倒しのような形ではあるが、今年から実現している。
二歩目の主催権獲得については、2025年にはすべての試合を主催すると宣言し、準備を進めている。
そのプロセスとして、新規大会はすべてJLPGA主催で開催しようとしている。
つまり、試合がなくなった7月第3週も、その方向でスポンサー探しが続いているのだ。
複数の関係者が「大手代理店に特別協賛社探しを依頼した」と証言するが、これが難航している。
JLPGAはすでに現在の主催者たちに、2025年からは特別協賛になることを求めており、それと同時に賞金総額は最低でも1億5000万円になること、テレビ放映権料を除く運営費込みで最低4億円の負担となることも明言している。
現在のトーナメントの賞金総額は、最も少ない試合で6000万円。
いきなり2倍以上を要求されることに抵抗は大きく、2025年以降、何試合残るのかが、危惧されている。
まだ〝4億円パッケージ〟でのスポンサー探しではないとはいえ、それが前提では難航するのも仕方ない。
「4億円について〝メニュー〟もないんです。ただ『それが私たちの価値だ』と言うだけ。普通はそこに、社会貢献をうたったりするでしょう。そんなことには全く触れず、自分たちの組織のためのことばかり言われては、企業側も社内で稟議が通らない」と、ため息交じりの声が聞こえてくる。
テレビ観戦が有料になったらどのくらい観られる?
また、JLPGAが自分たちで行なうと宣言した「インターネット配信」についても、まだまだ不安が残る。
2022年は、2試合を除き、シーズンを通してGOLFTVで有料配信されることになった。
だが、これが発表されたのは開幕戦前日のこと。大会2日目からは、追加でDAZ
Nが配信されることになった。
有料配信は決まっていたが、どこのプラットフォームになるかは、直前まで主催者たちにも知らされていなかったという異常事態だ。
大会初日からライブでネット配信が見られるのは、コアなファンにとっては素晴らしいことだが、どれだけの人が、有料で観てくれるのだろうか?
テレビ放映権もインターネット配信の権利も、JLPGAに帰属することになり、年間を通して生放送が見られる。
このこと自体は大きな改革だが、これが今後持続できるかどうか。
現在、地上波での放送だけでゴルフ観戦を楽しんでいる人やライトユーザーにどうやって裾野を広げるか。
また、全試合がツアー主催となった時に、どれだけの試合数が維持できるのか。
さらには同じJLPGA主催でも、それぞれの地域との関係性や、試合の特徴をどう出していくのか。
地元の経済効果を上げたり、社会貢献をどれだけできるのかも試合数維持のポイントとなる。
このあたりも含めて、今年から2025年にかけて、JLPGAは正念場を迎えている。
今もなお、先行き不透明な男子ツアー
3月に都内で開かれた「BMW日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」記者発表会にて。右から青木功JGTO会長、クリスチャン・ヴィードマン社長(BMW)、多田野敬社長(宍戸国際ゴルフ倶楽部)、堀川未来夢副会長(JGTO選手会)、遠藤克之輔氏(BMWブランド・マネージメントディヴィジョン)。
男子ツアーは1月のアジアとの共催試合「SMBCシンガポールオープン」はあったものの、国内では女子に1か月遅れで「東建ホームメイトカップ」を開催。
無観客での開催が発表されており、女子とは対照的だ。
コロナの感染状況が読めないため、その先についてはまだ何とも言えないが、何とも残念な幕開けと言わざるを得ない。
一方で、わずかだが光明もある。
日欧共催となるはずだったのが、コロナの影響で今年は日本とスペインで別々の大会となった「ISPS HANDA欧州・日本、とりあえず今年は日本トーナメント!」開催が決定。
「日本ゴルフツアー選手権」には、BMWがタイトルスポンサーについた。
また昨年、選手会主催で行なわれた「JAPANプレーヤーズ選手権 byサトウ食品」に替わって、日本ゴルフツアー機構(JGTO)と選手会が一緒に主催する「For the Players, By the Players」が開催される。
選手たちが自分たちの試合を増やそうと動き始めたことは素晴らしいが、一方でJGTOという組織の存在意義は問われ続けている。
試合数25という現実をどうとらえて将来を考えるのか。
世界のツアーが様々な形で動きつつある中、ビジョンが見えてこない日本ツアーに不安は残る。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。