メジャーチャンピオンのハナ・グリーン
男女混合大会で女性初の優勝!
2022年「VICオープン」で優勝した、「全米女子プロ」チャンピオンのハナ・グリーン。ISPSアンバサダーでもある。
男子の試合でも実力を見せつけたハナ・グリーン
豪州の女子プロでメジャーチャンピオンのハナ・グリーンと女子アマのカーステン・ラジリーは、世界中に影響を与えるような優勝を遂げ、南国の夏に歴史を変える快挙を達成した。
グリーンは、コブラム・バルーガで行なわれた賞金20万豪州ドル(約1900万円)の「ウェベックス・プレーヤーズシリーズ・マレーリバー」で、アマチュアのヘイデン・ホープウェルとプロのアンドルー・エバンスに4打差をつけて逃げ切り、72ホールのストロークプレーによるトーナメントで男性を破った初の女性選手となった。
そのわずか7日前に行なわれた「VICオープン」女子の部で優勝した後、25歳のハナ・グリーンは、わずか22歳でメジャー優勝を果たした度胸と正確さを再び「ウェベックス・プレーヤーズシリーズ」で発揮し、54ホールを終えて3人の男性と首位タイに。最終ラウンドを5アンダーで回って優勝した。
2007年にニュージーランドに家族と移住した小堀桃花。米国の大学を卒業しプロ入りを果たし、現在もニュージーランドを拠点にオーストラリアの試合などに参戦。(Photo/PGA of Australia)
男女混合形式がポピュラーな豪州
オーストラリアは、男女混合形式の試合の普及をリードしてきた。
今年、北アイルランドで8月に開催される「ISPSハンダワールドインビテーショナル」でも同形式が採用される。
そして、アニカ・ソレンスタムとヘンリク・ステンソンもこのコンセプトを採用。DPワールドツアーとLET公認の男性78人と女性78人が同じ賞金をかけて競い合う「ボルボ・カー・スカンジナビア・ミックス・イン・スウェーデン」(6月に開催)という試合を作り上げた。
「LPGAやPGAツアーが、男女を同じ会場で同日程でプレーさせる日は、そう遠くはないでしょう。ティーグラウンドの位置の調整など、距離が男女正しく設定され、男女にとって公平である限り、彼らがそれをしない理由がありません。どちらにとってもいいことだと思います」と、グリーンは語っている。
男女がほぼ同じロフト角のクラブでグリーンを狙うためには、ティーグラウンドの位置の調整が重要だ。
コブラムバルーガ のコースセッティングは、グリーンが優勝しただけでなく、グレース・キムと小堀桃花の2人の女性が4位タイに入ったことで公平であることが評価された。
グリーンがLPGAツアーに復帰するために海外に向かったのに対し、彼女のパートナーだった同じパース出身のプロ、ジャリッド・フェルトンはオーストラリアに残り、ニューサウスウェールズ州のボニードーンGCで行なわれた次の「プレーヤーズシリーズ」イベントで優勝。
サイプレスレイクスゴルフ&CCで開催された、この夏最後の「プレーヤーズシリーズ・TPSハンターバレー」では、初の男女混合サドンデスプレーオフが行なわれ、ベテランのアーロン・パイク(36歳)に、プレーオフ3ホール目で敗れはしたものの、プロ入り2シーズン目の小堀桃花(22歳)が健闘。もう一つの歴史を刻んだ。
日本で生まれ、8歳でニュージーランドに移住した小堀は、過去にニュージーランドで開催された男女混合36ホールプロアマイベントで優勝した経験を持つ、将来が楽しみな選手だ。
オーストラリアPGAメンバーのアーロン・パイク。昨年は「全英オープン」にも出場。今年「TPSハンターバレー」で優勝した。
豪州のラジリー&クロウの男女アマの歴史的な活躍に注目!
西オーストラリア出身のアマチュア、カーステン・ラジリー(左)は、2022年「ジ・アテナゴルフチャレンジ」でプロを破って優勝。
ゴルフイベントで約300万円の賞金をアマチュアが初めてゲット
一方、西オーストラリア出身の女子アマ、カーステン・ラジリーも、メルボルンで行なわれたWPGAオブ・オーストラレイジアの「ジ・アテナゴルフチャレンジ」でプロを破ってゴルフの歴史に新しい1ページを刻んだ。
今年で2回目の「ジ・アテナゴルフチャレンジ」は、12名の若手WPGAプロやアマチュアが参加し、2日間にわたって行なわれたテレビ番組用のイベントである。
初日は、ドライバーの飛距離、ドライバーの方向性、アプローチ、バンカー、ロングパット、「ミステリー」ショットなど、コースのさまざまな状況から選手が1打ずつ打って技術を競い合った。
そして得点の高い上位8名が、翌日にわずか3ホールで行なわれるノックアウト方式のマッチプレー決勝に進出。優勝賞金は3万豪州ドル(約280万円)で、ポイントラウンドの上位者にも5000豪州ドル(約47万円)の賞金が贈られた。
ラジリーは、初日を終えて最多得点者となり、マッチプレー決勝ではグレース・キムと対戦。サドンデスのパット合戦というスリリングな展開で勝利した。
しかし、ここからが歴史的な出来事だ。
アマチュアである彼女は、以前なら3万豪州ドルの優勝賞金を受け取ることができなかった。
だが、R&Aの今年からの新しいルールでは、初日のポイント競技は正式な競技とはみなされなかったため、彼女はその日の賞金を自由に受け取ることができた。
ゴルフで合法的に賞金を受け取った初のアマチュアとなったのだ。
すでに2021年「全英女子アマ」「スコットランド女子アマ」「ウェスタン・オーストラリアンアマ」で優勝している20歳のラジリーは、「オーガスタナショナル女子アマ」にも招待されていたが、米国への航空券費用にと、賞金をそのまま両親に手渡した。
彼女は同大会で8位タイに入賞している。
ハリソン・クロウがアマチュアの歴史を塗り替える
2022年「NSWオープン」でアマチュア6人目のチャンピオンとなった20歳のハリソン・クロウ。昨年末の段階では世界ゴルフランキングで1744位だったが、現在は354位にまで浮上している。
同じく20歳のアマチュア、ハリソン・クロウは、「NSWオープン」「NSWアマ」を含む4試合で優勝し、記憶に残る夏を過ごした。
クロウは、「NSWオープン」史上わずか6人目のアマチュア優勝者となり、ピーター・トムソン、グレッグ・ノーマン、イアン・ベーカーフィンチ、ケル・ネーグルといった偉大なメジャー優勝者たちと並んで、トロフィーにその名を刻むことになった。
しかし、その素晴らしい選手たちの中に、アマチュアとして優勝することができた者はいない。
ラジリー同様、クロウもプロ入り前に、主要なアマチュア競技でもう一花咲かせるつもりだ。
Text/Karen Harding
カレン・ハーディング
(オーストラリア)
メルボルン出身のゴルフジャーナリストで、数々の賞を受賞。女子ゴルフやゴルフ場の環境問題、大衆ゴルフなどに関する執筆に注力。