US Open
2022年6月16日〜19日 The Country Club(マサチューセッツ州)7264Yards・Par 70
“米国アマチュアゴルフの父”のお膝元で2勝目
マシュー・フィッツパトリックが「全米アマ」と「全米オープン」を同コースで制覇!
今年の「全米プロ」では最終日、最終組でスタートしたもののスコアを伸ばせずメジャーVはお預けとなったマシュー・フィッツパトリックが、その翌月の「全米オープン」で見事、メジャー初優勝を決めた。
メジャー初優勝の場所は、彼が9年前に「全米アマ」で優勝した「ザ・カントリークラブ」だった。
優勝
Matthew Fitzpatrick
マシュー・フィッツパトリック(イギリス)
1994年9月1日生まれ。175cm、65kg。アマチュア時代から活躍し、2013年「全米アマ」優勝。「全米オープン」と「全英オープン」の2大会でローアマ獲得はボビー・ジョーンズ以来の快挙。欧州ツアー7勝、メジャー1勝。
「全米プロ」のリベンジ成功!
かつてはセベ・バレステロスらのキャディも務めた、ベテランキャディのビリー・フォスター(左)を従え、初メジャー優勝を遂げたフィッツパトリック。
2013年「全米アマ」で優勝した当時の写真。左から父のラッセルさん、弟のアレックス、マシュー(本人)、母のスーさん。
9番アイアンで打ったという、最終日の最終ホールの2打目。フェアウェイバンカーからのショットはあまり得意ではないそうだが、このショットは、これまでの中でもベストショットの一つに入ると語った。
フィッツパトリックがコースとの相性が良い理由
世界ランク1位のスコッティ・シェフラー、最近のメジャーで毎回のように優勝争いに加わっているウィル・ザラトリス、「全米オープン」チャンピオンのローリー・マキロイらの強豪が上位でひしめき合う中、優勝したのはイギリスの27歳、マシュー・フィッツパトリックだった。
彼は、欧州ツアーで7勝を挙げる中堅プレーヤーだが、メジャーは未勝利に終わっていた。
5月の「全米プロ」でも最終日、最終組でプレーしていたが、スコアを伸ばせず5位タイに。
そして今回、3日目を終えてウィル・ザラトリスと4アンダーの首位タイに立ち、ともに最終組でプレーし、1打差でザラトリス、シェフラーをかわして逃げ切った。
「子供の頃の夢がかなった! 明日引退してもいいくらいだよ。ここでは全米アマでも勝ってるし、すごく居心地がいいんだ。このコースは自分に合っている」
終わってみればわずか9人しかアンダーパーをマークできなかった、今年の開催コース「ザ・カントリークラブ」は、ボストン郊外にある、全米最古のカントリークラブの一つ。
全米ゴルフ協会(USGA)設立に貢献した5つのクラブの一つに数えられている歴史と伝統の名門コースだ。
1913年に行なわれた「全米オープン」では、アマチュアのフランシス・ウィメットが優勝したことで有名だが、強い風と狭いフェアウェイ、小さなグリーンが特徴の難コースとして知られている。
そんなコースでフィッツパトリックは9年前、「全米アマ」で優勝し、今回「全米オープン」でも優勝。なぜ彼はそんなにこのコースと相性がいいのか?
「僕がゴルフを覚えたイギリス・シェフィールドのコースは、風が強く、タフで狭く、グリーンが本当に小さくて、こことよく似ています。違いは、ここほど距離がないことくらいですね。そのコースで弾道のコントロールや、アプローチを学びました」と彼は語っている。
「このコースは、どこに打つべきか、どこに打ってはいけないのかがはっきりしている。自分はそれがよくわかっているし、再びこの地に帰ってきて、いいプレーをしているうちに、日に日に自信が高まった」
また彼は、ゴルフ場に親しみを感じているだけでなく、滞在先の環境にも居心地の良さを感じていた。
9年前、「全米アマ」参戦時に世話になったホストファミリーの元に、「全米アマ」の時と同様、フィッツパトリック一家が揃って滞在。
「全米アマ」以来、たまにゴルフをしたり、感謝祭には家を訪れるなど交流を深めてきたそうだが、そんな家族ぐるみの付き合いが続くホストファミリーの元で1週間過ごしたことも、彼の精神面での安定に一役買ったようだ。
弟分のメジャー初Vを、ローリー・マキロイも祝福!
5歳年上の、兄貴分的な存在のローリー・マキロイが、フィッツパトリックのメジャー初Vをグリーンサイドで祝福した。
レジェンドになるにはメジャー6勝
彼は2020年の年末からトレーナーや運動力学者と一緒にトレーニングに取り組み、飛距離アップを目指してきたという。
翌年1月の「HSBC アブダビ選手権」の練習日には、軽く65を叩き出し、「飛距離が伸びると、こんなにも簡単にスコアが出せるものか」と思ったそうだ。
現在ではドライバーだけでなく、アイアンショットでも3~4ヤードは飛んでいるといい、今回の「全米オープン」でも飛距離アップの効力を実感していたという。
「もしトレーニングをしていなかったら、ウィル(ザラトリス)に15~20ヤードは置いていかれていたと思うけど、トレーニングのおかげで、彼をオーバードライブしていた。彼よりも小さい番手のクラブで打てることは、自信につながった」と語っている。
飛距離だけが全てではないが、やはりプロでも「目の前の相手よりも飛ぶ」という優越感は、ゲーム運びにおいて、精神的な助けになるようだ。
ところで、彼の心の中には「メジャーで6勝しないとレジェンドとは言えない」というものがあるらしい。
メジャー1勝は、いいスタートには違いないが、まだまだこの先、長い道のりであることを知っている。
さらなる飛距離アップと技術の研鑽を積み、両親から教えられた「謙虚さ」を持って、自分のやるべきことをやり続けていけば、メジャー2勝目以降も近いかもしれない。
Text & Photo/Eiko Oizumi Photo/USGA, Getty Images