• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Japan 日本ツアーに変革の...

【世界のゴルフ通信】From Japan 日本ツアーに変革の波?プロゴルファーの試合に「出る権利」と「出ない権利」

日本ツアーにも変革の波?!プロゴルファーが持つ「試合に出る権利と出ない権利」

©Getty Images

「全米女子オープン」に出場せずに国内ツアー「リシャール・ミルヨネックスレディス」に出場し、優勝した稲見萌寧。海外メジャーへの出場権を得ても、出場するかしないかは選手の自由だ。

©Getty Images

同じく「全米女子オープン」の出場権を得ていた勝みなみ(右)も、国内ツアー参戦を選び、最終日、最終組でプレーしていた。

海外メジャーよりも国内試合を優先

世界のゴルフツアーはこの先、どんなふうに変わっていくのだろう。
サウジ資本の超高額賞金で話題のLIVゴルフの登場でPGAツアーが選手たちを束縛しようとするなど、男子ゴルフの世界は揺れに揺れている。
女子でも、各国の選手たちの動きは活発で、日本の選手もメジャーの出場を巡って、いろいろな考えを持っているようだ。

個人競技だからこそ、自分がプレーする試合を選ぶことができるのがゴルフの良さでもある。
メジャーとなればさらに国際色豊かになる。
「全米オープン」「全英オープン」などがゴルフの普及を目的に門戸を広く開いたことで、ゴルフの世界はいい意味で狭くなった。
そして日本、英国、韓国など海外で、最終予選が行なわれた。
かつては、本戦に出られるかどうかわからないのにわざわざ経費をかけて米国に行かなければ予選すら受けられなかった「全米オープン」が、国内でツアーの合間に挑戦できることになり、挑戦へのハードルが下がった。
さらに世界ランキング(女子はロレックスランキング)上位という出場資格ができたことで、より力のある選手が出られるようになっている。

「マスターズ」への出場資格の〝世界ランク50位以内〟はよく知られているが、女子でも「全米女子オープン」の75位以内、「全英女子オープン」の50位以内など、メジャーへの切符が世界ランクにかかっている。
「自分で出場権をつかんで、海外メジャーに出ることが今年の目標」という西村優菜のような選手もいる(西村は6月27日付けの世界ランクで38位に入り、全英女子とエビアン選手権の出場権を獲得)。

基本的に、個人競技のゴルフにおいて、どの試合に出場するかは選手自身が決めること。
これがチームスポーツと大きく違うところだ。ただし、それぞれのツアーが自分のフィールドを守るために、ツアーメンバーに出場義務試合数などある程度の「足かせ」をかけるのは、無理もない話だと思う。
選手には出場する権利もあれば、出場しない権利もある。
メジャーの出場権を与えられたからと言って出場する義務はない。

稲見萌寧や勝みなみ、山下美夢有のように「全米女子オープン」に出場せず、日本でプレーする選手がいるのもたしかだ。
「全英オープン」についても、出場資格を持っていても、出場しない選手は毎年何人かいる。
日本のツアーが充実すればするほど、国内のみでプレーするという選択をする者も出てくるだろう。
逆に豪州などのように、自国のツアーが試合数も賞金額も少ない場合、どんどん海外に出ていく傾向になる。
グレッグ・ノーマンを始めアダム・スコットやジェイソン・デイ、カリー・ウェブやリディア・コーなどのように、豪州、ニュージーランド地区から世界のトップレベルの選手が出やすいのは、そこに理由がある。

日本人選手もLIVゴルフ参戦

©Eiko Oizumi

「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」の同週に開催された「LIVゴルフ・インビテーショナル・ロンドン」に出場した選手会長の谷原秀人(右)と香妻陣一朗。ともにISPS契約選手だ。

©LIV GOLF

「LIVゴルフ・インビテーショナル」に出場した木下稜介(左)。「少しでも上手くなりたい。だから世界のトップクラスのゴルファーがいる試合に出られるなら、どこにでも行きたい」

6月初旬にロンドンで行なわれた「LIVゴルフ・インビテーショナル」初戦には、谷原秀人、木下稜介、香妻陣一朗の3人が出場した。
日本では新規大会「ASO飯塚チャレンジドゴルフトーナメント」が行なわれていたが特にお咎めなし。
男子にせよ、女子にせよ、長い間続いてきた各国ツアーがそれぞれ試合を行なうスタイルが、この先も同じように続く保証はない。
ツアー同士が様々なお互いの損得をすり合わせ、軋轢を乗り越えて今の形をとってはいるが、PGAツアーがその頂点にあることは自他ともに認めるところだったからこそ、LIVゴルフに対する過剰なまでの拒否反応を示しているように見える。
女子でも、各国ツアーが話し合って関係を築くことは続けられている。
ロレックスランキングが、その中で大きな指針となっているのも男子と同様だ。
男子ほど大きなトラブルが起こらないのは、それぞれの規模がさほど大きくないから。
男女の試合数が逆転しているのは、日本くらいなものだからだ。

男女を問わず、選手それぞれの意識は時代とともに変わっていく。
海の向こうの情報などほとんどなかった時代と、リアルタイムで映像が見られ、お金もかけずにコミュニケーションがとれる時代の考え方が変わるのは当然の成り行きだ。
プロゴルフの世界は、長い歴史の中でさまざまな形に姿を変えてきている。
変わらないものは変わらず、変えた方がいいことは変える。
そんな時期が今、来ているのではないか。

今後はLIVゴルフ以外にも、世界のゴルフ界に一石を投じる存在が出てくるかもしれない。
そしてそれは、日本のゴルフ界にも影響を与えることもあるのかもしれない。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

関連する記事