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【世界のゴルフ通信】From Australia 50年前から女性にレッスン会を開催してきたクラブの快挙

女性向けのレッスンに熱心なゴルフ場
50年前から女性にレッスン会を開催してきたクラブの快挙

メルボルン郊外のハミルトンGCでは1972年以来、約50年間、女性の初心者向けのレッスンが行なわれている。

ティーチングプロのベン・ロバーツ氏は月に一度、ハミルトンGCにやってきてレッスン会を開催。

男女メンバー比が半々の男女平等コース

ビクトリア州の小さなクラブが、世界中のゴルフクラブがうらやむようなことを成し遂げた。 

州都メルボルンの南西部、市街から296キロのところに位置するハミルトンGCは340人の会員数を誇り、その会員の性別は、男女比1対1となっている。
大都市にある某クラブでは会員がハミルトンGCの3~4倍程度いるにも関わらず、男性が女性の約4倍の人数であることからも、これがどれほど素晴らしいことかがわかる。

ハミルトンはこのずば抜けた男女比を達成したことで、ゴルフ・オーストラリアから5月の「ビジョナリー・オブ・ザ・マンス」(最も先見性のあるコースに贈られる賞)という特別賞を獲得した。
この賞は、女性ゴルファーを増やすことを目指す「ビジョン2025」という取り組みの一環である。
この取り組みは、オーストラリアに存在するクラブでの男女差別を改善するための活動の一例であり、ゴルフ・オーストラリアによって、毎月紹介されることになっている。

50年以上前から女子ゴルフを支援

ハミルトンGCが女性にクラブ会員になるよう促す戦略は、約50年前から行なわれているプログラムだ。
アス・アーチャーとベス・フランシスは、1972年に女性の初心者のためのゴルフクリニックを始めたが、当初、このクリニックはあまり知られておらず、わずかな人数で行なわれていた。
しかし、レッスンの大成功が証明されると、2人は1974年に正式に入門プログラムを開始。
40年以上に渡ってこのプログラムを実施してきたのだ。

のちにシングルプレーヤーとなるマーグ・キングが2008年にこのプログラムに参加し、アスとベスが2018年に一線を退いた際、パム・キング(前述のマーグ・キングとは無関係)がマーグを支援し始めた。

このプログラムは現在、2月~11月の毎週火曜日に実施されている。
月に一度、PGAティーチングプロのベン・ロバーツによってクリニックが開催されるが、彼は360キロ先の自宅からはるばるやってくるのだ。
彼のクリニックがない時は、公認の地元のインストラクターであるパムとマーグが指導を担当。
「私たちは毎週、コースで参加者の質問に答えたり、どのようにしたら彼女らをうまく指導できるかを考えたりしています」と語る。

「練習ボールをいろんなライに投げ落とし、いろいろなクラブで打ち分けたり、いろいろな打ち方をしてみるように提案するんです。あとは本人にまかせます。過保護になるのはよくないですからね」

また、リラックスしながらゴルフをすることに重点を置き、ドレスコードについても「快適」であれば細かいことはよしとしているそうだ。

初心者向けに5週間みっちりレッスン会を開催

2021年にはプログラムを若干再構築。ゴルフ・オーストラリアの下で、5週間に渡る入門編「ゴルフに慣れ親しむためのクリニック」が初めて行なわれた。
その入門クリニックが終わると翌月にはパムとマーグが指導し、その後はベンがコース上でクリニックを行なう予定だったのだ。
だが残念なことに、ベンはかなり体調を崩し、当面レッスンすることができなくなった。
だがベンの不在の間も一部の女性会員がクリニック参加者をサポートし、ゴルフ活動は続けられた。

さて、この女性向けのプログラムだが、男性の参加も認めている。
「会員となっている女性が〝夫も一緒にコースを回ってもいいか?〟と聞くので、OKしました。彼は毎週来ては他の女性たちともうまくやっており、彼女たちも彼がいることをとても喜んでいるんですよ」とパム。
その後、彼自身もクラブに入会したのだ。

また、最近ではクラブの男性会員も女性会員の存在を後押ししているという。

「どうせ彼女たちは途中でやめるんだろうと考え、はじめは少し反対でしたが、実際は逆で、男性のキャプテンが『熱心な彼女たちにはついていけないよ!』と言ってました」とパムは語っている。

メルボルン市街から車で約3時間半のところに位置するハミルトンGC。計18ホール。

やる気を起こさせ、持続させるためのユニークなプログラム

このプログラムには、2段階の会員権が用意されている。
「ゴルフを始めたばかりの人向け会員権」は1年間のみ有効で、正会員となるまでのもの。
もう一つは「初心者で、既にゴルフを初めてはいるが、試合でプレーするのは時期尚早と感じる人向けの会員権」である。
これは試合会場で試合がない日に7日間コースでプレーできる機会を与えるもので、女性は正会員になるまでの会員権としても利用できるし、このカテゴリーの会員権でいいという人は、好きなだけその資格を利用することができるのだ。

また、このプログラムのユニークな一面に、独自のハンディキャップ制度がある。

「私たちは女性のハンデを90から始めています。
彼女たちがそれよりもうまくプレーしたら、プレーした状況に応じてハンデを減らしていくんです。
例えば、彼女たちの1人が88でプレーしたら、彼女の次のラウンドは88で始まります。
ですが、彼女が次のラウンドで100を叩いたら、彼女のハンデは88のままにします」

「彼女たちの何人かは上級者になりますが、ハンデ90制度は生まれつきゴルフの才能を持ち合わせていない人たちにも優勝できるチャンスを与えます。
彼女たちは皆、競争意欲を持ってプレーできるんですよ」

過去、ハミルトンGCの女性会員の約90%がこのプログラムをやり遂げ、何人かがシングルプレーヤーになっているという。
地元の女性たちにゴルフをしてもらい、ハミルトンの会員を増やそうとするための方法として始まったものとしてはかなりのインパクトである。

ゴルフ・オーストラリアのクリス・クラッブ氏は
「男女のメンバー比が1対1になっているクラブは今まで聞いたことがありませんが、クラブの女性の割合を増やすことが可能であるということがこれで証明されました。
ハミルトンは、長年に渡って取り組めば何が起きるかということの実例。
皆さんも行動に移し、それがどうなるのかを見るべきだと思いますね」
とかたっている。

Text/Karen Harding

カレン・ハーディング
(オーストラリア)

メルボルン出身のゴルフジャーナリストで、数々の賞を受賞。女子ゴルフやゴルフ場の環境問題、大衆ゴルフなどに関する執筆に注力。

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