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【世界のゴルフ通信】From Europe 開催地変更などスピードを求められる欧州ツアー

“ツアーの資金”も減量!?
ロックダウンで開催地変更、スピードが求められる欧州ツアー

©Getty Images

欧州ツアーのフラッグシップイベント「BMW・PGA選手権」には観客を入れたい、と欧州ツアー最高責任者のキース・ペリー氏。写真は、昨年優勝したティレル・ハットンの1番のティーショット。

「欧州ツアー」というバイクを漕ぎ続けるCEO

イギリスでは誰かに急ぐよう、あるいは別の方向に素早く方向転換するよう伝える時、「get on your bike(自転車に乗れ)」というフレーズがよく使われる。

欧州ツアーのCEO、キース・ペリー氏は毎朝、ペレトン社のエアロバイクにまたがってエクササイズしているが、コロナ禍の中、欧州ツアーを先行き不透明な旅の次のステージへとかじ取りする前に、バイクを漕いでいるという話はまさに「自転車に乗れ」の話と合致していておもしろい。

CEOの仕事は、午前7時45分から行なわれる同僚との電話会議から始まる。
欧州全土で変化・拡大中のパンデミックが、週を追うごとに各地の試合を脅かしている状況を見定めているのだ。

ペリーにとってもし、この1年でいいことがあったとしたら、それは彼の日課のトレーニングのおかげで約6キロ減量したことだろう。
一般的にはロックダウン中、太ってしまう人が多いのだが……。

だが、彼が体重を数ポンド(英国の重量の単位はポンド)落とした一方で、彼のツアーも貨幣単位のポンドという観点からして、財源がかなり縮小しているようだ。

©Getty Images

バイク漕ぎで減量したというキース・ペリー氏。彼の手腕によって、国境を越えてコロナ禍の中で開催されるツアー運営の難しい局面を乗り越えてきた。

コロナ禍で試合を開催するために使った費用は60億円

急きょ新しいやり方でシーズンを再開し、27週に渡って中断なしで開催できたことで、昨年7月の最初のロックダウンを何とか切り抜けられたことを誇りに思うものの、それには約60億円の費用がかかった。
追加の約8億円は、試合会場での新型コロナウイルス対策を行なうため、検査施設に費やされたのだ。

ペリーは「我々は3~4か月、ツアーを閉鎖することもできたが、試合を開催するための別の方法を見つけようと試みた」と語っている。

そして今年は、うまく嵐を乗り切ったものの、この先の道には、昨年よりも困難な障害がいくつもある。
「ポルトガル・マスターズ」と「フランスオープン」の延期はかなり残念だが、コロナによって欧州大陸全土が新たなロックダウンに追い込まれたため、延期は不可避であった。

そこでツアーは、スケジュール上「ポルトガル・マスターズ」の日程を埋めるために「テネリフェ・オープン」の日程をズラし、もう1試合、新規試合を翌週に押し込むことで、フランスの試合がない週を埋めた。

この試合の入れ替えによって、カナリア諸島で3週間に渡って試合が行なわれ、選手やツアー関係者の移動問題を大きく解消。
そして、いかなる日程にも穴を空けないよう、より迅速な対応をしたおかげで元々4月中旬の「テネリフェ・オープン」であった期間には、賞金総額約1億5000万円の「オーストリア・オープン」が開催された。

無開催週がないよう穴埋め作業

しかしながら、新型コロナウイルスの第3波が既に大陸を襲っており、今後の各国の移動が可能かどうか、わからない状況にある。

「ブリティッシュ・マスターズ」の今年の開催地はイングランドだが、英国全土でワクチン接種プログラムが急速に進展していることから、試合開催に前向きな気分だ。
だが、動きが、「スコティッシュオープン」と「全英オープン」が開催される7月まで持続できるかどうかは、現時点では不明だ。
 欧州ツアーは国をまたいで開催されることから、ペリーや選手たちには、コロナ禍において対応しなければならない規制がたくさんあるが、ペリー氏の一番の関心事はこれ以上「中止」を出さずに残りの日程をこなせるかどうか、にある。
 「我々の最大の強みの一つは〝多様性〟だが、同時にそれが我々の最大の課題でもある」
 それでもペリーのように問題を解決するのがうまい人は、常に楽観的な性格でなければならない。彼は、秋までにはツアーのフラッグシップイベントである「BMW・PGA選手権」(9月に英国ウェントワースで開催)と「ライダーカップ」に観客たちが戻ってこられるくらい、状況が十分改善されるだろうと期待を寄せている。

「私は、BMW・PGA選手権を1万人以上の大ギャラリーが観られると本当に期待している。ゴーサインが出たらすぐに準備にとりかかるつもりだ」

「予定の日程と実際の開催日程とが異なる可能性はあるが、毎週スケジュールどおりに開催できるよう全力を注いでいる」

というわけで当面、欧州ツアーのリーダーは今後起こりうる困難に対して常にすぐに対応できるよう、毎朝エアロバイクに乗り続けるだろう。

ペリーの今の状況を一言で言うには、自転車旅行のレジェンドであるハインツ・シュトゥッケの有名な言葉を引用するのがふさわしい。
「曲がり角の先にある未知なるもののために、私の車輪は回る」

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。

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