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【世界のゴルフ通信】From Europe ゴルフ最大の祭典「ライダーカップ」大会前の熾烈な争いとは…?

熾烈な「ライダーカップ」入り争い

ゴルフ最大の祭典「ライダーカップ」大会前の熾烈な争いとは……?

©Getty Images

9月24日~26日に米国・ウィスコンシン州のウィスリングストレーツで開催される「ライダーカップ」。米国キャプテンのスティーブ・ストリッカー(左)と、欧州キャプテンのパドレイグ・ハリントン。

©Eiko Oizumi

今年の「全米プロ」で4位タイに入ったP・ハリントン。予選ラウンドは優勝したフィル・ミケルソンと同組だった。

キャプテン推薦を争う4人

ロバート・マッキンタイア

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ベルント・ウィースバーガー

©Getty Images

シェーン・ローリー

©Eiko Oizumi

ポール・ケーシー

©Eiko Oizumi

他の選手のプレーに集中した結果、得られた思いがけないごほうび

「ライダーカップ」で欧州チームのキャプテンを務めるパドレイグ・ハリントンが、チームメンバーを確定するまで残り数週間となった。
「全英オープン」で今シーズンのメジャーが全て終了したが、ゴルフ界で注目をさらう試合といえばあと1試合「ライダーカップ」を残すのみだ。

ハリントンは4月の「マスターズ」以降、自分自身のプレーよりも欧州選手の活躍ぶりをチェックすることに集中しているという。
しかし、異常なほど勤勉で有名な彼がなぜ、自分のプレーよりも他人のプレーに集中しながらも、5月の「全米プロ」で4位タイに入り、それまでの9年間でメジャー最高位の結果を残すことができたのか?
恐らく、自己分析から自分の心を解放させたことで、思いがけず「全米プロ」で、どのようにプレーすればいいか、自由に考えられる余裕が生まれたのだろう。

だが、「ライダーカップ」まで残り2か月となった今も、ハリントンは自分のことはあと回しの状態である。
全力を尽くさないと務まらない「ライダーカップ」キャプテンの職務上、自分の時間を分析や戦略の立案、推察、そして先読みに費やさなければならないのだ。

「ライダーカップ」のキャプテン推薦は誰に?

ランキングで決定する選手とは別にキャプテン推薦で、3人の選手が選ばれることになるが、この3枚の〝ワイルドカード〟のチョイスに関しては、難しい決断を強いられることとなるだろう。
選手たちのデータを冷静に厳しくチェックし、果敢に熱く、率直な意見が交わされるはずである。
今のところチーム入りが確定しているのは、ジョン・ラーム、ローリー・マキロイ、トミー・フリートウッドらだ。だが、ランキングでは確定できない選手たち(キャプテン推薦を期待する選手たち)は、残りの枠を巡って戦うことになる。
ハリントンは各選手の各ショットのデータから、選手の性格・好みまですべてを天秤にかけて考えるような作業で夜も寝られなくなる日々を過ごすことになるだろう。

チーム戦だからこそ頭を悩ますペアリング

チーム戦においては協調性が極めて重要で、選手同士の適切なマッチングを見つけるのが、キャプテンにとって最大の挑戦の一つと言っていい(この側面を疑うのであれば、何度も内輪もめを繰り返しているアメリカ人に聞いてみてほしい)。
互いのプレーや個性を補完し合うフォアボールやフォアサムのペアリングを作ることは、科学的であり、芸術的である。

「ライダーカップ」の過去のキャプテンたちと同様、最も頭を悩ませているのは、自身のチームに何人のルーキーが加わるか、ということに違いない。
ノルウェーの神童、ビクトル・ホブランは、24歳になったばかりで「ライダーカップ」デビューを飾るものと見られているが、もう一人のビクトル(ペレス)も過去2年間の欧州ツアーでの素晴らしい活躍によって、チーム入りできるかもしれない。
最近、彼はスランプに陥っているが、それでも「ライダーカップ」初出場選手として今も有力候補と見なされている。

スコットランドのロバート・マッキンタイアは、2019年に初めて出場した「全英オープン」で6位タイに入賞。
その後も活躍はめざましく、今年初出場した「マスターズ」で12位タイに。新人選手として、その才能を見せつけている。

スコットランド北西部の高原地方にある海沿いの田舎町、オーバン出身のおおらかな少年は、ツアーで最もリラックスした性格の選手の1人。
「ライダーカップ」で勝利を収めた2018年のキャプテン、トーマス・ビヨーンは、マッキンタイアの堂々とした態度がローリー・マキロイのようなビッグスターとパートナーを組む際にピッタリであると信じている。

「私は、ローリーがマッキンタイアのような人物を必要としていると考えている。
私の時はトービヨン・オルセンで試してみたが、うまくいかなかった。
ローリーは今、年下で、ともにパワフルなゲームができるような選手を必要としているんじゃないか、と思う。
まぁ、それはパドレイグが決めることだけどね」

マッキンタイアには、チーム入りしたいからといって焦ったり、自分自身にプレッシャーをかけすぎるのを嫌がる一面があり、そんな性格もビヨーンは気に入っている。

「BMW PGA選手権」でメンバー決定

その他、オーストリア人のベルント・ウィースバーガーもチーム入りを有力視されている。
また、長期に渡って世界ランクトップ50入りを果たし、2019年「全英オープン」で優勝したシェーン・ローリーが、まだ「ライダーカップ」に出たことがないというのは驚きだ。
9月12日に終了する「BMW PGA選手権」までのライダーカップランキングで、もしメンバー入りを果たせなかった場合、ハリントンは良き友人である同胞をキャプテン推薦しないはずがない。だが、P・ケーシーや、J・ローズといった百戦錬磨のベテラン勢も、今後チーム入りを果たすために全力で挑んでくるだろうから、何が起きてもおかしくはない。

「ライダーカップ」ルーキーが多くチーム入りを果たした場合は、ローリーの新人としてのステータスが不利に働くかもしれない。
キャプテンは、経験という安心の〝ブランケット〟を必要としているからだ。

Photo/Getty Images、PGA TOUR

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。

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