世界のゴルフ通信・アジアのゴルフ事情を紹介します。
今もツアー再開に苦しむアジアンツアー
フォン・シャンシャン(中央)率いるアマチュアチームが優勝した「シナ・カップ」は今年も10月に開催された。今年鳴り物入りでプロ入りしたイン・ルオニン(フォン・シャンシャンの右側)もシャンシャンチームに属して戦っていた。
ツアー再開が遅れたアジアンツアー
アジアンツアーのメンバーが、世界のほかの地域でプレーしているプロたちを羨望の眼差しで見たとしても、それは仕方のないことだろう。
この数カ月間で、ヨーロッパ、中国、日本、アメリカでは、無観客で、厳格なコロナ対策をとった上ですでにトーナメントが再開されているからだ。
しかし10月下旬の時点でも、アジアンツアーの再開の兆候はまだ見られない。
同ツアーコミッショナー兼CEOであるチョ・ミンタン氏に再開の意図がない、あるいはそのための努力を払っていないわけでもないのだが……。
チョ氏は6月、本誌インタビューに対して「9月にはアジアンツアーを再開したい」と語っていた。
今にして思えば、この当初の見通しは、楽観的だったようだ。
その主な障害となっているのは、アジアンツアー開催地が国境を越えて広範囲に広がっているという事実である。
国から国への移動を伴うため、検疫の問題はこれまでも、そしてこれからも大きな悩みの種となる。
大会前に検疫のためにホテルで14日間の待機、その後も、次の会場への移動や、帰国するのに、また14日間の自主隔離。そんなことを選手や関係者に対して、要求することなどできるだろうか?
当然、そんなことは実行不可能だ。
それだけでなく、今後の状況が近く好転することもなさそうだというのがチョ氏の意見である。
10月半ばに本誌のインタビューでチョ氏は、「今のところ、今年中に予定されているトーナメントはない。ただ、可能な限り多くの大会を開催できるよう、ツアー再開のための戦略を練ってはいる」と語っている。
アジアンツアーはさまざまな要素を考慮した上で最善を尽くしているものの、最終的には各地域の政府の指示に従うことになると強調した。
「再開は12月から1月上旬を目標としているが、それには、アジア地域での新型コロナウイルスの再流行がなく、規制が緩和されていることが条件となる。以前のような自由な旅行ができるようになるまでにはしばらく時間がかかりそうだが、ツアーの再開に向けて、いくつかの開催地は対策を取った上で利用可能になるだろうと、私は楽観している」
アジアンツアーコミッショナー兼CEOのチョ・ミンタン氏。
プロ入り3連覇を果たした新星と中国ゴルフの未来
プロ入り後中国LPGAツアーで3連勝を飾ったイン・ルオニン。
アジア地域にも朗報はある。
中国LPGAツアーが8月中旬に2020年シーズンを再開し、今年7月にプロ転向したばかりの上海出身の18歳の新星、イン・ルオニンが、プロ入り後史上初の3週連続優勝を果たすという、驚異的なプロデビューを飾った。
インは、かつて中国代表のアマチュア選手として、2018年の「アジア大会」で銅メダルを獲得。
この活躍によってインは、中国の男女アマチュアとプロが参加する「ライダーカップ」方式のユニークな大会として開催された「シナ・カップ」でも大いに注目を浴びた。
かつて女子世界ランク1位のフォン・シャンシャンは、インの才能を目の当たりにし、「中国ゴルフ界の大きな可能性を示すもの」と称賛した。
なお今年も試合を開催し、フォンがキャプテンを務めた赤組が、リャン・ウェンチョン率いる青組に17対7で優勝した。
結果もさることながら、プレーの質の高さにフォンは喜んでいた。
彼女のチームには、中国LPGAツアーの6人のプロと7人の男子アマチュアが含まれていたが、中国ゴルフ界の大きな可能性を示すもの、と語っている。
アジアンツアーで3勝、ヨーロピアンツアーの優勝経験もあるリャンも、フォンと同じ感慨を抱いた。
「この1週間は、全員が楽しくプレーしながら、実りある結果を残して帰っていったと思います。また、多くの才能ある若い選手たちと知り合うことができました。この若手がさらに成長し、来年の大会で優勝を飾ってくれることを願っています」
Text/Spencer Robinson
スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)
ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。
アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。