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【世界のゴルフ通信】From Asia 試合がない事への不安をシンガポール協会が払拭

試合に飢える選手に朗報!
試合がないことへの不安をシンガポールゴルフ協会が払拭

「シンガポール・プロシリーズ・インビテーショナル」表彰式にて。左からシンガポールゴルフ協会・ゼネラルマネージャーのジェローム・アング氏、ローアマのダリル・ロー、チュー・ツェ・ファン、FTAG創設者ケルビン・チュン氏。

 

世界を股にかけて戦えば戦うほど失われるもの

ツアープロにとって、ツアーを転戦して家族や友人と離れて過ごす時間の長さが、孤独や人間関係構築の難しさを感じる原因になっていることが、新しい研究報告で明らかになった。

英国の中央マイヤーズコー大学国際ゴルフ教育研究所の研究責任者であるジョン・フライ博士は、精神衛生上の問題に関する研究の一環として、「ライダーカップ」出場選手や元世界ランキング1位の選手を含む20人の欧州ツアーの選手へのインタビューを実施した。
その結論についてフライ博士は、次のように述べている。

「ツアープロは家を離れて過ごす時間が長くなると、さまざまなストレスや不安となって、精神面での健康や幸福に悪影響を及ぼす」

「ツアープロが友人や家族と離れて過ごす時間はさらに長くなっており、ツアー転戦中には表面的な人間関係しか築けなくなっている」

「ツアープロたちは、ツアー転戦中のストレスを和らげるために助け合う必要があるが、それと同時に緊張感や競争心によって人間関係が損なわれることも多い」

「多くのツアープロたちは、人生のさまざまな局面において、孤独感、孤立感、社会からのサポート不足、プロゴルファーの仕事の不安定感を経験している。だが、こういう悩みを抱えながら、腹を割って話せない場合が多い。多くのツアープロが、華やかさの陰で、精神面の健康や幸福に関するさまざまな問題を抱えている」

アジアンツアーの選手たちの試合がないことへの不安感

アジアでプレーしている多くのプロにとって、この18か月間は非常にストレスがたまる期間だった。
しかし、それは、家族や友人と離れて旅をすることに不安や憂鬱な気分を覚えるのではなく、旅ができないことに加えて、トーナメントに参加できないことへの不安もあったからである。

新型コロナの影響で昨年初めから検疫や渡航制限が実施されたことで、各地域のトーナメントは必然的に中止になった。
いくつかの国では、国内の試合が少しずつ開催されており、何か月も前から、一部のプロゴルファーは試合に出ている。

しかしアマチュアゴルファーたちは、このコロナパンデミック中、大好きなゴルフができないことに対して不満を特に強く感じている。

またプロゴルファーたちの中には、生活の糧を得ることができないために、非常に辛い思いをし、精神的にもひどく追い詰められている者もいる。

シンガポールゴルフ協会の新たな取り組み

セントーサGCで優勝したチュー・ツェ・ファン。

 

プロとしてこれから道を切り開こうとしている新人選手や、自分と家族の生活のためにトーナメントを頼りにしている選手など、さまざまな人たちが影響を受けている。
このジレンマはすぐに解消されるものではないだろうが、シンガポールゴルフ協会(SGA)が、困窮している選手たちを短期的に救済するだけでなく、旅行やトーナメントの復活に備えて、長期的に支援を行なう準備を始めたことは称賛に値する。

3月初旬、「シンガポール・プロシリーズ・インビテーショナル」(以下SPI)と銘打った地元開催の新しいトーナメントの会場として、セントーサ・ゴルフクラブとタナメラ・カントリークラブが選ばれた。

初年度は8試合・合計16日間に渡るトーナメントになる予定で、男女のツアープロおよび国内有数のアマチュアが2日間(36ホール)で競い合う。最終戦は2022年1月に開催予定だ。

SGAのゼネラルマネージャー、ジェローム・アング氏は、次のように述べている。

「この試合は、シンガポールのトッププロ18名と、地元のアマチュア6名に対して、競技の場を提供するものだ。シンガポールのゴルフを統括する団体として、一連のゴルフイベントの先頭に立つことができ、大変光栄に思う」

その開幕戦会場となったセントーサGCでは、チュー・ツェ・ファンが通算1アンダーで優勝を飾った。

「試合に出場することができて嬉しいです。練習ラウンドとは違い、緊張感があるので、より集中して、正確にを狙うことができた」

彼はプレーする機会を得られたことに心から感謝の気持ちを表していた。

アング氏も、チューと同じ想いだった。

「私たちは、SPIの開幕戦をスタートさせることができて嬉しい。アマチュアとプロが、緊張感を持って優勝を目指す姿を見るのは素晴らしいことだ。ここ数年、海外試合に出場できない者が多く、厳しい状況が続いているが、これによってシンガポールのゴルフ界が、どんどん好転していくきっかけとなるだろう」

「シンガポール・プロシリーズ・インビテーショナル」の開催地セントーサGC。

 

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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