ラテン諸国の女子ゴルフと欧州女子ツアーの発展のカギは?
欧州女子ツアーCEOのアレクサンドラ・アルマス(左)とビセンテ・ルビオ。
米国PGAツアーの進出が進むラテンアメリカ
PGAツアー・ラテンアメリカは、新型コロナウイルスにより277日間、ツアーが中断されたが、12月の「シェル・オープン」でついに再開した。
だが、コロナパンデミックによって、ゴルフがまだ裕福な人たちのスポーツである南米大陸で、ツアーを開催し続けようにも過去8年間の努力が水の泡となる可能性がある。
大陸の南北で、ゴルフほど明確な格差のあるスポーツもない。
人口の12%以上(約4000万人)のゴルファーがいる米国では、ゴルフは万人が楽しむスポーツであり、ゴルフを支援することの重要性を政治家や団体に訴える専門の陳情団体もある。
一方、ラテンアメリカでは、ゴルフ人口は総人口のわずか2%未満で、ゴルファーの数もゴルフコース数も北米に比べれば圧倒的に少ない。
コロナの影響で3試合に減ってしまったラテンツアー
以前、ヨーロピアンツアーに参戦するラテン系プレーヤーの増加に対応するために、ヨーロピアンツアーやチャレンジツアーはいくつかの取り組みを行なったが、その後2012年にPGAツアー・ラテンアメリカが設立された。
当初、7カ国・11試合で開始されたツアーは、2019年までに10か国・17試合にまで大会数が増えた。
そして2020年シーズンはもともと24試合が予定されていたが、コロナの影響で3試合に減ってしまった。
ツアーは当初、コロナパンデミックのために11試合を延期したが、のちにそれらは中止となった。
アルゼンチン(3試合)、メキシコ(2試合)、ブラジル(2試合)、チリ、エクアドル、ペルー、コロンビア(最後の4カ国は各1試合ずつ)である。
5月初旬に予定されていた「プエルト・プラタ・オープン」は、「 シェル・オープン」終了直後の12月中旬に開催され、この試合をもって、2020年南米ツアーシーズンを締めくくった。
賞金ランクからポイントランクへ
また、ツアーはランキングシステムも改善しなければならなかった。
賞金に基づくシステムからポイントに基づくものへの変更である。ポイントランクのトップを走るのは、3月の「エストレラ・デル・マーオープン」で優勝したアレックス・ローチャ。
シーズン終了時点でのポイントランク・トップ5は2022年度のコーンフェリー・ツアーのシード権を取得することになっている。
富裕層向け高級ゴルフ観光事業に着手
PGAツアー・ラテンアメリカの今後の目標は、ゴルフを一般の人々に普及させることである。
中南米で最も代表的な観光地、アルゼンチンやメキシコなどの国は、ゴルフを単なる競技としてではなく、積極的に観光事業に組み入れている。
また、PGAツアー・ラテンアメリカは、アルゼンチンをトップレベルの観光地にすることを目的とした契約において、アルゼンチン観光振興機構に参加。
両者は昨年12月から2021年にかけて一連のプロモーション活動を実施する予定である。現在、アルゼンチンには300コース以上あり、その約25コースで世界の旅行者を受け入れることが可能だ。
このような提携を活用して、アルゼンチンはハイエンドな観光部門に注力している。
その一方で、「マヤコバ・クラシック」を開催したことで、1年に250億ペソ(約1300億円)以上の経済効果を生み出すゴルフの可能性を認識し、コースの40%が海岸地域にあるメキシコは、ゴルフが投資、観光、今後成長するメキシコ経済の推進力となるという考えを重視している。
メキシコゴルフ連盟(FMG)が発表した数字によると、国内には200コースがあり、毎年少なくとも3コースが新設されているようだ。
プロツアーを構築し、南米の卓越したゴルフを世界に知らしめるための8年間の努力が、このパンデミックで無に帰さないように願いたい。
将来のことは欧米のツアーにとっても不確実だが、小規模なツアーにとってはさらに不透明だ。
スペイン・コスタデルソル地方に位置するフィンカコルテシンコースで2023年に開催される「ソルハイムカップ」。
「ソルハイムカップ」の優勝トロフィを掲げるスペインのカロルタ・シガンダ。
「ソルハイムカップ2023」スペインで開催決定!
スペインのアンダルシアに位置するコスタデルソルのコース、フィンカコルテシン。
そこで2年に一度行なわれる女子ゴルフ「ヨーロッパVSアメリカ」の選抜選手による対抗戦「ソルハイムカップ2023」が開催されることになった。
これによってスペインは、アンダルシア州南岸で開かれるゴルフ界で最も大きな団体戦、「ライダーカップ」(1997年バルデラマ)と「ソルハイムカップ」(2023年フィンカコルテシン)を主催する最初の欧州の国(イギリス諸島を除く)になる。
アンダルシアエリアでは、昔から欧州ツアーや欧州女子ツアー、WGCイベントを通じて「ライダーカップ」から「ワールドカップ」まで世界のトップレベル試合が開催されてきたが、フィンカコルテシンはその歴史にふさわしい後継地だ。
フィンカコルテシンは2009年、2011年、2012年にすでに「ボルボ世界マッチプレー選手権」を開催しており、世界最高峰の選手たちにすでによく認知されているが、今から2年後の大会が楽しみである。
ゴルフが「経済の推進力」になると考えるメキシコは、ゴルフ場建設にも力を入れる。写真はユカタン半島に位置する風光明媚なユカタンカントリークラブ。
「ソルハイムカップ」開催コースのフィンカコルテシンコース。
Text/Isabel Trillo Amores
イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)
PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。