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「ISPS HANDAオーストラリアンオープン」
男子はリッグス・ジョンストン、女子はシン・ジエが優勝

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Golf Australia

「ISPS HANDAオーストラリアンオープン」の3部門で優勝したチャンピオンたち。左から障害者ゴルフの部優勝のサイモン・スンミン・リー、男子の部優勝のリッグス・ジョンストン、女子の部優勝のシン・ジエ。

  男子、女子、障害者が同じコースで同週に戦う「ISPS HANDAオーストラリアン」は、メルボルン郊外のキングストンヒースGCで決勝ラウンドが行なわれ、男子ゴルフは今年の5月にプロ転向したばかりの、リッグス・ジョンストン(米国)、女子ゴルフは、今大会で10試合目の出場で、2013年以来2勝目を果たしたシン・ジエ(韓国)、障害者ゴルフは、サイモン・スンミン・リーが優勝した。

 前週の「オーストラリアPGA」で初優勝を果たしたエルビス・スマイリーは、父がエルビス・プレスリー好きで、その名前にちなんでいるが、リッグス・ジョンストンは、『リーサルウェポン』でメル・ギブソンが演じるキャプテン・リッグスにちなんでつけられたものだという。今年の5月にプロ転向したばかりで、4ラウンドで行なわれる試合に出場したのは約20回。高校時代以来の優勝だった。今大会は、DPワールドツアーとの共催試合でもあるが、同ツアーの出場は、前週の「オーストラリアPGA」に続き、2試合目。今回の優勝で、レース・トゥ・ドバイランキング(DPワールドツアーのポイントランキング)で1位に浮上し、世界ランキングも954位から313位と、一気にランクアップしている。

「僕は、4ラウンドの試合をあまりプレーしたことがないんです。でも今週はグリーン上がいい感じだった。通常、パッティングがうまくいけば、全体的にいいプレーができるんですが、今週はかなりよかったです」

最終日、最終組で戦ったリッグス・ジョンストン(右)。プロ転向以来5試合目のジャスパー・スタッブス(左から2番目)とLIVゴルファーのルーカス・ハーバート(中央)と優勝争いを繰り広げた。

 過去、「オーストラリアンオープン」に優勝したアメリカ人には、ジーン・サラゼン、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、トム・ワトソン、ジョーダン・スピースらがいるが、

「素晴らしい選手たちと同じグループに入れるのは、本当に最高なことですし、自分の名前をこのトロフィーに刻むことができたことを非常に光栄に思います。この瞬間は一生忘れません」と語った。

 最終日は快晴だった天気が、徐々に厚い雲が垂れ込めるようになり、ちょうど男子の最終組がスタートした昼過ぎからは、時折強い風雨に見舞われた。メルボルンは1日の中に四季があるという、スコットランドのような天候。そんな中でもアメリカの24歳は、1イーグル、5バーディ、3ボギーの68をマークし、3つスコアを伸ばして、2位のカーティス・ラック(豪州)に3打差で優勝した。

「今日は天候が安定せず、15分ごとによくなったり、悪くなったり……。でも優勝争いにいることはわかっていたので、最後まで集中しないといけないと思ってました。そして17番ホールのグリーンに歩いて行った時、初めてリーダーボードを見て、自分が3打差をつけているのを確認したんです。その瞬間、『あと何打かしっかり打てば、終わる』とようやく少しホッとしました」  なお、今大会は「全英オープン」予選も兼ねており、有資格者以外の上位3名が来年の「全英オープン」に出場できることになっているが、優勝したジョンストンの他、2位のカーティス・ラック、3位タイのマーク・リーシュマンがその権利を獲得した。リーシュマンはPGAツアーで6勝を挙げ、メジャーの常連だったが、現在はLIVゴルフでプレーしており、今大会に入る前は世界ランキングで575位だった。今回の上位入賞で、2022年「全英オープン」以来のメジャー出場を果たす。

来年、ロイヤル・ポートラッシュで行なわれる「全英オープン」への出場権を獲得した3人。左からカーティス・ラック、リッグス・ジョンストン、マーク・リーシュマン。

 また、女子は今年で10回目の「オーストラリアン女子オープン」出場を果たしたシン・ジエが、2013年にロイヤル・ キャンベラで開催された同大会以来の2勝目を果たした。 シン・ジエはオーストラリアで過去4勝しており、「オーストラリアに来ると気分がいい。友達も多いし、ファンも応援してくれるから、この国が好きですね。このコースは、オーストラリアで初めて回ったコースで、カリー・ウェブさんとのプレーオフで負けたところなんですよ。オーストラリアでよく合宿しているので、コースのこともよくわかっています」と語る。今大会での優勝で、通算65勝目を飾った。

 メルボルンのサンドベルトエリアにあるコースは、地面が固く、グリーンでボールが 止まりにくい傾向があるが、今年は雨が降ったこともあり、通常よりも柔らかく、ボールが止まりやすいセッティングになっていた。シン・ジエは「いつもよりは柔らかく、ランも出にくいので、距離が長く感じられる。全クラブを駆使してプレーしないといけない。去年も一昨年も2位に終わっているので、今年こそ優勝したいし、今年は日本でも優勝していなかったので、今年最後の試合で優勝したいですね」と語っていた。

 最終日は、3連覇を狙うアシュリー・ブハイと、オーストラリアのトッププロで母国のメジャー優勝を狙うハナ・グリーンの3人で、パトリシア・ブリッジズボウル(女子の優勝トロフィー)をかけての熱戦が繰り広げられたが、シン・ジエは、2イーグル、4バーディ、3ボギー、1ダブルボギーと出入りの激しいゴルフながらもスコアを3つ伸ばした。一方、ブハイは6バーディ、1ボギーと安定感のあるプレーで68をマークしたが、あと2打足りず。シン・ジエを捉えることはできなかった。

「一時7打差あった時は、ハナとの2位争いかな、と思っていましたが、辛抱強くプレーを続けようと思った。プレッシャーをかければ、何かが起こる可能性があるコースだと信じて、実践したんです。追いかける方が簡単で、目指すのはバーディだけ。でも雨が厄介でしたね」(アシュリー・ブハイ)

 シン・ジエは、前日に父から「オーストラリアは特別な場所だね。砂を瓶に詰めて、持って帰りなさい」と言われたという。

「このトロフィを持つことができて、本当に嬉しい。簡単なことではないですが、とても幸せですね。今週は本当にショットが安定した1週間で、悪い日が1度もなかった。最後の数ホールは少し緊張しましたが、その緊張感がないと少し寂しい感じがする。だから大歓迎です」

  ホールアウト後は、優勝トロフィを抱えながら、オーストラリアの国民食でもある大好きなミートパイをかじり、嬉しそうな表情を浮かべていたシン・ジエ。オーストラリアのファンたちの声援をエネルギーに変え、笑顔でプレーしていたのが印象的だった。

優勝の瞬間、両手を突き上げガッツポーズしたシンジエ。
表彰式で、男子ローアマの中野麟太朗(中央)と会話するシン・ジエ。

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