Text/Eiko Oizumi
Photo/Augusta National Golf Club

今年で6回目を迎えた「オーガスタ女子アマ」は、今回で3度目の出場のスペインのカルラ・ベルナット・エスクデールが最終日に68をマークし(出場選手中、唯一の60台)、通算12アンダーという大会新記録を樹立し、優勝。セベ・バレステロス(1980年、1983年)、ホセ・マリア・オラサバル(1994年、1999年)、セルヒオ・ガルシア(2017年)、ジョン・ラーム(2023年)と並び、オーガスタナショナルで勝利を収めたスペイン代表選手の1人となった。21歳の彼女は、ジェニファー・カプチョ、梶谷翼、アンナ・デービス、ローズ・チャン、ロッティ・ウォードに次ぐ歴代チャンピオンの仲間入りを果たしたことになる。1打差の2位からスタートし、今大会で全日60台を叩き出した唯一の選手となった。
なお、16歳のアステリスク・タリーは、1打差の2位に食い込み、前年度優勝者のロッティ・ウォードは3打差の3位に終わった。
エスクデールは、カンザス州立大の最上級生で、現在世界アマチュアランキングは29位。今シーズンは「マウンテンビュー・カレッジエイト」「パワーキャット・インビテーショナル」で優勝を飾っている。過去2年間にわたってオール・アメリカンのセカンドチームに選出されており、「アーノルド・パーマーカップ」では国際選抜チームの一員として出場するなど、活躍中だ。
「言葉では表現しきれないけど、とにかくすごく嬉しかったし、ホッとしました。リーダーボードを見たら、私の1打後ろに選手がいたんで、“(最終ホールの)パットは絶対に入れなきゃ”と思ったんです」
エスクデールは、セルヒオ・ガルシアの父ビクトルさんがコーチで、ガルシアとも1度プレーしたことがあるという。最終日前日には「とにかくトライし続けろ! バーディチャンスを作れば、そのうち入る」とアドバイスを受けたそうだ。
ホールアウト後には、母国スペインの大先輩、オラサバルにハグで祝福を受けた。だが、こんな笑い話もある。オラサバルに「君のプレーを見てたよ」と言われ嬉しかったというが、昨年、彼に初めて会った時に緊張しすぎて名前を言い間違え、オラサバルというところを、「ララサバル(欧州ツアーのホセ・マリア・ララサバル)」と言ってしまい、「それは僕じゃないよ」と言われたのだそうだ。「ごめんなさい」と謝ったというが、こんなところに彼女の正直な性格が滲み出ている。
スペイン出身として、初の「オーガスタ女子アマ」のチャンピオンに輝いたが、今回の優勝について、以下のように語っている。
「本当にすごいことだけど、私だけで終わってほしくないですね。もっと多くのスペイン人選手に来てもらって、スペインのゴルフをさらに高めていってほしい。だから、私が最後の1人にはなりたくない」

また、今回の勝利には、キャディを務めてくれたカンザス州立大のアシスタントコーチ、ミツナガリンコさんのサポートも大きいという。
「彼女はとてもポジティブな人。そして親友でもあります。今週、私に必要な全てが彼女だったと思います。彼女が一緒にいてくれたことで、オーガスタにいることを忘れるくらい、自然体でプレーできました。感謝の気持ちでいっぱいです。3ラウンドもキャディを務めてくれて、感謝です」
「私はプレー中、時々かなり扱いづらいタイプなんです。緊張すると、『ボールどこ?』ってパニックになったり。でも、ボールのところまで行けば落ち着けるんですけど、そこまでの間に私があれこれ言っても、彼女はそれを全部聞いてくれる。『今のショットはひどかった』『なんであんなことしたんだろう?』って文句を言っても、彼女は全部受け止めてくれて、常に安心させてくれるんです。彼女がいなければ、この勝利はなかったと思います」
カンザス州立大学の元ゴルフ部員でアシスタントコーチも務めるミツナガさん(ジョージア州出身)は、2012年、2016年「全米女子オープン」に出場経験もあり、2019年「ジョージア女子アマ」2015年「全米女子フォーボール選手権」「ジョージア女子マッチプレー」で優勝している。ミツナガさんは、優勝後、こんなエピソードも教えてくれた。
「カルラは、すごく日本が好きなんです。チームメイトにも日本人がいるんですけど、ドラえもんの話もよくしてますよ。将来は、LPGAツアーに出ることが目標ですが、日本の女子ツアーにも出てみたいと言っています」
今回の優勝で「オーガスタ女子アマ」の5年間の出場権と、「シェブロン選手権」「全米女子オープン」「エビアン選手権」「AIG全英女子オープン」への出場権が与えられたエスクデール。これらの女子メジャーをアマチュア資格で出場した後で、プロ転向するとみられている。


