Text/Eiko Oizumi
Photo/Augusta National Golf Club

「マスターズ」3日目を6バーディ、3ボギーの69で回ったブライソン・デシャンボー。スコアを3つ伸ばし、首位のローリー・マキロイに2打差の10アンダーでフィニッシュした。これまで3日間60台でプレーしているのは、デシャンボーただ1人である。
最終ホールでは、ティーショットが左のフェアウェイバンカーにつかまり、そこから2打目がグリーン左奥のカラーへ。カラーからカップまでは約15メートルあったが、スライスラインを見事読み切り、カップイン。バーディパットを決め、パトロンたちはまるで優勝が決まったかのような大騒ぎ。デシャンボーもガッツポーズをして見せた。
「18番のパットは最高だった。カップまであと1メートルくらいで、『これは入る!』と思った瞬間、体が自然と歩き出していたんだ。理由はわからないけど勝手にそうなってたね。もう“電撃”みたいな感覚だった。鳥肌が立つような、体中にエネルギーが走る感覚。まだ土曜日なので、自分に『落ち着け!まだあと1日残ってるぞ』と言い聞かせましたが、でもあの瞬間は特別で、エキサイティングだったね」
ホールアウト後に記者会見に応じた後は、練習場へ直行。すでに日は暮れていたが、「アイアンショットの調整をいち早くしたい」と照明の灯る練習場で1人で球打ち。この日は、グリーンをとらえた回数が少なく、「アイアンショットをもっと正確にしないといけない。ショット自体の精度について言えば、インパクトでフェースの向きを思ったように揃えられていないことが問題。基本に立ち返って、しっかり調整すれば、明日は万全の体制で臨めると思う」と語った。彼は、インサイド・アウトのスイングで、インパクトゾーンではスムーズにフェースが閉じていくようなスイングの感覚を追い求めているといい、引っかけすぎず、右に出しすぎないように何年も取り組んでいる課題なのだそうだ。
最終日のティータイムは、14時30分。長い夜を過ごすことになるが、デシャンボーは食事して、体のケアを行ない、ピアース・ブロスナンのジェームズ・ボンドの映画(007)を観て過ごすと言う。一方、首位のローリー・マキロイは、このあと16時間、スマホを見ないで何もせずに過ごす予定だと話している。
昨年、「全米オープン」で優勝した時も、周囲のギャラリーを巻き込んで、応援を優勝争いの力に変えたデシャンボー。今回もパトロン(マスターズではギャラリーのことをこう呼ぶ)のエネルギーを受け取りながらも、「次のショットに集中しないと」と自分に言い聞かせながら戦っている。昨年の「全米オープン」では、マキロイの自滅もあり、2勝目を挙げることができたが、今年の「マスターズ」では、その2人がどんな優勝争いを繰り広げるのか、楽しみだ。

