Text/Eiko Oizumi
Photo/Augusta National Golf Club

LIVゴルフのブライソン・デシャンボーは、首位のローリー・マキロイと2打差の通算10アンダー・単独2位で最終日を迎えた。昨年の「全米オープン」では、最終ホールまでもつれ込んだ優勝争いの末、マキロイの自滅によってメジャー2勝目を挙げたデシャンボー。今回の対決は、「PGAツアー vs LIVゴルフ」という構図を超えた因縁の再戦となった。
ラウンド中、より多くの声援を受けていたのは、北アイルランド出身のマキロイだった。アメリカ人のデシャンボーは、LIVゴルフ移籍により一時ファンの支持を失ったが、最近は自身のYouTubeチャンネルが人気を集め、奇想天外なアイデアやパワフルなスイングに魅了されるゴルフファンが増えている。
最終日のマキロイは、優勝争いに全集中している様子で、ショットの合間もキャディと必要最低限の会話を交わしながら、うつむき気味に歩く姿が目立った。ギャラリーからの声援にもほとんど応えずにいたが、その姿は、メジャー以外の大会で見せる彼の様子とは異なっていた。普段であればファンに視線を向けたり、手を上げるといった反応をすることが多い。やはり、悲願の「マスターズ」制覇と、キャリアグランドスラム達成のために、一瞬たりとも気を抜きたくなかったのだろう。
一方のデシャンボーは、ファンの声援を糧にしたいタイプ。マキロイとは対照的に、ギャラリーに笑顔で応えたり、うなづいて見せた。親指を立ててファンの声援に笑顔で応える、フィル・ミケルソンのような雰囲気に近い。しかし、同組のマキロイとは、ラウンド中一切会話がなかった。
この件についてラウンド後、記者から「今日、ローリーと話をしたか?」と問われたデシャンボーは、こう語った。
「今日は一言も話しかけてこなかったんです。僕はこの雰囲気をすごく楽しんでいましたが、彼はとても集中しているようでした。でも、僕はああいうタイプじゃない」
さらに「ローリーに話しかけようとしたのか?」という質問には、少し苛立ちを見せながら、次のように答えた。
「話しかけても、彼は僕と話そうとしませんでしたよ」
いくら集中していたとはいえ、話しかけても返してこないマキロイの態度には、少なからず不満があったのだろう。彼の「僕はああいうタイプじゃない」という言葉には、マキロイへの批判のニュアンスがにじんでいる。
かつてのタイガー・ウッズとフィル・ミケルソンのような犬猿の仲であれば、同伴競技者と一切会話がないこともあり得る。だが、最近ではLIVゴルフに対して理解を示す発言もしているマキロイが、デシャンボーがLIV所属だからという理由だけで無視したとは考えにくい。もし他の選手が同伴だったらどうだったか――そんな疑問も残るが、それだけ今回の「マスターズ」に懸ける思いが強かったという証拠でもある。
ブルックス・ケプカとの確執に続き、今度はマキロイと不協和音?
デシャンボーは、ゴルフ以外の場面でも話題に事欠かない、実に興味深い存在だ。
