男子はチャン・キム、女子は稲見萌寧が2年にわたるロングシーズンの末、賞金王に
日本女子ツアー
賞金女王 稲見萌寧(左)
メルセデスランキング1位 古江彩佳(右)
6人の選手だけで31勝の女子ツアー
52試合で優勝者23人。日本女子ツアーは、コロナ禍で2020年は14試合しか開催できなかったことから、2021年の38試合と合わせたロングシーズンが示す数字は、限られた選手の強さが光ったことを浮き彫りにしている。
賞金女王となった稲見萌寧が9勝、最後まで稲見と争った古江彩佳が6勝、2021年の前半を引っ張った小祝さくらが5勝。
申ジエ、西村優菜が4勝で、原英莉花が3勝と、6人だけで31勝。
全試合の半分以上をさらっている。
20-21年の4勝を含めて通算26勝の申ジエを別にすると、残る5人はそれまで優勝経験が少ない。
中でも西村は2020年の「樋口久子 三菱電機レディス」が初優勝で、そのシーズンに4勝していることになる。
それ以外も、実は2019年までにそれぞれ1勝しかしていない。
古江に至ってはアマチュアだった2019年10月の「富士通レディース」に優勝し、そのままプロ入りしている。
つまり、この5人は、このロングシーズン、一気に花開いた面々だ。
9勝して女王タイトルも手にし、東京五輪で銀メダルを手にした稲見の活躍は言うまでもないが、それを猛追した古江がルーキーだったことを、もはや見ている側が忘れてしまうほどの活躍ぶりだ(来季の米LPGAツアーのシード権も獲得)。
西村もQT1位でシーズンに臨んだルーキーだった。
つまり、新しい力が大きく結果を残したシーズンだったと言える。
初優勝したのは6人。2020年「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で初優勝し、次戦の「ニトリレディス」で連勝した笹生優花は、2021年「全米女子オープン」で見事にメジャー初優勝。
プレーオフで敗れた畑岡奈紗とともに、米ツアーの一員としてプレーを続けている。
その他初優勝者には山下美夢有、堀琴音、吉田優利、そして最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の三ヶ島かながいる。
初シードが13人で、復活シードが7人。
賞金シードを失ったものは19人と入れ替わりも激しいが、元気なベテランも目立つ。
44歳の大山志保を筆頭に、42歳の李知姫、36歳で3シーズンぶりにシードに返り咲いた藤田さいき、産休明けで優勝し、シードを維持した33歳の若林舞衣子など、本人次第で長い競技人生が送れるゴルフの魅力を、十分に伝えてくれる選手たちも多い。
現状を見る限り、選手の入れ替わりは激しく、試合展開も面白いものが多い。
その上メジャーでは優勝者はもちろん、上位に食い込む若手も増え、確かにレベルは上がっている。
だが、ツアーの規定が変わってJLPGA会員以外原則QTを受けられなくなった今後、女子ツアーはどうなっていくのかはまだわからない。
第一線で長く活躍する選手がどれだけ多いか。
その厚い層に風穴を開けられる選手がどれほど増えるか。ツアーの今後はその2点にかかっている。
今年、活躍した選手たちが、できるだけ長く第一線で踏ん張り、後進の壁となることこそが、さらにツアーに厚みを増すことにつながるはずだ。
男子ツアーが女子ツアーに比べて注目を集めない理由
日本男子ツアー
賞金王 チャン・キム
男子ツアーに目を転じてみよう。
残念ながら試合数は、女子ツアーに比べると少ない。
2020年はわずかに6試合、2021年は24試合で、併せて30試合開催という現状である。
今シーズン、長年開催されてきた老舗の「ブリヂストンオープン」がなくなるというニュースは、今後への不安を否が応でも抱かせる。
米ツアーで戦い続ける松山英樹が、「マスターズ」に優勝したのは最高のニュースだが、これが日本ツアーにいい影響を与えているかどうかは、もう少し長い目で見なければわからない。
面白いのは、DPワールドツアー(欧州ツアー)との共催の試合が1つできること。
4月の「ISPS HANDA 欧州・日本どっちが勝つかトーナメント!」(4月21~24日・PGM石岡GC開催)がそれだ。
圧倒的な資金力を持つISPSが主催する大会で、関係の深い欧州ツアーを日本に引っ張ってきた、と言い換えてもいい。
賞金総額は200万ドルで、日本人選手の出場枠は41名。
欧州ツアーから出場する人数(83名)に比べれば半分だが、それでも日本開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」の4倍ほどの日本人が出場できることになっている。
また、チャン・キムが賞金王になり、金谷拓実、木下稜介、谷原秀人、星野陸也と続いた賞金レースも、最後は盛り上がった。
1試合、1試合を見ていくとエキサイティングな試合も多いし、有望な若手選手もたくさん出てきている。
その中で、谷原のようなベテランの活躍もある。それなのに女子に比べて圧倒的に露出度が低いのは、なぜか?
試合数が女子に比べて少ないということもあるだろう。
年間を通して、女子のように毎週試合がないと、週末に毎週〝観戦する習慣〟が付きづらい。
シーズン終盤であれば、毎週試合があり、誰が賞金王になるか、で盛り上がりも見せるが、試合があったり、なかったりでは興味も薄れてしまう。
そして、露出度が下がると、選手個人のスポンサーも増えないという悪循環に陥ってしまう。
日本が、まだまだ〝男性社会〟であることも、男子ツアーにとっては不利に働いている。
試合そのもの、スポーツそのものを企業として応援するスポンサーも多いが、一方で「プロアマ」を重要視するスポンサーも、男女ともに日本では多いからだ。
選手の技術を見たい、近くで応援したいというよりも、お客さんの接待に使いたいという考え方だ。
それが悪いというわけではないが、男子の技より、とにかく若い女子。
男子と女子の人気を比較するとき、このことも踏まえる必要がある。
スポンサー獲得にまつわるツアーと選手の役割
危機的状況が続いている男子ツアーの試合を増やすのは、選手ではなく組織の仕事である。
コロナ禍は、それをさらに白日の下にさらしたと言っていいだろう。
選手会が試合を作る、選手がスポンサーを持ってくる。そのこと自体は素晴らしい。
では、試合を作り、運営するはずの組織はいったい何をしているのか。
選手はゴルフだけをしていればいいという時代ではないが、ゴルフ以外にしなければならないことが多すぎるとしたら、それも問題だ。
2022年こそ、男女とも日本のツアーが10年後、20年後につながる動きを見せてくれることを、心から祈っている。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。
現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。