• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From Japan 放映権、主催権の所...

【世界のゴルフ通信】From Japan 放映権、主催権の所在変 更で日本女子ゴルフが大きく変わる?!

激動の日本女子ゴルフ
放映権、主催権の所在変更で日本女子ゴルフは大きく変わる?!

©Getty Images

JLPGA小林浩美会長は「各大会主催者の皆さまには、映像に映し出される選手の価値を認めてくださったことに、心より感謝申し上げます」とコメントを発表。

©Getty Images

今年の「宮里藍サントリーレディスオープン」で優勝した青木瀬令奈を囲んで、優勝インタビューをするテレビクルーたち。

4年にわたるJLPGAの放映権問題が決着

将来、日本女子ツアーの映像を海外で観れたり、、アーカイブが残ったりするようになるのだろうか。

10月27日、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)から声明が出された。
「2022年度JLPGAツアー公認競技における放映権の帰属について」。
要約すると、各主催者との間で4年にわたって交渉が続いていた放映権について、すべてJLPGAに帰属することが決まった、というもの。
もう少し詳しく言うと、2020年まで(後にコロナ禍で2021年9月まで延期)テレビ局をはじめ、いくつかの社との間で継続審議となっていた部分も、今回JLPGA帰属という合意に至ったというものだ。

10月末になったのは、17の主催者が、9月末の開催協約書を出す際、放映権について条件を付けていたから。
これに対してJLPGAが条件なしの協約書締結を要請。
10月25日17時までに出されなければ、2022年には試合を開催する意思がないものとみなし、その週の優先交渉権を失う、という強い姿勢を見せた。
最終的には17社が折れる形で、放映権のJLPGA帰属が決定した。

これで、2022年に関しては今年開催したすべての試合の開催が決定。
テレビ放映がある場合には、その放映権はすべてJLPGAが持つことになる。
これまで、海外での放送や、アーカイブの蓄積などの障害になってきた映像そのものをJLPGAで一本化できるようになる。

現実としては何が変わるのか?正直、2022年に関しては、あまり大きな変化はないはずだ。
というのも、2022年に関しては、放映権料は発生しないからだ。
2023年以降に関しては、どうなるかわからない、というのが正直なところ。
放映権料が発生することは予想されるが、それがいくらになるのか。
現状ではウワサの域を出ない。高すぎれば、テレビでの放送を断念する主催者も出るかもしれないし、そうなると大会開催自体に二の足を踏む主催者が出る危険もはらんでいる。
賞金も含め、今後は試合にかかっている費用+放映権料が発生することになる。
これを自前で用意するのか、出してくれるスポンサーを探すのか、今かかっている分を切り詰めるのか。
こうなると賞金も例外ではなく、カットされる可能性もある。
テレビ放映そのものが必要ないという考えに至るかもしれない。
2023年以降について様々な可能性が、主催者の間では考えられている。

©Getty Images

渋野日向子が今季2勝目を飾った「三菱電機レディス」はテレビ朝日が中継。最終日の平均世帯視聴率が12.4%の高数字を記録したと報じられた。

©Getty Images

今季8勝を挙げ、東京オリンピック女子ゴルフでは銀メダルを獲得した稲見萌寧。五輪女子の最終日の世帯平均視聴率は、16.4%(関東地区、速報値。ビデオリサーチ調べ)だったという。

インターネット配信と女子ゴルフ

最近増えてきたインターネット配信については、新しい権利ということもあり、JLPGAに帰属している。
しかし、実際の配信となるとまだまだわずかに過ぎない。
今年の10月、「スタンレーレディス」以降の年内の全試合をGOLF TVで配信するとJLPGAは発表したが(事情によって配信できない試合もある、という但し書き付きで)、実際は10月末時点で、2試合配信、2試合は配信なしという状況だった。
まだまだ全試合配信とは程遠い。

ツアー主催者としてJLPGAが放映権を持ち、インターネット配信をするのは、プロスポーツ団体としてはごく自然な形。
だが、権利を持つということは、それに伴う義務も生じる。
できるだけ多くの試合を〝販売〟し、多くの人に観てもらう〝義務〟。
『宝の持ち腐れ』になってしまうのでは元も子もない。

海外に販売するにも、元となる映像がなければ始まらない。
放映権料を巡る交渉は、ようやくスタートラインが決まったところ。
インターネット配信の映像との兼ね合いも含めて、まだまだ先は長くなりそうだ。

2025年からの試合の主催者は全てJLPGA

JLPGAは、2025年からすべての試合で自分たちが主催者になるということも、すでに既存主催者たちに宣言している。
実は、今年の開催協約書にも当初、以下のような内容が盛り込まれていた。
2025年から「JLPGAが主催者となり、既存主催者は特別協賛社とする」。
しかし、猛反発を受けて一度撤回。2024年9月までの継続的協議にしている。

本来、単年契約であるはずの開催協約書に2025年からのことが盛り込まれたことに対する抵抗もある。
だが、それ以上に「自分たちの試合」という意識が強い現主催者には、JLPGAの規定(枠組み)の中で画一的に試合を行なうことへの反発が大きい。
単刀直入に言えば、『口は出さずにお金だけ出してください』と聞こえてしまうからだ。
これならいっそのこと、すべての試合を一度白紙に戻し、JLPGA主催の大会に対する特別協賛社を募った方がいいのではないか。
その中で、既存主催者が優先権を持つことにした方がすっきりするだろう。
単年契約なのだから、不可能ではないはずだ。

特別協賛社というのは、いわゆる〝冠スポンサー〟のこと。
現在でも、主催者は変わらずに特別協賛社がついて大会名称が変わるのは珍しいことではない。
現実的に、来年はどの試合がテレビで観られて、どの試合がインターネット配信で観られるのか。
テレビであれネットであれ、ファンが観られない試合が出る事態だけは避けたい。

ここ3年という短いスパンで見ても、渋野日向子の「全英女子オープン」優勝、黄金世代の台頭、笹生優花VS畑岡奈紗の「全米女子オープン」プレーオフと笹生の優勝、稲見萌寧の「東京オリンピック」銀メダルと、日本の女子ゴルフには明るいニュースが続いている。
コロナ禍でたくさんの試合が中止になり、無観客の試合が多かったというマイナス要因を吹き飛ばす勢いがあるのだ。
JLPGAにはツキがある。将来を見据えて、ツアーの仕組みを変える絶好のチャンスであることはまちがいない。
しかし、方法を間違うと大変なことになる。
長い目で見てファンに支持され、JLPGAだけでなく、ゴルフの世界にとってプラスになるビジネスとしてまっとうな方法で進めていってほしいものだ。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

関連する記事