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【世界のゴルフ通信】From Japan 金谷拓実が挙げた執念の勝利

「メジャーは一つと絞らず、全部に勝ちたいと思ってプレーする」

金谷拓実

男子ゴルフ今季初戦の「東建ホームメイトカップ」でツアー3勝目を挙げた金谷拓実。

©東北福祉大学

卒業式式場前で、卒業証書を手にした金谷拓実。

©東北福祉大学

3月18日に東北福祉大学国見キャンパス(仙台市青葉区)で挙行された総合福祉学部の卒業式で、髙橋英寛理事長から管長賞を授与される金谷拓実(左)。白の紋付は、ゴルフ部キャプテンが羽織るのが伝統だという。過去、池田勇太、松山英樹も着用した。

2021年の日本のゴルフはおもしろい。
松山英樹の「マスターズ」優勝は、もちろんその最たるものだが、梶谷翼の「オーガスタ女子アマ」優勝についても世界へのステップとして大きな意味を持っている。

日本ツアーに目を向ければ、女子は開幕戦から激戦が続き、相変わらずの群雄割拠。

今年は稲見萌寧がすでに4勝、小祝さくらが2勝を挙げるなど、この2人の圧倒的な強さが目立つ。
梶谷を含めたまだアマチュアの面々も含めて、この先、メジャーの舞台でどれだけ暴れてくれるのか、と、期待が集まる。

昨年は6試合しかなかった男子ツアーも、今年は盛り上がりそうな気配を見せている。
女子に遅れること1か月余。
「マスターズ」翌週の初戦「東建ホームメイトカップ」は、悪天候とコロナ陽性選手が出た影響で54ホールに短縮されたが、展開はツアーの新風を感じさせるに十分なものだった。

金谷拓実が、後輩のアマチュア、中島啓太、昨年から好調を続ける先輩プロの木下稜介相手に激戦を繰り広げ、最後は、貫録たっぷりに優勝。
アマチュア時代に優勝した「三井住友VISA太平洋マスターズ」、昨年、プロ入り初優勝した「ダンロップフェニックス」に続き、早くもツアー3勝目を飾っている。

優勝インタビューで、マスターズ優勝直後の松山と電話で話したことを打ち明けた金谷。
1年延期されて7月末に開催される予定の東京五輪に、一緒に出場する夢を口にしている。
子供の頃に五輪で活躍する水泳の北島康介や、世界を股にかけて活躍するサッカーの本田圭佑などに夢中になり、野球やバスケットボールも大好きな金谷が目標とするアスリートはゴルフの世界だけにとどまらない。
五輪への想いが強いのはその影響もある。

東京五輪は1年延期され、大会まで100日を切ってもウイルス感染状況は収束を見せず、予断を許さない状況にある。
ウイルス以上に、開催国・日本では対策が後手後手に回る政治という〝人災〟が広がっているからだ。
アスリートたちにとっては、〝生殺し〟が続く。

それでも、金谷がブレることはないだろう。
「東建ホームメイトカップ」優勝で世界ランク76位に浮上し、今平周吾を抜いて、同14位の松山に続く日本人2番手に浮上。
五輪出場には、6月21日時点の各国ランキングで2位以内になる必要があるため、そこまで2位を守る必要がある(世界ランク15位以内にいれば、4人まで出場できる)。
その間、日本の試合が数試合のほか、ポイントを大きく稼げる「全米プロ」「全米オープン」のメジャーがあるが、「全米プロ」は日本の成績次第で招待される可能性は十分だ。
「全米オープン」は昨年、アマチュアとして出場して予選落ち。
「早くこういう世界に身を置きたい」と、プロになる決断をするきっかけとなった大会でもある。
もともと世界アマチュアランキング1位としての出場資格を持っていたが、プロ転向で喪失。
5月24日か6月7日のどちらかの時点で世界ランキング60位以内に入るか、最終予選を突破すれば出場できる。
確実に五輪切符を手にするためには、どちらも出場してポイントを稼ぎたいところだ。

日本の男子ツアーは、試合数がなかなか増えず、苦戦が続いている。
東京五輪も、前述のように先の見えない状況が続き、落ち込みがちなアスリートも少なくない。
だが、どんな苦境にあっても、金谷が自分を見失うことはなさそうだ。
プロ転向から間もない頃、すでに「人生、常に進み続けていたいと思います」と、気負うこともなく当たり前のように前向きな言葉を口にしていたからだ。
将来的には大きな舞台での活躍を目標にしている。
現代のメジャーと言えば、松山の勝った「マスターズ」と「全米オープン」「全英オープン」「全米プロ」の4試合。
金谷は、そのすべてで勝つこと、いや、出場するすべての試合で勝つという気持ちを抱いている。

「どれが、だと1つしか勝てない。結果とかじゃなく、どれも取る気持ちでやりたいと思っています。とにかく出る試合全部で優勝したい」

この意気込みを原動力に、日々、止まらずに進み続けているのが金谷拓実だ。

ツアーの試合数が増えなくとも、たとえ五輪ができないようなことがあったとしても、金谷は松山とともに、日本のゴルフを支えていく核になっていくに違いない。

Text/Junko Ogawa

小川 淳子

東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。

現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。

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