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【世界のゴルフ通信】From USA 大学スポーツ畑で辣腕を振るってきたモリー・マクー・サマーン氏がLPGA新コミッショナーに就任

LPGA新ツアーコミッショナー誕生

大学スポーツ畑で辣腕を振るってきた女性がLPGA新コミッショナーに就任

Photo/Maddy Pryor, Princeton University

2019年11月、カレッジフットボール誕生150周年記念とNFL誕生100周年記念を祝って、ダラス・カウボーイズVSニューヨーク・ジャイアンツのNFLの会場にて。右から2番目が当時プリンストン大のアスリートディレクターだったモリー・マクー・サマーン氏。

モリー・マクー・サマーン氏は、かつてプリンストン大のトップ学生アスリートの一人として知られた人物で、卒業後もサッカーやアイスホッケーの選手として活躍した。長年に渡り、スポーツの発展に貢献。

新コミッショナーは敏腕“体育会系”

LPGAツアーは、マイク・ワン氏の辞任で新しいコミッショナーを探していたが、ついに決定したと発表があった。
スポーツイベント運営経験を持ち、大学時代にスポーツ経験のある、ゴルファーとしても優秀な女性、モリー・マクー・サマーン氏だ。
彼女に足りないものがあるとすれば、プロゴルフ界での知名度だ。

11年間務めたLPGAを去り、全米ゴルフ協会(USGA)のCEOとなったマイク・ワン氏の後任として、5月にLPGAの第9代コミッショナーに就任した彼女を知る者は、ゴルフ通の中にもほとんどいないだろう。

ワン氏の後任は責任重大だ。
何しろ彼は在任中、女子ゴルフ界に多大な貢献をし、試合数や賞金額を増やして、LPGAの地位を引き上げた人物である。
果たしてサマーン氏は、さらなる前進を遂げられるだろうか。

彼女は、大学の運営側として、アイビーリーグの名門・プリンストン大学でアスレチックディレクターを務め、資金調達をはじめとする多くの職務を担当してきた。
スポンサーとの協力や収益の確保は避けて通ることができないため、このキャリアは今後の新しい業務のカギとなるだろう。

彼女は、大学時代にアイスホッケーとサッカーをしていたので、プロ経験はなくても、女性アスリートが置かれている苦境に共感することができる。
ゴルフが得意であるという点も重要だ。

LPGAは就任発表に際して、「モリーは、女性の人生を変えてくれるゴルフの力を熟知している。価値観を重視するリーダーとして複雑な状況の管理、チーム文化の構築などのスキルを持った人物だ」という声明を発表している。

LPGAの殿堂入り選手のジュリ・インクスターは、選考委員の一人として彼女を選んだ。

「こういう言い方は適切ではないかもしれないが、モリーはスポーツ好きで、根っからの『体育会系』。
私もスポーツが好きだし、この仕事に本気で取り組むには、そういう人でないと務まらないと思う。
モリーは、大きな運動部門でアシスタントディレクターを務め、男性の世界に身を置いてきた。
またモリーはゴルフ界のことをよく知っていて、男性とプレーし、協力してLPGAを前進させていくための術を心得ている」

Photo/Denise Applewhite, Princeton University

2019年のプリンストン大・クラスデーセレモニーで、スピーチをするサマーン氏。

「スポーツには世界を変える力がある」

サマーン氏は、11歳の時にゴルフを始めた。
両親はゴルフをしていなかったが、ゴルフを始めた当時の話は、多くの人の語り草になっている。

「TVで女子プロたちのプレーを観ていたのがきっかけで、プロゴルファーになろうと思ったのですが、それには地元のクラブに入会しなければならない。
ニューヨーク州イサカでは、ジュニア会員として入会するのに夏期は45ドルかかったんです。
両親は、毎朝8時にコースまで送り届けてくれました。
そこで私は、さまざまな背景を持った人たちと一日中プレーしたんです」

プリンストン大学卒業後は、ニュージャージー州にあるローレンスビルスクールで、運動部門のアシスタントディレクター、入学試験事務局の副局長、女子のアイスホッケーとサッカーチームのコーチを務める。
そして、チェルシーピア・マネジメントで19年間働いた後、2014年にプリンストン大学に戻って、運動部門ディレクターに就任した。

「私は、スポーツには世界を変える力があると強く信じています。
今LPGAは、女性のスポーツ、女性のリーダーシップ、そして社会の多様性や平等などをめぐる取り組みに対して前向きなエネルギーとともに、自らのプラットフォームを良い方向へ変化させるのに利用する絶好の機会を迎えていると思います」

新コミッショナーは、スポーツや人生において性別が障害となってはならないという信念に基づきながら、女性にゴルフを奨励するLPGAの素晴らしい取り組みを継続していく。

ワクチン接種が進む米国
トーナメント会場も接種会場に

Photo/James Colgan

「メモリアルトーナメント」の会場内に設置された「ワクチン接種会場」。観客は観戦しながら、ジョンソン&ジョンソン製のワクチンを打つことができた。

トーナメント会場がワクチン接種会場に

オハイオ州ダブリンで開催された「メモリアルトーナメント」では、新型コロナウイルスのパンデミックの中でゴルフが再開されて以来、最多のファンが詰めかけた。
会場には通常の約75%の入場が許可され、多くの観客が集まったが、トーナメントの一環として、新型コロナウイルスのワクチン接種を希望者に対して無料で実施した。
このワクチンは、ジョンソン&ジョンソン社製のもので、1回の接種だけで、2、3週間後にはウイルスを予防できるとされている。

一方、ジョン・ラームが54ホールを首位で通過したところで、新型コロナウイルスの陽性反応が出たというニュースがあった。
発症こそしていなかったものの、ウイルス感染者との濃厚接触があったことから、1週間検査を受け、ソーシャルディスタンスを保つことを求められた。

ラームは大会中、5日間連続で陰性だったが、土曜日の第3ラウンドで64をマークした後で陽性反応が出たため、棄権しなければならなくなった。
だが、その後24時間以内の2回の検査で陰性が証明され、晴れて「全米オープン」に出場、優勝することができたのである。

Photo/Getty Images、PGA TOUR

Text/Bob Harig
ボブ・ハリグ(アメリカ)

ESPN.comシニアゴルフライター。25年以上に渡り、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

Photo/Getty Images、PGA TOUR

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