• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. 世界のゴルフ通信 >
  3. 【世界のゴルフ通信】From USA番外編「ゴルフの50年後...

【世界のゴルフ通信】From USA番外編「ゴルフの50年後を見据えて」マイク・ワン全米ゴルフ協会CEO

ゴルフの50年後を見据えて
ゴルフには潜在的な需要があることをコロナが証明してくれた

―マイク・ワン 全米ゴルフ協会CEO―

©USGA

2021年7月に全米ゴルフ協会(USGA)のCEOに就任したマイク・ワン氏。2010年から長年に渡り、LPGAツアーのコミッショナーを務め、女子ゴルフを盛り上げてきた手腕を買われた。

R&Aと並び、世界のゴルフを統括する全米ゴルフ協会。そのCEOに就任したマイク・ワン氏がアジアのゴルフメディア向けに記者会見を行なった。
彼の就任により、世界のゴルフはどう変わっていくのだろうか?

©USGA

Mike Whan(マイク・ワン)
長年全米ゴルフ協会のCEOを務めたマイク・デービス氏に代わり、第8代CEOに就任。
以前はウイルソンやテーラーメイド 、ホッケー用品の会社に勤務したことがある。
2010年以降はLPGAツアーのコミッショナーを11年間務め、数々のスポンサーを招致。
女子ゴルフの活性化に貢献した。

今から100年後のゴルフを考える。
適正な値段で楽しくプレーできているかどうか・・・

― 今まではLPGAのコミッショナーとして活躍されてきましたが、USGA(全米ゴルフ協会)の使命はなんだと思いますか?

USGAはゴルフ界の信頼できるパートナーであり、ゴルフの発展と促進の手助けのためなら、どんな役割も果たす存在だと考えています。
USGAがいかにいろいろな方法でゴルフに携わっているか、ということにビックリしていますよ。僕的にUSGAの文字を解釈すると、
U(Unite・結びつける)、
S(Showcase・見せる)、
G(Govern・統括する)、
A(Advance・促進させる)とも考えられますね。

我々には世界中のゴルフを結びつける上で重要な役割があると考えています。
世界規模のハンディキャップのシステムや、コースレーティングなどを通じて、世界中のどこででも、誰もがゴルフができるようにしています。
ゴルフはとてもユニークなスポーツ。
我々は優れたジュニア、アマチュア、プロ、シニアとあらゆるゴルファーのために舞台を提供する責任があると考えており、世界最高の選手たちのために戦いの舞台を作り、14試合を開催しているのです。

― R&Aとも協力し合って、ということですよね?

そうです。
R&Aとともにゴルフを統括する責任があります。
時々私たちはゴルフ界の警察だと言われます。我々も警察的な立場にいることが好きなわけではありませんが、ゴルフというスポーツが今日、明日に良い状態でなくても、孫の代でもっと良いゴルフを経験できるように真剣に考えなければならない責任があるんです。
私は毎朝、職場に行く車中で「今から30年後、50年後、70年後のゴルフはどうなっているんだろう?」と考えながら運転しています。
そんな人はほとんどいないでしょうけどね。

― USGAでの最優先事項は、どんなことですか?

どのリーダーにも強みと弱点があり、私は他のリーダーよりも弱点がいっぱいあると思いますが、私自身にとっても、チームメンバーにとっても成長させてくれるようなチームを作ることですね。
「放し飼いのリーダーシップ」といって、スーパースターのような存在を探し、彼らに明確な方向性を示して好きなように動いて欲しいと思っています。
カゴの中に閉じ込めず、小さいことにこだわらないようにさせるんです。
素晴らしい才能があって、共通の目標を持つと、たいていその才能によって、自分が思っているよりもはるか上のレベルまで押し上げてくれるものです。
私自身よりももっと大きな夢を抱いている人を見つけて、そういう人に私の周りにいて欲しいと思っています。
そして、怖いと思うくらい大胆なアイデアを出して欲しいですね。

―コロナのパンデミックについてはどう思いますか? パンデミックから前進するためのカギは何でしょうか?

25年にわたってこの業界に携わり、ゴルフに関していろいろ調査してきましたが、常に「潜在需要」という言葉が頭にありました。
本当はプレーしたいけど、実際はやっていないという人たちのことです。
毎年調査結果を見ただけでは、それが本当なのかわかりませんでしたが、コロナが教えてくれました。
その潜在需要は本当にあるのだと……。
時間と機会があれば、ゴルフに興味がある人がいることがわかったんです。
これは本当に個人的な話ですが、2020年はコロナが私のメンタルヘルスを助けてくれたと思っています。
3~5月までは、LPGAで作り上げてきたこと全てに挑戦が強いられ、かなりのお金を使うことになりました。
コロナがいつまで続くかわからなかったので、スポンサーには離れて欲しくなかった。
でも彼らは自分たちの事業がうまくいってなければ、スポンサーを務めることを懸念することは理解していました。
今はビジネスも戻ってきて、ゴルフも戻ってきましたが、それはゴルフを失わないように一生懸命に取り組んだからです。
2022年には今ほどゴルフが支持されないかもしれないし、ゴルフ場に行列ができるようなこともないかもしれません。
それでも2020年以前よりゴルフが盛んな環境にはなっていることでしょう。

― アジア諸国で、USGAが幅広く拡大していくために必要なことはなんですか?

私はある意味「国際的な人間」なんです。
ミスター・ワールドワイド。私の人生で、US(アメリカ)というタイトルがついた仕事に就くのは、実はこれが初めてなんですよ。
私は毎朝、海外のことを考えて時間を過ごしていますが、我々にとって大事なことは、我が国の最高のトーナメントを開催し、世界から人々を取り込むことなんです。
それはトーナメントに出場する選手だけでなく、テレビの視聴者も……。
朴セリがLPGAツアーの普通の試合に優勝しても、「全米女子オープン」で優勝するほど人生は変わらないし、その国のゴルフ事情も変わらないでしょう。
私はこうしたシーンを何度も見てきました。
若い選手がLPGAツアーにやってきますが、彼女たちはまず「今年の全米女子オープンはどこで開催するんですか?」と聞いてくるんです。
「全米女子オープン」で優勝することは女子ゴルフにおいて、最大のことなんですよね。
「全米女子オープン」を韓国や日本、台湾でやるかと言われれば、その可能性はないですが、こうした国々から選手をもっと招致することについては大いにあり得ます。
「全米女子オープン」を世界中で中継し、最高のナショナルオープンとして試合を開催し続け、この試合に出て、優勝したいという選手たちにもっと門戸を広げたいと思っています。

― 現在「アジア・パシフィック・アマチュア選手権」はR&Aとオーガスタナショナルが大きな支援をしながら開催され、優勝者は「マスターズ」と「全英オープン」に出場することができますが、USGAは優勝者を「全米オープン」に将来、出場させるなどの考えはありますか?

可能性はありますね。
USGAの一員となってはっきりとわかったことは、我々のオープン競技(全米オープン、全米女子オープンなど)ほど世界的に開かれたオープン競技はないんです。
世界中の誰でも予選会を通過すれば、世界で最も素晴らしいオープン選手権の一つに出場できるのです。

Text/Eiko Oizumi Photo/USGA

関連する記事