最強の欧米ツアーがコラボ
欧米ツアーの境界線をなくした共催試合がもっと増える?!
左端は米PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン、右端はヨーロピアンツアーCEOのキース・ペリー氏。
欧米の選手たちがシード権、賞金を両ツアーで獲得できるチャンス
2021年7月に開催された「abrdnスコティッシュオープン」で優勝したISPSアンバサダーのミンウー・リー(豪州)。姉はLPGAツアーのミンジー・リー。
ついに実現!欧米両ツアーの共催試合
PGAツアーと欧州ツアーが両ツアーのスケジュール上において初めて、共催試合を開催することになった。
これにより米ツアーの選手はもっと欧州で戦うようになるだろうし、欧州の選手が米ツアーのシード権を獲得するという場合もあるだろう。
以前は、世界ゴルフ選手権(WGC)の試合とメジャーのみが、両ツアーでカウントされていた。
だが今後は、欧米両ツアーでカウントされる試合が2週間に限定されているものの、3試合(うち2試合は同週開催)がPGAツアーと欧州ツアーの両方でカウントされる。
「全英オープン」の前週に開催される「ジェネシス・スコティッシュオープン」と「バルバソル選手権」、そして「全英オープン」と同じ週に開催される「バラクーダ選手権」が、今のところ欧米ツアーの共催試合となっている。
こうした動きは、2020年の秋に両ツアーの間で締結された「戦略的提携」の一環であり、今後もさらなる協働が期待されている。
PGAツアーのコミッショナー、ジェイ・モナハン氏と欧州ツアーのキース・ペリーCEOは、「これは第一歩。この提携からもっと多くのことが起こりますよ」と語っている。
しかしながら、この提携の結果、これら2つのツアーが共催するWGCの2試合を失った。
通常は年間を通じて4試合が行なわれていたが、2021年秋に中国で開催予定だった「HSBCチャンピオンズ」が中止になったことにより、米ツアーの2021~22年のスケジュールではWGCイベントは1試合のみとなった。
なお、複数回の名称変更を経て2017年にメキシコシティー開催となった「WGC・メキシコ選手権」は、132人の選手が出場できるPGAツアーの通常の試合「メキシコオープン」となり、4月下旬に開催される。
ニューヨークエリアの試合がなくなる?
フェデックスカップの年間ボーナスに68億円ほどを費やしているフェデックスは、「フェデックスカップ選手権」として知られるプレーオフシリーズの初戦のスポンサーを務めることになっている。
つまり「ノーザントラスト」はもはやニューヨークやボストンで開催しないということだ。
モナハンは、「PGAツアーは常にニューヨークとボストンに重点を置いており、今後、『全米オープン』はザ・カントリークラブ(ボストン郊外)、『ライダーカップ』はニューヨークのベスページ(2025年)で開催される。
また全米ゴルフ協会や全米プロゴルフ協会の多くの試合も開催が決まっている」と述べた。
「つまり、プロゴルフはこれからもこの2大エリアで多くの試合を開催することになる」
モナハンは「ノーザントラスト」がなくなったことで、これに代わる試合を新たに作りたいと考えている。
フェデックスカップ・プレーオフが2019年から3試合に減らされた際、「ノーザントラスト」はもともとニューヨークとボストンで交互に行なう予定になっていたのだ。
なお、プレーオフ2試合目の「BMW選手権」は2022年、デラウェア州ウィルミントンで開催されることになっている。
2022年のスケジュールは7月に大きな変更点あり
2021~22年のツアーは、「ライダーカップ」の前週の「フォーティネット選手権」(カリフォルニア州ナパ)から始まった。
アジアなどで行なわれる3連戦の初戦「CJカップ」は、再び米国のラスベガスで開催され、タイガー・ウッズが2019年にPGAツアー82勝目を飾った「ZOZOチャンピオンシップ」は昨年、カリフォルニア州で開催されたが、今年は日本で開催。松山英樹の優勝に終わっている。
オフを挟んで、1月にハワイで開催の「セントリートーナメント・オブ・チャンピオンズ」からツアーが再開されるが、2月は、ロサンゼルスで開催される「ジェネシスインビテーショナル」で西海岸の試合が終了すると、「プレーヤーズ選手権」を含む4試合のため、フロリダに移動する。
「WGCデル・テクノロジーズマッチプレー選手権」は現存する2つのWGCイベントの1つだが、マスターズの2週間前、「バルスパー選手権」に続いて開催される。
そして長い間、「全英オープン」の前週に開催されてきた「ジョンディアクラシック」は、「全英オープン」の2週間前に開催される。
また今年の7月上旬に開催された「ロケットモーゲージクラシック」は、「ウィンダム選手権」での最後のレギュラーシーズンに先立って7月下旬に開催となる。
新しく共催される「スコティッシュオープン」の出場選手は、PGAツアーと欧州ツアーのメンバーで半々だ。
また、PGAツアーは資金を提供することで「アイリッシュオープン」の強化を支援しており、これによって財源は2倍の600万ドルになる。
別の共催試合である「バルバソル選手権」と「バラクーダ選手権」はそれぞれ、50人の欧州ツアーの選手が出場できる。
これはつまり、欧州ツアーの選手でもPGAツアーのシード権を得る機会があるということだ。
さらにもっと重要なのは、欧州の選手たちも米国でプレーしながら欧州ツアーの「レース・トゥ・ドバイ」(賞金ランキング)に加算される賞金を獲得できる点にある。
モナハンは1年を通じて賞金が3500万ドル増額されると語っていた。
今のところ、「提携」は限定的だが、より多くの試合が将来的には共催となることから、限定的な状況も変わっていく可能性がある。
Text/Bob Harig
ボブ・ハリグ(アメリカ)
ESPN.comシニアゴルフライター。25年以上に渡り、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。
Photo/Getty Images