• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. タイガー・ウッズを超えた
    コリン・モリカワ

タイガー・ウッズを超えた
コリン・モリカワ

プロ3年目の24歳が「全英オープン」優勝で歴史的快挙!

©️R&A via Getty Images

現在世界ランク3位の日系アメリカ人、コリン・モリカワ。
彼は2019年にプロ入りして、わずか2年しか経っていないが、今年最後の男子メジャー「全英オープン」でメジャー2勝目を挙げ、歴史的快挙を達成した。
彼は2019年にプロ入りして、わずか2年しか経っていないが、今年最後の男子メジャー「全英オープン」でメジャー2勝目を挙げ、歴史的快挙を達成した。
これは、全盛期のタイガー・ウッズですらなし得なかった記録。
いったいどんな快挙だったのか?

コリン・モリカワ(アメリカ)
1997年2月6日生まれ。カリフォルニア州ロサンゼルス出身。日系4世で、アマチュア時代から世界アマチュアランク1位になるなど大活躍。2019年にプロ入りし、既にメジャー2勝(全米プロ、全英オープン)、PGAツアー5勝を挙げている。予選落ちの少ない選手として知られている。 ©️R&A via Getty Images

「全英オープン」初出場で逆転優勝 

 2019年6月にプロ転向した24歳のコリン・モリカワが、タイガー・ウッズもなし得なかった偉業を達成した。

 ドーバー海峡付近のロイヤル・セントジョージズGCで、2年ぶりに開催された今年最後の海外男子メジャー「全英オープン」。優勝したのは、昨年「全米プロ」で初出場・初優勝を飾ったコリン・モリカワだ。3日目を終えて首位のルイ・ウーストハイゼンに1打差の2位につけていた彼は、最終日、ウーストハイゼンと共に最終組でラウンドし、4バーディ、ノーボギーという見事なプレーで逆転優勝。例年、「全英オープン」では「1日のうちに四季がある」と言われるほど悪天候や寒さに見舞われることも多いが、今年はそれらと無縁だったことも「全英」ビギナーの彼には幸いしたようで、4日間60台の好スコアをマーク。実は「全英オープン」で4日間60台でプレーして優勝した選手は過去、グレッグ・ノーマン(1993年)、ニック・プライス(1994年)、タイガー・ウッズ(2000年)、ヘンリク・ステンソン(2016年)、ジョーダン・スピース(2017年)しかおらず、モリカワで6人目となった。

「こうしてクラレットジャグを手にし、1年間自分のそばにキープできるなんて、本当にワクワクするね」

 さて、冒頭の「タイガーもなし得なかった偉業」とは、昨年優勝した「全米プロ」と同様、彼は「全英オープン」初出場で初優勝を遂げたことだ。2つのメジャーで初出場、初優勝を遂げた選手は、モリカワ以外に過去、誰もいない。タイガーですら、プロ転向2年目の「マスターズ」で優勝してから、メジャー2勝目を挙げたのは2年後の「全米プロ」である。昨年、イギリスはコロナパンデミックで大会開催を中止したため、モリカワにとって今年の「全英オープン」が初出場だった。この記録は当分破られることはないだろう。そして、モリカワ自身も残りの2メジャー「全米オープン」「マスターズ」については、既にデビューを果たしているので、これ以上記録を塗り替えることもない。

前回(2019年)優勝者のシェーン・ローリー。「全英オープン」の優勝トロフィーであるクラレットジャグをR&Aのマーティン・スラマーCEO(左)に返却した。 ©️Mercedes Benz
2011年に「全英オープン」がロイヤル・セントジョージズで開催されたときは、ダレン・クラークが優勝。 ©️R&A via Getty Images
「全英オープン」のロゴを大胆にあしらったマスク。ゴルフ好きには垂涎の商品だ。 ©️Getty
アン王女(左)もロイヤル・セントジョージズを訪問。現地で行なわれていたティーチングプロによる若者へのゴルフレッスン風景を視察。 ©️Getty

ショット力はツアーでも1、2位を誇る
モリカワの課題は”ショートゲーム”

©️R&A via Getty Images

ボビー・ジョーンズと肩を並べる大記録

また、今大会の優勝で他にもレジェンドたちに肩を並べる記録を樹立しているので、いくつかご紹介しておこう。

 彼は過去100年のゴルフ史の中で25歳前にメジャーで複数回優勝を果たしている選手の仲間入りを果たしている。ジーン・サラゼン、ボビー・ジョーンズ、ジャック・ニクラス、セベ・バレステロス、タイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、ジョーダン、スピースに続き、8人目だ。

 また1900年以降、「全英オープン」で初出場、初優勝を遂げた7人目の選手となっている。過去にはジョック・ハチンソン(1921年)、デニー・シュート(1933年)、ベン・ホーガン(1953年)、トニー・レマ(1964年)、トム・ワトソン(1975年)、ベン・カーティス(2003年)がいる。

 そして、25歳前の選手でメジャーの最終日に優勝争いをし、逆転優勝を果たしているのは、球聖ボビー・ジョーンズと帝王ジャック・ニクラス、そしてコリン・モリカワの3人だけだ。これもまた憧れのタイガー・ウッズが果たせなかった快挙である。この調子で今後の長いゴルフ人生を歩んでいけるとしたら、タイガー・ウッズのメジャー15勝、いやジャック・ニクラスのメジャー18勝記録も塗り替えることができるかもしれない。

 風貌は至って普通の爽やかな日系アメリカ人で、我々日本人から見ると親近感を抱きやすい選手だ。だが、そんな彼はパーオン率ではツアーで2位を誇り、ショットの精度の高さには定評がある。非常に安定したプレーぶりで予選落ちの回数は極端に少ない。過去のレジェンドたちと並ぶ記録を、わずか2年ほどですでにいくつか樹立しているのだから、すごいことである。

 持ち前の才能と強い精神力、本人の弛まぬ努力によって、世界の大舞台でもサラリと優勝を勝ち取っているモリカワ。今大会の優勝でフェデックスカップ(レギュラーシーズン)1位に浮上し、世界ランクはジョン・ラーム(1位)、ダスティン・ジョンソン(2位)に次ぐ第3位に浮上した。非常にパッティングが苦手だという彼だが、「全英オープン」ではそんなことを感じさせないすばらしいパフォーマンスを披露し、勝負のパットをいくつも決めた。グリーン回りの小技のパフォーマンスを改善できれば、タイガー・ウッズのように圧倒的な強さで勝利を重ねることができるだろう。

©️R&A via Getty Images

優勝スピーチでは、家族や友人、キャディ、ガールフレンドたちへ感謝の意を述べたモリカワ。その後大勢の観客に対して「皆さんも家族や友人と一緒にここに来てると思うが、その人たちに感謝の言葉をかけてください」と語り、彼の人間性に対して称賛の拍手が沸き起こった。

©️R&A via Getty Images

ツアーでのショット力はピカイチで、パーオン率2位のコリン・モリカワ。彼のストロークゲインドパッティングは170位と極端にパットが苦手なようだ。

全英オープン

2021年7月15日〜18日
ロイヤル・セントジョージズGC
(イングランド)
7189ヤード・パー70

ロンドンの中心地から東へ100キロ、ドーバー海峡にほど近いサンドイッチに位置する「ロイヤル・セントジョージズGC」。南イギリス唯一の「全英オープン」開催地で、 過去15回行なわれている。

Text/Eiko Oizumi

関連する記事