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“メジャー2位グランドスラマー”
なぜウーストハイゼンは優勝できないのか?

©️R&A via Getty Images

Louis Oosthuizen
ルイ・ウーストハイゼン(南アフリカ)
1982年10月19日生まれ。
2010年「全英オープン」で優勝し、メジャー1勝を挙げ、世界のトッププロの仲間入りを果たしているが、いまだにアメリカでの優勝はない。全メジャーにおいて2位に入賞している。


 ウーストハイゼンが、メジャーでまた優勝できなかった。3日目を終えて2位のコリン・モリカワと1打差の首位に立っていた彼は、最終日、最終組で回り、モリカワに逆転優勝を許し、自身は3位タイに終わった。今年は5月の「全米プロ」でフィル・ミケルソンに2打差の2位タイ、6月の「全米オープン」ではジョン・ラームに1打差の単独2位に終わっている。ここまで安定してメジャーで上位の成績を叩き出すのは、至難の業だと思うが、ウーストハイゼンは過去、全てのメジャーで2位の経験がある。いわゆる「メジャー2位グランドスラム達成者」だ。6月の「全米オープン」で自身6度目の2位を経験したが、このとき彼は「勝てなかった。また2位だ。フラストレーションが溜まるし、ガッカリしている。いいゴルフをしているのに優勝できない。優勝するには不十分ということだね」と語っていた。

 メジャーになると常に上位にいるイメージの強い選手だが、彼のゴルフの真骨頂はショートゲーム、特にパッティングのうまさにある。ストロークゲインド・パッティングでは1位、平均スコアは4位である。決して飛ばし屋ではないし、アイアンショットの精度が高いわけではないが、「スコアをまとめる力」は他の選手よりも抜きん出ており、特にメジャーのような難度の高いセッティングになると、実力を発揮するタイプのようだ。彼自身も次のように語っている。

「恐らくタフなセッティングの方が普段よりも集中できるから、いいんじゃないかな?」

 普段の試合、つまりPGAツアーやヨーロピアンツアーよりもメジャーの方がいい成績が出る、と言うのは、技術面よりもメンタル面での要素が大きいようだ。そういう意味ではブルックス・ケプカとスタイルが似ているのかもしれない。しかしそれにしても、2010年にセント・アンドリュースで開催された「全英オープン」で華々しく優勝して以来、世界の舞台で活躍し、「プレジデンツカップ」の常連でもある彼にしては、米国での優勝は皆無。欧州ツアーでも、さほど大きな試合で勝っていない(ほとんどが母国南アフリカでの試合)というのは、世界のゴルフの七不思議の一つと言ってもいいくらいだ。

 メジャーで2位は6回目だが、上には上がおり、ジャック・ニクラスは19回、フィル・ミケルソンは11回を記録している。その他、アーノルド・パーマー9回、サム・スニード8回、タイガー・ウッズ、トム・ワトソン、グレッグ・ノーマンらは7回だ。ウーストハイゼンと同様、6回をマークしている選手には、南アの大先輩ゲーリー・プレーヤー、アーニー・エルスの他、ベン・ホーガン、バイロン・ネルソン、ハリー・バードンとレジェンドばかり。ウーストハイゼンのツアー優勝回数を考えると、不思議なくらいメジャーでの好成績が光る。以前、ニクラスが「メジャー優勝は18回だが、2〜3位はその倍だ。それくらい2位以下を積み重ねないと勝てないんだよ」と語っていたが、その言葉を心の支えに今後も優勝目指して頑張って欲しいものである。

©️R&A via Getty Images

ツアープロ仲間からも「美しいし、シンプルなリズムがいい」と絶賛されているウーストハイゼンのスイング。

Text/Eiko Oizumi

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