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日本人・梶谷翼も優勝!民族を超えた活躍・話題が席巻したオーガスタ

日本人・梶谷翼も優勝!民族を超えた活躍・話題が席巻したオーガスタ

松山英樹の「マスターズ」優勝に先駆け、その約1週間前には第2回「オーガスタ女子アマ」で梶谷翼が優勝。

今年は日本人2人がフレッド・リドリー委員長から優勝トロフィを授与されるという、歴史的快挙が達成されたが他にも民族を超えた話題の多いオーガスタだった。

 

第2回 オーガスタ女子アマ
2021年3月31日~4月3日/チャンピオンズリトリートGC(予選)、オーガスタナショナルGC(決勝)

優勝・梶谷翼(兵庫・滝川第二高)

ⒸAugusta National GC

プレーオフの末、優勝した17歳の梶谷翼(兵庫・滝川第二高)。オーガスタナショナルのフレッド・リドリー委員長(左)から優勝カップを授与された。

 

©Getty Images

キャディのチャド・ラムズバッグ氏は、2019年大会に出場し3位タイに入賞した安田祐香や、「マスターズ」にアマチュアとして出場した金谷拓実のキャディを務めたこともある。

 

©Getty Images

「マスターズ」の始球式で史上初の黒人オナラリースターターを務めたリー・エルダー(左)。球は打たなかったが、ジャック・ニクラス、ゲーリー・プレーヤーのショットを見守った。

日本人男女2人がオーガスタで優勝する快挙

今から10年以上前、オーガスタナショナルGC委員長を務めていたビリー・ペイン氏は、その強力なブランド力を活かして、世界全体のゴルフの質を向上させたいと考えていた。

彼はアジアこそ、トップレベルのアマチュアの試合をやることで最も影響力があると考え、「アジア・パシフィックアマ」を開催することにしたのだ。

松山英樹は2回、アジアの大会に優勝し、アマチュアとして「マスターズ」に出場している。 

2009年にペイン氏は、「優秀なゴルファーを発掘し、ほかの子どもたちが、ああいう選手になりたいと思うようなヒーローを生み出すことで、子どもたちがゴルフに興味を持つようになると考えた」と語っていたが、その考えは正しかった。

初出場から10年目の今年、松山はグリーンジャケットに袖を通し、新たな歴史が刻まれることになったのである。

松山の優勝に先駆けて、第2回「オーガスタナショナル女子アマ」(ANWA)では、日本の17歳のアマチュア、梶谷翼が並み居る優勝候補を抑えて見事優勝を果たした。

梶谷は、オーガスタナショナルでイーブンパーを記録。
他のコースで行なわれた予選2ラウンドとオーガスタナショナルでの最終1ラウンドを合わせた54ホールは通算1オーバーで終了。
米国ウェイクフォレスト大のエミリア・ミリアッチョとのプレーオフを制し、優勝を決めた。

梶谷がANWAで優勝を決めた土曜日、松山はテキサス州サンアントニオで開催されていたPGAツアーに出場していたが、この知らせを耳にすると、梶谷の勝利は、日本とアジアのゴルフ界に大きな影響を与えるだろうと大変喜んだ。

「梶谷さんは見事だった」と「マスターズ」第1ラウンドを終えた松山は言った。

「梶谷さんのプレーを見ることができたら良かったが、僕はテキサスでプレーしていたので、彼女のプレーを見ることはできなかった。素晴らしい! 彼女に続いて、日本の誇りになれるよう頑張りたい」

©Getty Images

「マスターズ」では、松山英樹が優勝し、大会史上初の日本人チャンピオンが誕生。早藤キャディと抱き合ってお互いを称えた。

民族を超えた偉業を称えたオーガスタ

ANWAでの梶谷の活躍と、松山の「マスターズ」優勝の他、今年のオーガスタでスポットライトを浴びた人物がもう一人いた。
1975年に黒人ゴルファーとして初めて「マスターズ」に出場したパイオニア的存在のリー・エルダーが、マスターズの名誉スターターとして記念すべき始球式に姿を見せた。
86歳のエルダーは体調が優れず、実際にショットを打つことはできなかったものの、「マスターズ」3勝のゲーリー・プレーヤーと、史上最多の6勝を記録しているジャック・ニクラスがショットを放ち、エルダーが立ち上がってファンに手を振ると、観客席から湧き上がった大きく温かな喝采が何分も続いた。
オーガスタナショナル委員長のフレッド・リドリー氏は、始球式で「リー・エルダーは、ゴルフは全ての人のものであるということを教えてくれた」と語った。

29歳の松山は、幼い頃は野球選手がヒーローだったと言うが、今度は自分が日本の若者にとってのヒーローとなった。

「自分が何かを成し遂げることで、ほかの人にもできるということ、やってやる! という気持ちがあれば成し遂げられるということを示す手本になれればと思う」

今年の表彰式では新型コロナウイルスのため、椅子が4脚しか置かれていなかった。
そのうちの2脚に、D・ジョンソンと松山、もう1脚には、オーガスタナショナルGCの名誉会長であるビリー・ペイン氏が座った。
ペイン氏は、アジアでのアマチュアトーナメント開催に尽力し、松山の「マスターズ」での偉業達成の後押しをした人物である。
その日の夜、クラブハウスで行なわれた勝者の乾杯の席にもペイン氏の姿があった。その目には涙が浮かんでいた。今や、彼の夢は現実となったのだ。

 

梶谷 翼 一問一答

ⒸAugusta National GC

『タイガーからメッセージにビックリ!』

 

――プレーオフで優勝が決まったが、緊張感はあったか?

緊張もあったけど、それよりオーガスタを18ホール以上多く回れることがうれしかった。勝った瞬間、嬉しくて涙が出た。

 

――今回の優勝の意味は?

今回の優勝によって「全米女子オープン」や「全英女子オープン」に出場できるのは大きい。いろんな道が開かれた。

 

――日本人が2週連続で優勝

自分の優勝はそんなに意識していないが、松山さんはすごいと思った。自分も男子だったらいいのに、と思った。

 

――今後の目標は?

最終的には世界で活躍できる選手になりたいし、LPGAで1位になりたい。
日本のプロテストに合格し、しばらく日本でやってから海外に出るか、アメリカの大学に行って(あるいはゴルフ留学して)ゴルフをするか、アメリカでQTを受けるかという3通りの道があると思うが、今は気持ちが揺らいでいる。
アメリカにはいつ行こうか、と悩んでいる。今回の優勝で海外志向がますます強まった。

 

――男子プロのゴルフに興味がある?

PGAツアーは観ていておもしろい。
迫力あるし、カッコいいし、ああいうゴルフがしたいと思う。
好きな選手はローリー・マキロイ。
スイングがきれいで、身長はそんなに高くないけど飛距離も出て活躍しているから。
男子プロのアプローチのバリエーションとか、柔らかさを取り入れたい。

 

Text/Jeff Babineau

ジェフ・バビニュー(アメリカ)
元ゴルフウィーク誌編集長。ゴルフ取材を30年以上経て、現在フリーライターとして活躍。マスターズは25回以上取材経験を持つ。

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