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The MASTERS 2022 スコッティ・シェフラー あっという間に「マスターズ」優勝!

ツアー初優勝からわずか2ヶ月
初優勝以降、「マスターズ」までで6戦4勝で一気にチャンピオンに上り詰めた!

©️Getty Images

優勝

Scottie Scheffler
スコッティ・シェフラー (米国)

1996年6月21日生まれ(25歳)。190cm、91kg。テキサス大学出身。2017年「全米オープン」ローアマ。2018年プロ転向。PGAツアー4勝、欧州ツアー(DPワールドツアー)2勝。「マスターズ」直前の「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」で優勝し、世界ランク1位に。

左は2021年チャンピオンの松山英樹。

©️Getty Images

18番グリーン奥で見守っていたメレディス夫人がホールアウト後に熱いキスで優勝を祝福。

©Getty Images

最終日、最終ホールのシェフラーのティーショット。

スコッティ・シェフラー、あっという間にマスターズ優勝!

今年の2月の「WMフェニックスオープン」でツアー初優勝をしたのを皮切りに
「マスターズ」までの2ヶ月で3勝を挙げていた、世界ランクNO.1のスコッティ・シェフラー。
世界最強男の「マスターズ」初制覇の裏には、胃痛も伴う心の葛藤があった。

©Augusta National Golf Club

シェフラーの優勝を支えたキャディのテッド・スコット(右)。かつてババ・ワトソンの「マスターズ」2勝に貢献したベテランキャディだ。

世界ランク1位だからといって、メジャーで優勝するのは容易ではない。
いや、もしかしたらむしろ世界ランク1位の選手ほど、周囲からの重圧をハネのけて優勝するのは難しいのかもしれない。

過去「マスターズ」に世界ランク1位として出場し、優勝した選手はわずか4人しかいなかった。
イアン・ウーズナム、フレッド・カプルス、タイガー・ウッズ(2回)、ダスティン・ジョンソンである。
そして今年、新たにもう1人の選手が名を連ねることとなった。今年の2月に「WMフェニックスオープン」でツアー初優勝を遂げたばかりのスコッティ・シェフラー(25歳)である。

彼は2018年にプロ入りしたが、優勝するのは時間の問題と見られていた。メジャーの記録を見ても、2020~2021年の2年間で、2020年「全米プロ」4位タイ、2021年「全米プロ」8位タイ、「全米オープン」7位タイ、「全英オープン」8位タイと、マスターズ以外のメジャーにおいて既に一度はトップ10入りを果たしていた。
また昨年は、未勝利ながらも「ライダーカップ」にスティーブ・ストリッカーのキャプテン推薦で出場。
最終日のシングルス戦で、当時世界ランク1位だったジョン・ラームを撃破し、ポイント獲得に貢献したことが、彼の自信を大いに深めたと見られている。
世界ランク1位というポジションと、メジャー優勝の重圧ということで言えば、彼は3月末の「WGCデルテクノロジーズ・マッチプレー」で優勝した直後に1位になったため、逆にそのポジションならではの重圧を感じることなく、「マスターズ」に臨むことができたのかもしれない。

「試合の行方をコントロールできる位置に自分を置くことができてラッキーだった。他の人のことを心配する必要がなかったし、自分のことだけを考えて手堅いプレーをすればいいだけだった。ここで戦うことが夢だったが、優勝して一生ここに戻ってくることができるようになり、なんといっていいかわからないくらい嬉しい」

彼はタイガー・ウッズの大ファンで、「マスターズ」で優勝した時は、タイガーモデルのシューズとポロシャツ、アイアンセットでプレーした。
97年にタイガーが「マスターズ」で初優勝した時の映像をYouTubeで観ながら、いかにタイガーが集中力を切らさずにプレーしていたか、を学んだのだという。

「今日はタイガーの動画を思い出しながらプレーしていた。落ち着いて集中力を切らさないよう、自分のやるべきことをやる!でも、18番のグリーン上に上がった時、5打差ついていたので〝OK! この瞬間を楽しもう〟と思ったら、あんな結果(4パット)になってしまったよ(苦笑)。何はともあれありがとう、タイガー!」

©Augusta National Golf Club

最終日、キャメロン・スミスと最終組でプレーしていたシェフラー。優勝が決まった瞬間、パトロンたちの大歓声がオーガスタに鳴り響いた。

実はプレッシャーに弱い?
最終日の朝は大泣き

シェフラーは、190センチ以上の強い体躯に、一見プレッシャーなど感じないようなポーカーフェースの持ち主。
連日アンダーパーを積み重ね、最終日の最終ホールを迎えた時には2位と5打差がついていた状態であるから、「マスターズ」のようなメジャーですら、平常心でプレーしているのかと思った人も多いだろう。

しかし実際はかなりプレッシャーを感じていたようだ。

「週末の2日間、胃痛だったんだ。コースに来ると、胃痛も治まるんだけど、コースを出るとまた胃が痛くなってくる。コースにいても胃がよくなっているわけではないんだけどね。大学時代、「全米オープン」に何度か出た時も消化不良を起こしていた。僕は胃が弱いみたいだ」

また彼は優勝会見でこんな話も披露した。

「僕は今朝、赤ちゃんのように泣いていた。すごくストレスを感じてて、何をしていいかわからなかったんだ。妻のメレディスに〝僕はまだマスターズに優勝する準備ができてないみたいだ〟と伝えると、彼女は〝誰がそんなことを言ってるの?〟と言った。神がコントロールしており、主が自分を導いてくれるという話をしたんだ。そして今日は僕の番だ、と言い、もし今日82を叩いたとしても、何かしらの教訓になる、と。本当に長い朝だった」

「ゴルフの技術を授けてくれた神の栄光を讃えるためにプレーする」−スコッティ・シェフラー

©Augusta National Golf Club

タイガーの「マスターズ」初優勝の動画を観ながら、集中力を切らさないことの大切さを学習。優勝会見で笑顔で喜びを語るシェフラー。

シェフラーが競技に出る理由

シェフラーは非常に信仰心の厚い人間だ。
以前、ババ・ワトソンが「マスターズ」に優勝した時も「敬虔なクリスチャンとして、マスターズチャンピオンとして、いい人間になれるよう努力する」と語っていたのを思い出すが、シェフラーの宗教心はそれ以上のようだ。
彼の人生は、ゴルフも含めて全ての面において信仰に根付いており、ゴルフに関しては、「主が僕にゴルフの技術を授けてくださったから、それを主の栄光のために使おうとしている」と語っている。
また、ゴルフをする理由は「神の栄光を讃えるため」であり、自分のアイデンティティは、ゴルフのスコアではなく、神の栄光を讃えることにある」と明言しているのだ。

「マスターズで今日優勝しても、あるいは10打差で負けたり、他の試合で2度と優勝できなかったとしても、神は自分を愛しているし、何も変わらない」

シェフラーの「試合に出たいという気持ち」は、過去のゴルファーたちの記録を塗り替えたいとか、自分の人生のためではない。神のためである。
そう考えるからこそ、どんな状況になっても受け入れられる精神面の強さと、もっと上達しなければいけない、鍛錬しなければならない、という気持ちを持ち合わせることができるのかもしれない。

最終成績

2022年4月7日〜10日 Augusta National Golf Club 7510ヤード・パー72

優勝スコッティ・シェフラー−10270万ドル
2位ローリー・マキロイ−7162万ドル
3位シェーン・ローリー
キャメロン・スミス
−587万ドル
5位コリン・モリカワ−460万ドル
6位ウィル・ザラトリス
コーリー・コナーズ
−352万1250ドル
8位ジャスティン・トーマス
イム・ソンジェ
−145万ドル
10位キャメロン・チャンプ
チャール・シュワーツェル
E39万ドル
12位ダスティン・ジョンソン133万ドル
14位松山英樹
トミー・フリートウッド
222万5333ドル
23位セルヒオ・ガルシア313万8000ドル
27位ジョン・ラーム
ビクトル・ホブラン
411万1000ドル
47位タイガー・ウッズ134万3500ドル
48位アダム・スコット144万50ドル

《予選落ち》 金谷拓実、中島啓太、ジョーダン・スピース、ザンダー・シャウフェレ、ブライソン・デシャンボー

Text/Eiko Oizumi

大泉英子

「ゴルフ・グローバル」編集長。国内男子、海外ツアー取材をメインに、男・女・シニア、海外メジャー取材は100試合以上。全米ゴルフ記者協会、日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

Photo/Augusta National Golf Club,

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