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ジャスティン・トーマスが歴史的7打差を大逆転!全米プロでメジャー2勝目

PGA Championship
2022年5月19日〜22日 Southern Hills Country Club 7556Yards・Par 70

©Eiko Oizumi

表彰式後に記念写真に納まるトーマス一家。左からフィアンセのジリアンさん、ジャスティン(本人)、母のヤニさん、父のマイクさん。

歴史的7打差大逆転!ジャスティン・トーマス「全米プロ」でメジャー2勝目

優勝

Justin Thomas
ジャスティン・トーマス(米国)
1993年4月29日生まれ。ケンタッキー州出身。178cm、66kg。メジャー2勝、米ツアー通算15勝。2017年「全米プロ」で初メジャーV。2016~2017年シーズンは年間5勝を挙げ、フェデックスカップ総合優勝を飾った。世界ランク最高位は1位。父、祖父ともPGAのティーチングプロ。

©PGA of America

プロゴルファー世界一決定戦の「全米プロ」はオクラホマ州タルサのサザンヒルズCCで行なわれた。
2007年に開催された「全米プロ」では、タイガー・ウッズが同大会4勝目を飾ったが、今年は初メジャー優勝を狙う選手が多数リーダーボードの上位を占める展開となった。
タフなコンディションの中、勝利を収めたのは「全米プロ」2勝目を狙ったジャスティン・トーマスだった。

©PGA of America

勝利を決めた直後に、フィアンセのジリアンさんが祝福のキス。

メジャー初優勝に挑む若手との違いを見せた29歳の若き王者

©PGA of America

昨年の9月末から専属キャディとして契約を結んだジム・マッケイ(写真左)。25年間、フィル・ミケルソンのキャディを務め、数々の勝利に貢献した大ベテランだ。

©Eiko Oizumi

ジュニア時代からトーマスの親友であり、ライバルのジョーダン・スピースは「全米プロ」で優勝すればキャリアグランドスラムだが、今年もその偉業達成は叶わなかった。

©Eiko Oizumi

優勝直後にハグで優勝の喜びを分かち合った、父でありコーチのマイクさん(右)。

メジャー初優勝に挑む若手の名前が並ぶリーダーボード

2007年以来、15年ぶりにオクラホマ州タルサの名門サザンヒルズCCで開催された「全米プロ」。
2007年はタイガー・ウッズが「全米プロ」4勝目を飾ったコースとして記憶されているが、今年優勝したのは、タイガーの弟分的存在であり、家族ぐるみで親しい関係を築いているジャスティン・トーマスだった。

今年の「全米プロ」は3日目を終えた段階で、メジャー初優勝に挑む国際色豊かな若手選手の名前ばかりがリーダーボードの上位を埋め尽くしていた。
3日目を終えて2位に3打差をつけていたミト・ペレイラ(チリ)。
欧州ツアーで7勝を挙げているマシュー・フィッツパトリック(イギリス)。
メジャーで何度も優勝争いに食い込んでいるウィル・ザラトリス(米国)。
ザラトリスのウェイクフォレスト大の1年後輩で、PGAツアールーキーのキャメロン・ヤング(米国)。
2021年「WGCフェデックス・セントジュード招待」で初優勝したエイブラハム・アンサー(メキシコ)。
2021年「バルバソル選手権」で初優勝したシェイマス・パワー(アイルランド)などである。

そんな中、既に5年前の「全米プロ」でメジャー初優勝を遂げている若手の中のベテラン的存在、ジャスティン・トーマスが、最終日にベストスコアの67を叩き出し、首位のミト・ペレイラとの7打差を大逆転。
ウィル・ザラトリスとの3ホールのプレーオフを制し、メジャー2勝目を飾った。
なお、7打差の逆転は「全米プロ」史上2人目のタイ記録(1978年ジョン・マハフィ以来の記録)であり、メジャー2勝目までを「全米プロ」で達成しているのはベン・ホーガンやデーブ・ストックトンらを含め、6人目である。

「今日は奇妙な1日だった。リーダーボードを見ずに、ただ自分のゴルフに集中してプレーしていた。ゴルフスイングや同じフィールドで戦っている選手、誰か特定の選手と戦っているんじゃないと言い聞かせながらね。僕よりも上に素晴らしい選手がたくさんいたし、自分もしばらくメジャーで勝ってなかったけど、いかにメジャーで勝つのが難しいことかを思い出したんだ」

ベテランキャディからの金言で立ち直ったトーマス

通常はメジャー前の試合には出ないトーマスだが、「今年は何か違うことを試してみたい」と「AT&Tバイロン・ネルソン」に出場。
5位タイに入り、「全米プロ」に乗り込んだ。

だが、練習ラウンドは不調で、芯を食わないショットも多く、悩んでいたという。
そして3日目のラウンドで4オーバーを叩き、自分のゴルフがうまくいかないことにフラストレーションを感じていたトーマスに、昨年の9月から正式にエースキャディとしてバッグを担いでいるジム・マッケイ氏から、ラウンド後の練習場で次のようなアドバイスが送られた。

「毎週優勝争いしているんだから、完璧である必要はない。ただ自分にあまり厳しくしすぎないほうがいい。物事はなるようにしかならないし、流れにまかせれば正しい方向に向かっていく」

マッケイは、フィル・ミケルソンのデビュー当時から25年間バッグを担ぎ続け、彼の数々の優勝に貢献してきたカリスマキャディの1人。
2017年にミケルソンと袂を分かってからは、しばらくゴルフ中継のレポーターを務めていたが、昨年の9月末にトーマスのキャディとして復活。
彼の経験値と的確なアドバイスにより、再びトーマスをメジャー優勝に導いたのだ。

「ボーンズ(マッケイの愛称)が助言してくれなかったら、間違いなく僕はこの場所にはいない」

「絶対におじいちゃんが天国から見ててくれたと思う。家族で優勝の瞬間を共にできて最高」

©Eiko Oizumi

ウィル・ザラトリス(左)とのプレーオフを制したジャスティン・トーマス(右)。

©Eiko Oizumi

昨年の「プレーヤーズ選手権」以来、約14ヶ月ぶりの勝利を飾った。現在、平均バーディ数はツアー2位。

トーマス家にとって「全米プロ」は特別

2017年、松山英樹とのデッドヒートを制して「全米プロ」でメジャー初優勝を遂げてから、5年の歳月が経った。

「5年は長いが、その間にいろんな面で成長したと思う。特に大きな変化はないが、せいぜい15ポンド(約7キロ)太ったことくらいかな(笑)。全てを劇的に変える必要もないし、30ヤード、飛距離を伸ばす必要もない。道具もボールも変える必要もない。でも全てが良くなっている。特にパッティングのおかげで勝てたようなものだ。カギとなるパットをいくつも決めることができたからね」

トーマスの家系はプロゴルフ一家で、祖父のポールさん、父のマイクさんはともにPGA・オブ・アメリカのティーチングプロ。
そんな家庭に生まれ育った彼が、PGA・オブ・アメリカが主催する「全米プロ」で優勝することは、トーマス家にとって特別なことである。
昨年7月にはゴルフの手ほどきをしてくれた最愛の祖父ポールさんが亡くなったが、「絶対にどこかから、今日の僕をおじいちゃんは見ててくれたと思う。そして家族と一緒にこの瞬間を共にできて本当に最高だ」と語った。
昨年は一度もメジャーでトップ10入りを果たせなかったが、今年に入って「マスターズ」8位タイ、「全米プロ」優勝、と大舞台に強いトーマスが帰ってきた

30歳を迎える前にツアーで15勝を達成。トーマスの本領発揮はこれからだ。

最終成績

優勝ジャスティン・トーマス−5
2位ウィル・ザラトリス−5
3位キャメロン・ヤング、ミト・ペレイラ−4
5位トミー・フリートウッド、
クリス・カーク、
マシュー・フィッツパトリック
−3
8位ローリー・マキロイ−2
9位ブレンダン・スティール、
トム・ホージ、
エイブラハム・アンサー、
シェイマス・パワー
−1
13位ザンダー・シャウフェレE
23位リッキー・ファウラー+2
34位ジョーダン・スピース+4
48位ジョン・ラーム+6
55位コリン・モリカワ+8
60位松山英樹、
星野陸也
+9

棄権:タイガー・ウッズ(3日目終了後)
予選落ち:香妻陣一朗、稲森佑貴、木下稜介、金谷拓実

Photo/Eiko Oizumi, PGA of America

Text/Eiko Oizumi

大泉英子
「ゴルフ・グローバル」編集長。国内男子、海外ツアー取材をメインに、男・女・シニア、海外メジャー取材は100試合以上。全米ゴルフ記者協会、日本ゴルフジャーナリスト協会会員。

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