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【Presidents Cup】世界選抜チームに熱いエネルギーをもたらしたMVP ニュースター「トム・キム」

アジアンツアーから彗星の如く現れ、同ツアー賞金王を経てPGAツアー参戦を果たしたキム・ジュヒョン。
8月の「ウィンダム選手権」でPGAツアー初優勝を遂げ、PGAツアーメンバー入りを果たしたばかりの、20歳だ。
ここでは、彼の鮮烈な「プレジデンツカップ」デビューをお伝えしよう。

©Getty Images

3日目のフォーボールマッチでは、キム・シウーとコンビを組み、鉄壁コンビのザンダー・シャウフェレ&パトリック・キャントレーを1UPで下したトム・キム(中央)。最終18番ホールで、3メートル強のパットを沈め、バーディ。雄叫びとともに、情熱的なランニングガッツポーズを繰り出し、世界選抜チームメンバーは歓喜の渦に包まれた。

「世界選抜チームにエネルギーをもたらせればいい。僕ができるのはそれだけ」
―トム・キム

©Eiko Oizumi

松山英樹も2日目のフォーボールでトム・キムとコンビ結成(3&2でキャントレー&シャウフェレ組に敗退)。「英語も堪能で、チームに溶け込んでいるし、僕とはえらい違い。すごく堂々としていますね」(松山)

©Eiko Oizumi

今大会では、リッキー・ファウラーの元キャディ(ジョー・スコブロン氏・写真左)を起用。「トムのショットは方向性もよく、パットも決まる。打ちたいショットを現実のものにする力がある」と絶賛。

©Eiko Oizumi

今年は、韓国人選手が4人出場。松山英樹を加えてアジア勢5人の出場は過去最高。

©Getty Images

20歳のトム・キムにとって、イム・ソンジェ(右)らツアーの先輩はお兄さん的な存在?!

©Eiko Oizumi

3日目のフォーサムでは、イ・キョンフンと組んで、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー(写真中央)&サム・バーンズ組と対戦。2&1で米国選抜のエースを下した。

©Getty Images

チームメイトのキム・シウー(右)と勝利を喜ぶトム・キム。

©Eiko Oizumi

ドライバーの平均飛距離は300ヤード以上。2021~2022年度のPGAツアーでのパーオン率は、70.9%(規定試合数に達していないため、順位は不明だが、トップ10以内に入るレベル)、フェアウェイキープ率は71.11%(トップ3に入るレベル)というショットメーカー。

機関車トーマス好きの20歳が大活躍!

韓国出身だが、オーストラリア、フィリピン、タイなど海外でゴルフの腕を磨き、2018年に16歳でプロ入りを果たしたキム・ジュヒョン。
彼は機関車トーマスが好きで、英語名をトム・キムと名乗っているが、昨年度のアジアンツアーでは賞金王にも輝き、あっという間に世界の大舞台に彗星の如く登場したアジアの新星だ。

彼は今年の7月に欧米ツアー共催の「ジェネシス・スコットランドオープン」で3位に入ると、世界ランクは一気に39位まで浮上。
初出場の「全英オープン」では予選通過を果たして47位タイに入り、PGAツアーのテンポラリーメンバーの資格を獲得。
フェデックスカップ・レギュラーシーズン最終戦「ウィンダム選手権」に出場し、ツアー初優勝を飾った。
そんな彼の世界ランキングはうなぎ登り。
「出場するのは夢」と語っていた「プレジデンツカップ」の出場権も、キャプテン推薦ではなく自力で手繰り寄せ、世界選抜チームの中では、松山英樹、イム・ソンジェに続く3番手のトップランカーとして出場した。

彼は「このような規模の団体戦でプレーしたことがない」と言いながらも、20歳という若さならではの天真爛漫なムードメーカーとしてチームを盛り上げ、フレッシュでホットなエネルギーをチームに注入。

「僕はチームに何かいいエネルギーをもたらせればいいと思っている。僕ができることはそれだけだ。ポジティブな雰囲気を作り、チームにやる気をもたらしたい」

彼は有言実行で、自分の任務を十分こなしていた。
特に3日目午後のフォーボールマッチで、勝利を決めた最終ホールのバーディパットは圧巻で、「世界選抜チームのトム・キム、ここにあり!」を大いにアピール。
キム・シウーとともにパトリック・キャントレー&ザンダー・シャウフェレ組と最終ホールまでもつれこむ激戦を演じ、米国の鉄壁エースチームを撃破したことは、彼の「プレジデンツカップ」デビューを鮮烈に印象付け、最終日のシングルス戦を前に、逆転優勝の可能性すら感じさせた。
約3メートルのバーディパットを沈めた彼は、大きな雄叫びをあげながら、何度も大きくガッツポーズ。
グリーン上を走り回りながら、チームメイトに、そして世界のゴルフファンにその存在感を示した。
プレー終了後のグリーン上は、まるで世界選抜チームが優勝したかのような高揚感に包まれていたが、24年前に1度だけ優勝経験のある、世界選抜チームに、新しいスターが誕生した瞬間だった。

トム・キムの活躍と今後の世界選抜の行方

今回、トム・キムは、ルーキーながらも2勝3敗とポイントを獲得。
チームの雰囲気を盛り上げた彼の貢献度は大きく、米国メディアでも彼の話題は連日取り上げられていた。
同郷の先輩は今大会に3人(イム・ソンジェ、イ・キョンフン、キム・シウー)いたが、弟的な存在としてかわいがられていたのも、彼にとっては幸い。
初出場でありながら自分の居場所を確保でき、チームに溶け込めたことは、彼の活躍にとって大きな助けとなったことだろう。
実際見ていると、イム・ソンジェらは先輩風を吹かせるというよりも、彼をリスペクトし、気を遣っているようにも見えた。

マスコット的存在で、ゴルフがうまく、ガッツに溢れ、英語を話し、怖いものなし、というさまざまな要素を兼ね備えているトム・キムのような存在こそ、世界選抜チームには必要な人材だったのかもしれない。
LIVゴルフの一件で、ベテラン勢の多くはチームメンバーから外れたが、古いものが去れば、新しいものが入ってくる。
2年後のカナダ・モントリオールでの大会が今から楽しみだ。

Photo/Eiko Oizumi、Getty Images

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