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【PGAツアーレポート】Sentry Tournament of Champions 「この5カ月は最強だ」と自画自賛”ジョン・ラーム最強伝説”

2023 セントリートーナメント・オブ・チャンピオンズ
2023年1月5日~8日/カパルア・プランテーションコース(ハワイ・マウイ島)

「この5ヶ月は最強だ」と自画自賛
ジョン・ラーム最強伝説

©Eiko Oizumi

表彰式で「シャカ」サインをしてみせるジョン・ラーム(左)とPGAツアーコミッショナー、ジェイ・モナハン氏。

優勝
Jon Rahm
ジョン・ラーム(スペイン)
1994年11月10日生まれ。188cm、101kg。米ツアー9勝、メジャー1勝(全米オープン)、欧州ツアー8勝。ニックネームは“ランボー”。世界ランク3位。

今、世界で最もHOTな男、ジョン・ラーム。
昨年の秋に母国スペインで開催された「アシオナオープン・ド・エスパーニャ」で優勝し、その翌月の最終戦「DPワールドツアー選手権」でも優勝。
そして今年に入り、ハワイシリーズの初戦で勝利を挙げ、その後「アメリカンエキスプレス」でも優勝した。彼の強さの秘密に迫る!

©Eiko Oizumi

DPワールドツアーメンバーでもあるマシュー・フィッツパトリック(左)とジョン・ラームが、ハワイの地でも戦った。フィッツパトリックは6打差の7位タイで終了。

昨年の10月以降、欧米ツアーで4勝、トップ5入り3回、と絶好調のラーム

©Eiko Oizumi

ケリー夫人(右)と2人の子供たち(ケイパとエネコ)がラームの優勝を祝福した。

©Eiko Oizumi

優勝後のインタビューで「昨年の8月以降、自分は世界のベストプレーヤーだ」と語った。

67ホール、ノーボギーの首位モリカワが突然……

3日目を終えて、2位のマシュー・フィッツパトリック、スコッティ・シェフラーらに6打差をつけていたコリン・モリカワ。
2021年「全英オープン」以来、勝利に見放されていた彼はなんとかこのチャンスを生かして、ツアー6勝目をつかみたかったはずである。

だが、ゴルフの神様は彼に試練を与えた。
最終日の14番ホールで、今週初のボギーを叩いたのだ。
しかも14番~16番まで3連続のボギーで、一気に首位の座をジョン・ラームに明け渡すことになった。

ジョン・ラームは4日目のスタート時点で、モリカワに7打差をつけられていた。
しかもモリカワが1番をバーディで発進したのに対し、ラームはボギーを叩き、一時は9打差ついていた。
しかし、そのボギーが彼の闘争心に火をつけた。
2番でバーディを取り、一つ取り返すと、4~6番で3連続バーディ。
9番でもバーディを取って前半を32で折り返すと、12~14番で再び3連続バーディ、そして15番ではイーグルを奪取した。
17番ホールにあるリーダーボードを見て、自分が単独首位に立っていることを知ると「必要のないリスクを犯す必要はない」と冷静に判断し、最終ホールも一つバーディを重ねて通算27アンダーでホールアウト。
最終日1日で10打伸ばした彼は、コリン・モリカワの自滅もあり、大逆転優勝を飾り、ツアー通算8勝目。
昨年のこの大会では33アンダーというビッグスコアを叩き出しながら、34アンダーのキャメロン・スミスに優勝を阻まれた。
今年、リベンジに成功し、7シーズン連続でPGAツアーでの優勝を果たすことができた。

「ちょっとクレージーな1日だったね。小さな奇跡が必要だったが、1番でボギーを叩いたあと、もっと大きな奇跡が必要になった。バーディチャンスがたくさんあり、今日のアイアンは過去3日間よりも断然よかった。とにかくバック9では、どんどんバーディを取っていかないといけなかったんだ」

ラームには以前、モリカワ同様、ビッグリードがありながら、優勝できなかった苦い経験が何度もあったという。

「もし人に大差をつけているときのアドバイスを聞かれるとしたら、どんなにリードしていても、誰かしら64や65のスコアを叩き出して、上位に上がってくることを想定しておくこと。つまり、自分もそういうスコアを出さなければいけない、ということだ。特にこのコースでは、たくさんバーディを取っていかないといけない」

©Eiko Oizumi

最終日、最終ホールで2打目をグリーン左のラフに入れたラームだが、そこからうまく寄せてバーディを奪取。

©Eiko Oizumi

優勝が決まった瞬間、大勢の観客を前にガッツポーズを繰り出したラーム。

「どんなに大量リードがあっても バーディを取り続けなければ 優勝できない」
ジョン・ラーム

©Eiko Oizumi

パッティングの改善が、好調の理由だと語るラーム。昨シーズンと比べると、平均パット数でツアー121位→2位と、劇的に改善されている。

©Eiko Oizumi

最終日のドライビングディスタンスは、317.3ヤードだったラーム(右)。パーオン率も88.89% と高く、1日で10アンダーを叩き出す好調ぶりを裏付けている。

去年の8月以降は最高のプレーヤー
カギはショートゲーム

ジョン・ラームは優勝会見で自ら「去年の8月以降、自分が世界のベストプレーヤーだと思っている。去年の最初の頃は、スコッティ(シェフラー)が、そしてその後はローリー(マキロイ)、そして今は自分がベストだと思う」と語った。
彼は、「誰にも1年で3~4か月、絶頂期がくる。ずっと上位に居続けるのはとても難しいけど、みんな一生懸命練習し、できるだけそこに長く居続けることができるようにとてつもない努力をしている」という。
皆、過去に樹立されたたくさんの記録を破りたいと思っているが、それも1週間ごとにこなしていかないといけない。
だから毎日、一生懸命に練習し、ベストゴルファーになるべく努力している、という。

確かに今の彼は無敵だ。
昨秋のDPワールドツアーでは、2勝(「アシオナオープン・ド・エスパーニャ」、「DPワールドツアー選手権」)を挙げ、同ツアーのフラッグシップ大会「BMW PGAチャンピオンシップ」で2位タイの成績を収めている。
一方、PGAツアーでは「CJカップ」で4位タイに入り、「セントリートーナメント・オブ・チャンピオンズ」で優勝。
その2週間後の「アメリカンエキスプレス」でも優勝している。
試合に出場すれば優勝かトップ5入りは確実、という今の彼は、昔のタイガー・ウッズの強さを彷彿とさせる。

以前から強い選手ではあったが、なぜここまでの強さを誇るようになったのか?

「アプローチショットがより正確になり、主にパットが入るようになったから、というのが以前との大きな違いだと思う。ここ4~5か月のパットは、今までの人生の中でも最高だ」

彼の絶頂期がいつまで続くのか……?
彼の持論では3~4か月は続くとのことだが、今の調子でいけば、「マスターズ」優勝も可能性は高そうだ。
4月から7月まで断続的に続く男子4大メジャーだが、ラームの一人勝ちになる可能性もなくはないだろう。

最終成績

優勝ジョン・ラーム−27
2位コリン・モリカワ−25
3位トム・ホギー
マックス・ホーマ
−23
5位J.J.スポーン
トム・キム
−22
7位トニー・フィナウ
イ・キョンフン
マシュー・フィッツパトリック
スコッティ・シェフラー
−21
11位ウィル・ザラトリス−20
13位ジョーダン・スピース−19
18位ビクトル・ホブラン−17
21位松山英樹−16
25位ジャスティン・トーマス−15
29位アダム・スコット−13

棄権/ザンダー・シャウフェレ

世界ランク2位

スコッティ・シェフラーの目指すものとは?

©Eiko Oizumi

Scottie Scheffler(米国)
1996年6月21日生まれ。190cm、91kg。テキサス大学出身。2017年「全米オープン」ローアマ。2018年プロ転向。昨年は「WMフェニックスオープン」でツアー初優勝し、「マスターズ」を含む4勝を達成。世界ランク1位に。

昨年は「マスターズ」でメジャー初優勝を遂げ、1シーズンで4勝を挙げて世界ランク1位まで一気に上り詰めたシェフラー。
彼をまだよく知らないゴルフファンのために、どんな考えの持ち主なのか、ご紹介しよう。

Good Attitude &  Good Shots

©Eiko Oizumi

ドライビングディスタンスは、305.8ヤードで52位。ストローク・ゲインド・オフ・ザ・ティーは4位。

昨年はPGAツアーの「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー」に輝いたシンデレラボーイ、スコッティ・シェフラー。
2018年にプロ入りし、メジャーではトップ10入りを果たすことも多く、すでにその名を知っていた人も多いかもしれない。
だが、2021年「ライダーカップ」に出場し、シングルス戦でジョン・ラームを撃破してからは、自信を大いに深め、実際、成績にそれが現れるようになった。
「WMフェニックスオープン」で初優勝し、「アーノルド・パーマー招待」「WGCデル・テクノロジーズマッチプレー」「マスターズ」とたった2か月で4勝を一気に挙げ、スターダムにのし上がったのだ。

そんな彼は、チャンピオンとして再びカパルアにやってきた。
記者会見で興味深いやりとりがあったので、以下にお伝えする。

記者:今年の目標は?

シェフラー(以下SS):僕は長期的な目標を立てるタイプではない。
常に現在を見、目の前の課題を一つ一つこなしていくんだ。
夢や希望はあるけど、それらは遠い将来の話だ。

記者:どんな1週間が、いい1週間?

SS:物事が正しい方法で進めば、いい1週間だったと思える。
いい態度で臨み、いいショットを打つ。
そればできれば、僕にとってはいい1週間だね。
たとえば、昨年のサウスカロライナの試合で、、僕の態度はとても悪かった。
アプローチショットがうまくいかなくて、すごくフラストレーションがたまってた。
こういう週は、悪い1週間だね。

記者:どんな時に態度が悪くなるの?

SS:自分に実現不可能なことを期待するときかな。
ゴルフはフラストレーションのたまるゲーム。
自分が十分練習をして準備してきたのに、いいプレーができないとフラストレーションがたまる。

記者:昨年、世界ランク1位になった時はどうだった?

SS:世界ランク1位になり、自分は世界の頂点にいると思えば、一生懸命練習を続けるモチベーションも失ってしまう。
僕の場合は、世界ランク1位になっても、そういう感覚はなかった。
たぶん僕は、あまりにも早く世界ランク1位になったから、人は僕のことを世界のベストプレーヤーだとは気づかないんだろうと思う。

記者:ところであなたがホストを務める、今年の「マスターズ」のチャンピオンズディナーについてだけど……

SS:メニューは少し考えているけど、何を出すかはまだはっきり決めていない。

記者:初めてのLIVゴルファーがいる「マスターズ」だが……。

SS:今年、ババ(ワトソン/LIVゴルファー)とは休暇中に偶然会ったよ。
その時、彼の席は部屋の隅の方に別のテーブルを用意するよ、と言ったんだ。
もちろん冗談でね(笑)。
でもゴルフの世界では今、悲しいことが起きている。
今週、ディフェンディングチャンピオンのキャメロン・スミスの隣のロッカーを使っているが、彼はここにはいないんだ。
ちょっと変な感じ。
僕は今、LIVに行くことはないし、PGAツアーはファンにとって最高のものであってほしいね。

Photo/Yoshitaka Watanabe、Eiko Oizumi

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