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【US Open】TVじゃわからないO嬢現地レポートUSオープン編!PGAとPIFの和解に前回王者も混乱?

PGAツアーとPIFの和解に混乱するディフェンディングチャンピオン

©USGA

優勝トロフィーの返還にやってきた、昨年のチャンピオン、マシュー・フィッツパトリック。「手放すのが悲しい!」

©USGA

ディフェンディングチャンピオンとして、大会前の記者会見に臨んだフィッツパトリック。昨年はデビュー当時からの歯の矯正が終わっていなかったが、ようやく終了したようだ。

大会前には必ずディフェンディングチャンピオンの記者会見が設定されているが、昨年の優勝者マシュー・フィッツパトリックは、大会前週に発表されたPGAツアーとPIF(サウジ政府系ファンド)との統合について、その席で質問され「混乱している。僕も何も知らないし、誰もわかっていないと思う。PIFと我々は契約するのかしないのか、ということもね」と答えた。
執拗に繰り返されるこの手の質問に、USGAの司会者から全米オープンの話題に戻るように、制される場面もあったが、「全米オープン」の練習日は、この話題で持ちきりだった。

4番ホールの隣にはライオネル・リッチーの豪邸

©Getty Images

ライオネル・リッチー
1949年6月20日生まれ。アフリカ系アメリカ人のシンガーソングライターで、作詞家、作曲家、音楽プロデューサー、俳優でもある。全世界アルバム売り上げは、1億枚以上。代表曲に「We Are the World」などがある。

©Eiko Oizumi

4番グリーンの脇に立つこの豪邸は、伝説的シンガーソングライター、ライオネル・リッチーのもの。1万7000平方フィート(約1600平方メートル)の広さを誇る。

©USGA

ロサンゼルスCCはビバリーヒルズに程近く、セレブの豪邸が立ち並ぶエリアにある。

ロサンゼルスCCはこれまで、閉ざされたイメージの強い名門コースとして知られてきたが、その敷地の中にはライオネル・リッチーの豪邸(4番ホール)や、『プレイボーイ』誌の発刊者ヒュー・ヘフナーの豪邸(13番ホール・現在は所有していない)などもある。
リッチーの豪邸には28部屋あるというが、もともとこの豪邸は1929年にキャリー・グッゲンハイムのために建てられたものだった。

大会期間中、家の方を見てもリッチーらしい人影はなし。
コンサートやバケーションに出かけているのか、ひっそりとどこかの窓から、「全米オープン」を観戦していたのかは謎である。

ダスティン・ジョンソン
笑顔の向こうには……?!

©Eiko Oizumi

最終日の18番をホールアウトしたダスティン・ジョンソン。

©Eiko Oizumi

笑顔の先には、父のホールアウトを待っていたテイタムくん(左)とポーリナ夫人。テイタムくんのマスターズのロゴ入りシャツ姿がキマってる!

©Getty Images

2016年の「全米オープン」で優勝したDJと、テイタムくん(右)、ポーリナ夫人(手前)。今から7年前の優勝直後のシーンだ。

最終ホールのパットを終えて、こちらに向かって手を振りながら笑顔を見せたダスティン・ジョンソン。
いや、私にではないな、と思いながら後ろを振り返ると、そこにいた息子のテイタムくんに手を振っていたのだ(苦笑)。

今から7年前、彼が優勝した時に抱きかかえていたキュートな男の子は、こんなに大きく成長していました。

こんなサービスもあります

©Eiko Oizumi

ヘアカットしてもらっていたミンウー・リー。他にもジェイソン・デイもカットしていたそう。

名門コースにはバーバー(理髪店)が入っていて、髪の毛を切ってもらったり、ヒゲを剃ってもらえたりするが、USGA主催の試合では、毎回このようにテンポラリーのバーバーを設置し、選手たちの身だしなみを整えるサービスも行なっている。
転戦でヘアカットに行く時間もない選手には、ありがたいサービスだ。

サウジアラビア人ギャラリーが、LIVゴルファーを応援

©USGA

アラブ系の3人がLIVゴルファーのブライソン・デシャンボーのプレーを見学。

トーブと呼ばれる、白くて長い襟付きシャツに赤と白のシュマーグというストールのようなものを被っている男性を発見。
これは間違いなくサウジアラビア人男性の服装だ。
ポロシャツやTシャツに短パンで観戦している米国人男性たちに交じり、サウジ男性たちも「全米オープン」を観戦。サウジアラビアが、世界のゴルフ界を牛耳ることになることが予想される今の世の中で、今後はこうしたアラブ系の人々もメジャー観戦に訪れることが増えてくるのかもしれない。

ローアマのゴードン・サージェント
「全米オープン」の優勝杯を虎視眈々と

©Eiko Oizumi

ローアマに輝いたサージェントの視線の先には、「全米オープン」の優勝トロフィーが……。

©Eiko Oizumi

サージェントは、今大会の4日間の平均飛距離が325.9ヤードで、出場選手中6位につけていた。

今年の「マスターズ」に過去20年間で唯一、特別招待で出場したアマチュア、ゴードン・サージェントが、「全米オープン」にも出場。
通算4オーバーの39位タイでローアマを獲得した。

今大会には19人のアマチュアが出場していたが、彼は現在世界アマチュアランキングで1位を誇り、飛距離もハンパない。
ブライソン・デシャンボーやジョン・ラームといった世界の飛ばし屋を相手に、平均飛距離は互角なのだ。
しかも平均パット数は1.67で5位にランクイン。
飛ばしもパットもすでに世界のトッププロ並みという、脅威のアマチュアに注目だ。

そんな彼が、表彰式でローアマのメダルを獲得している時、視線がウィンダム・クラークに贈られるトロフィーに行っていることに気づいた。
きっと「将来、全米オープンで優勝して、トロフィーに名を刻むぞ」と心に誓っていたに違いない。

ユニークな名門の問題点

©USGA

ジョージ・トーマスの設計当時の意図を汲み、自然の地形を生かした改修を行なったギル・ハンス。

©Eiko Oizumi

クラブハウス前のパッティンググリーンの一部が、1番ティ―として使用されていた。1番ホールは578ヤード・パー5。ショットしているのはダスティン・ジョンソン。

©Eiko Oizumi

11番ホールは290ヤード・パー3という、非常に長いショートホール。この他にも、7番ホール・284ヤードという長いパー3がある。

©Eiko Oizumi

一方、第3ラウンドの15番ホールは、98ヤード(実質80ヤード強)と、非常に短いパー3として設定されていた。

閉ざされた名門コース「LACC」に一歩足を踏み入れてみると、大都会ロサンゼルスにいることを忘れてしまうほどの自然が広がり、まさに「都会のオアシス」といったところ。
「全米オープン」仕様に1番ティーはパッティンググリーン内に設置。
パー3が5つあり、パー5が3つしかないというユニークなセッティングになっていた。
ギル・ハンスの改修によって、ジョージ・トーマスの設計理念や意図を表現することができた、と評価は上々だった。

しかし、USGAがチケットを1日2万2000枚に制限し、そのうちの大半が企業のスカイボックスの購入者やLACCのメンバーであったため、実際、一般販売は約9000枚に制限されていたことに、選手の一部から不満が……。
LACCの18番ホール周辺付近は特に、スペースが限られており、大きなスタンドを建てることができず、「素晴らしいホールだが、観客には不向き」とキャメロン・スミスがコメント。
またマシュー・フィッツフィッツパトリックも「観客の人数制限にはガッカリ。パー3でホールインワンを達成したが、もう少し人がいて、大きな歓声を聞きたかった」と語った。

フレディ発見!

©Eiko Oizumi

選手たちが1番ティーからスタートするのを見守るフレッド・カプルス(フェンスの後ろの左から5番目)。

スタートする選手たちの撮影をしていると、後ろに見覚えのある顔が……!
フレッド・カプルスだ。
彼はLACCから車で1時間半ほどのサンタバーバラに住んでいるが、LACCのメンバーなのか、あるいはスポンサー企業に招待されていたのかは不明。
特等席で観戦していた。

LAのアーティストがデザインしたテーラーメイドのバッグが秀逸

©Eiko Oizumi

ロサンゼルス空港の夕焼けが描かれた美しいキャディバッグ。サンセット部分には、ローマ数字で「MMXXⅢ」(2023)と書かれている。バッグはスコッティ・シェフラーのもの。

©Eiko Oizumi

ハリウッドブルバードに埋め込まれたセレブたちの星型のプレート「ウォーク・オブ・フェイム」を模したデザインが、ポケット部分にあしらわれているのは、いかにもLAらしい。

ロサンゼルスの有名な通りの名前がジッパーに施されているのもかわいい。

©Eiko Oizumi

ヘッドカバーも鮮やかな色彩でポップなデザイン。

メジャーになると、開催地の特徴を表すデザインを施した特製キャディバッグを選手に支給するメーカーも多いが、今年のテーラメイドの「全米オープン」バッグは一際注目を浴びた。
LAを拠点とするアーティスト兼壁画家のジェームズ・ホーント氏とのコラボで作られたもので、バッグには都市のスカイラインと、ロサンゼルス空港(LAX)の夕焼けが描かれている。
細部にもこだわり、まるで芸術品のよう。
LAの魅力と特徴がたくさん詰まったバッグとなっている(購入可能)。

「日本は独立したツアーだから」
マーティン・カイマー

©Eiko Oizumi

PGAツアーとPIF(サウジ政府ファンド)の和解の発表後、LIVゴルファーのカイマーは「サウジの血塗られた金を受け取るためにプレーしたくないとか、魂を売りたくないと言ってきた人たちの反応が楽しみだ。もし本当にそうなら、日本に移住して、JGTOに出るべきだ」とSNSでコメントしていた。
そこで、「なぜ日本を急に持ち出したの?」と、本人に直撃してみると「サウジとは関係ない、独立したツアーって意味で言ったんだよ」とのこと。

Photo Gallery

©USGA

ハリウッドサインのようなUS OPENのサインが4番ホールに設置されていた。こんなところにもLA感が出ている。

©USGA

コースを設計したジョージ・トーマスは、バラを愛し、新種を育成したことでも有名な人物。そんなトーマスに敬意を表して、今でもバラをクラブハウス前に栽培。芳しい香りを放っていた。

©USGA

ロサンゼルスのダウンタウンから、車で30分ほどの場所に位置するロサンゼルスCC。コースからも高層ビルが見渡せる。

©USGA

選手が会場に来てチェックインすると、まずネーム入りの選手章が渡される。

©USGA

このようなフレームが会場内に設置されており、「全米オープン」観戦の思い出作りに一役買っている。

O嬢日記@inロサンゼルス
PGAツアーとサウジの劇的な発表後のヤジに変化

©Eiko Oizumi

ファンの声援に応えるLIVゴルファーのフィル・ミケルソン。

PGAツアー、PIF(サウジ政府系ファンド・LIVゴルフ)、DPワールドツアーの劇的な和解話が発表されてから1週間後に、「全米オープン」は開催された。
もはや対立するリーグではなくなったので、PGA vs LIVという構図もなくなり、私自身、リーダーボードを見ていても、「全米プロ」までのようなLIVゴルファーとPGAツアープレーヤー、どっちが勝つ?のような見方もしなくなった。
そして、観客のヤジにもある変化が起きていることに気づいた。
マキロイ、松山、ケプカの組について歩いていた時のこと。
マキロイに対して「フィルにお礼を言うべきだ。LIVのおかげで、お前たちの賞金も上がったんだから」というヤジが飛んだのだ。
今までなら(今大会でもあったが)、ミケルソンやLIVゴルファーに対して批判的なヤジが飛ぶのが普通だった。
だが、和解・統合の発表後は、PGAツアーの顔として強硬にLIVを批判してきたマキロイが、逆に批判されるという場面も増えてきたのだ。

世界のゴルフ界は統合の方向に進んでいるが、選手間の友情にヒビが入り、元通りになるのが難しい人たちもいる。
また、ツアー(ジェイ・モナハンコミッショナー)に対し、裏切られた気持ちや不信感でいっぱいの人たちも多い。
サウジマネーを受け入れることで、PGAツアーは生きながらえたかもしれないが、ツアー間の対立に巻き込まれた選手たちにとっては迷惑な話。
彼らの心のケアや、感情のもつれを解くのが最も大事な時期だと思う。

Photo/Eiko Oizumi, PGA of America

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